第222話 3つ目のダンジョンコアの使い道が決まった。
カタリナが元気になって帰って来た次の日。
ウーテは空の哨戒、カタリナは研究施設に朝早く向かったので俺とメアリーで朝食を取っている。
「カタリナが元気になってお腹の子どもも無事で良かったですよ。
まったく大騒ぎさせて、昨日ひとしきり色々ぶつけてもまだ怖いという気持ちがあります。」
「気持ちは分かるがカタリナも思ってやったことだ。
次からは頼れと伝えたし大丈夫だろう。」
メアリーがちょっとプリプリしながら俺に愚痴をこぼす、確かにカタリナのやった事はすべてが正解ではないが間違った行動でもなかった。
心配をかけたのはダメだったけどな、メアリーが怒ってるのもそこだし。
「そういえばメアリーはダンジョンコアをまだ起動しないのか?」
「何を生成させればいいかは決まってますが、今作っている物より美味しい物を確実に生成するにはどうすればいいか考えてるんですよ。」
なるほど、それは確かに重要だな。
今食べているものと同じものを考えればそれより不味くなることはないが、どうせなら美味しいほうがいいに決まってる。
俺もそうだから前の世界に居た最高級ブランドの牛や豚を生成しているし。
そのあたりで悩んでるなら仕方ない、俺も解決策を考えて思いついたら提案することにしよう。
「開様は先日のダンジョンコアを何に使うのですか?」
「あれは村の冒険者ギルドに使おうと思ってるよ。
鍛錬で充分強くなれるのは分かってるけど、やはり実戦経験を積んで自信をつけるのは重要だと思って。
だからあれはグレーテに渡すつもりだ、責任者だしうまく活用してくれるだろうからな。」
「それはいい案だと思います、この間グレーテさんも実践のために遠征するの大変だなぁとこぼしてましたので。」
それはタイムリーだった、今日のうちに渡しておくとするか。
「それはそうと、カタリナと流澪さんが開様に相談したいことがあると言ってました。
時間が空けば研究施設に来てほしいとか。」
「分かった、グレーテにダンジョンコアを届けたら向かうことにするよ。」
朝食を食べ終わり一度家へ帰って着替えをした後、ダンジョンコアを倉庫から出して準備完了。
メアリーも見慣れない荷物を準備しているのでどうしたのか尋ねると、鍛錬所で弓の講師をしてくるらしい。
広場まで歩いて2人で談笑しながら向かう、やっぱり平和な日常が一番だ。
広場でメアリーと別れて冒険者ギルドに到着。
中に入らなくても冒険者の掛け声が聞こえてくるのはすごいな、熱血スポ根みたいな指導をしているのだろうか。
「グレーテ、居るか?」
「村長じゃないですか、冒険者ギルドに来るなんて珍しいですね。」
俺とグレーテが話していると鍛錬に参加している冒険者が一斉に駆け寄ってきて「お世話になっております!」と元気な声で挨拶された。
うん、礼儀正しいのは嬉しいけど耳が痛くなるからもう少し小さな声でもいいぞ?
俺は軽く冒険者達に挨拶してグレーテにダンジョンコアを渡す。
理由を説明するとグレーテがぴょんぴょん跳ねながら喜んだ。
「やったぁやったぁ!これで遠征を組まなくてよくなる!
でも村長本当にいいんですか?」
「大丈夫だよ、作物関連はメアリーに渡してあるもので対応するみたいだし。
鉱石と肉は今のまま稼働し続ければ問題は起きないはずだから。」
「ありがとうございます、大事に使いますね!」
俺はダンジョンの仕様を説明して冒険者ギルドを後にする、グレーテならうまく使ってくれるだろうし危険な事にもならないだろう。
大体の魔物はグレーテが狩れるだろうし、そもそも討伐不可能な魔物は生成しないだろうからな。
さて、次は研究施設だな……一体どんな用事だろうか。
「入るぞー。」
俺が研究施設に入ると、流澪が気づいてすぐに駆け寄ってくる。
「良かったやっと来た、もしかしたら来ないかと思って不安だったわよ。
頼みがあるのだけどいいかしら?」
「そのつもりで来たから大丈夫だぞ、一体どんな用事だ?」
「ステンレス鋼が欲しいんだけど、
願いを聞くといきなりとんでもないことを言われた。
「ステンレスって合金じゃないのか?
いったい何に使うんだ……そもそも何と何を合わせた合金かも分からないから
「鉄とクロムと炭素よ、このクリーンエネルギー機構って結局は蒸気機関だから耐熱性に優れた配管をしたくって。
人間領で使っていたのも合金だけど、経年劣化で弱くなると熱で配管が垂れると言っていたから真似したくないし……どうにか出来ないかしら?」
さらりとステンレスの内訳を言えるのがすごいな、しかしクロムか……村のダンジョンでも生成出来るようにしてないので現状手に入れることは出来ない。
だが商品に使える玻璃の仕分けでも買うことに賛成した採掘部隊だ、これ以上新しい鉱物を増やすのは人員が増えない限り得策じゃないだろう。
「村にある鉱物で代用出来ないか?
例えばオレイカルコスとか。」
「村長、ありゃ配管のような繊細な加工をするのに向いておらんのじゃ。
武器に加工はしておるが、どれも装飾や形にこだわっておらん武骨なものじゃろ?」
「そうだったのか、確かに硬すぎるもんな……。」
万能鉱物だと思っていたが、確かに配管を整備していると色々曲げたりしなければならないだろう。
前の世界で化学工場のプラントを見たことがあるが、無数の配管が色んな方向に曲がりくねって伸びていたし。
「採掘部隊と相談しなければ決めれない、向こうも仕事があるからな。
それか鉄で模型を作って実寸法を書いた図面を渡してくれれば、俺がオレイカルコスを使って
俺が提案すると皆が「なるほど、それでもいいのか……。」と集まって話しだす、俺だけ取り残されたけどどうすればいいんだろうか。
「その案も視野に入れるわ、でも理想はステンレスが欲しいから採掘部隊に頼んでみてくれる?」
「分かったよ、ちなみにどれくらいクロムは必要なんだ?」
「確か炭素が1%くらい、クロムが11%くらいで後は鉄で良かったはずだからそこまでの量はいらないはずよ。」
「分かった、採掘部隊に頼んでみるよ。」
俺は研究施設を後にしてダンジョンへ、シュテフィにクロムの件を伝えると思いのほか快諾してくれた。
「あれ、人員的に厳しいんじゃないのか?」
「買える物は買えるお金があるなら買うべきよ。
それより価値のあるものや使うものを採掘出来るのに、そこに人手を割くなんて馬鹿のすることだもの。
クロム……って言ったかしら、それはダンジョンで生成するしか手に入らない、もしくは鉱脈が見つかってないならこっちでやるってだけ。」
なるほど、理にかなっている。
「分かった、それじゃよろしく頼むよ。」
「任せといて。」
俺はダンジョンを後にして流澪達にクロムが手に入ることを伝えると、両手を挙げて喜びだした。
そこまで欲していたのか、それならよかった。
その後、俺も研究の進捗を確認していると研究施設に続々と住民が集まる……どうしたんだ?
「皆十日熱の初期症状が出てまして……流澪さんなら治せると聞いたのですが。」
そうだ、感染力の高い病気だったのを忘れていた。
「分かったわ、皆治療するから安心してね。」
流澪は研究を中断、その後は皆の治療に専念し始めたので帰ったほうがいいと促されたので帰ることに。
「私も帰ろっと。
村長、たまには逢引っぽく2人で帰りましょ?」
カタリナが珍しく甘えてくるので俺も応える、帰ろうとした矢先2人のお腹が同時にぐぐぅ~……と鳴ったので一緒に顔を赤くしながら食堂に向かうことにした。
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