第107話 アラクネ族とシュムックの原石を見に行った。

アラクネ族が気絶したので、近くに居たウェアウルフ族とドワーフ族に手伝ってもらってさっき作った家に運び込む。


5人用に作ったわけではないので少し狭いが、気絶してしまっているので仕方なく入ってもらう。


気が付いて誰も居ないのは可哀想なので、俺がここに残ることにした。


「うーん……。」


「お、気が付いたか。」


「はっ、いきなり家が現れてびっくりしてしまいまして。

 気絶してしまっていたのですね、ご迷惑をおかけしました……。」


「こちらこそ何の説明も無くスキルを使って驚かせてすまないな。」


最近は魔族領のイベントで使うようにするなど、誰も驚いたり気絶したりしなかったので油断していた。


いや、キュウビが気絶したな……でもあれは驚いたというより何か考えすぎてパンクしたようにも見えたが。


「あの、スキルとは何ですか?

 あの家がいきなり現れたのがそうなのでしょうか?」


「そうだ、俺はこの世界の神に適当に選ばれて異世界から転移してきてな、その時にもらったスキルが想像錬金術イマジンアルケミーというものなんだよ。

 材料があれば思い浮かべた大抵の物をすぐに作ることが出来るし、作物だって一瞬で育てられる。」


「は、はぁ……。」


全部本当の事なのだが、よくわかってない様子だな……仕方ないとも思うが。


「とりあえず今居るこの家がさっき作ったものだ、中を見て問題無さそうなら他にも作るからな。

 何棟必要かだけ教えてくれ、複数人で住むならもう少し広くするからさ。」


「この家が個人に与えられるのですか!?」


「そのつもりだぞ、土地は広げればいくらでもあるし。

 消費するのは俺の魔力と材料だが、魔力はポーションですぐに回復出来るし材料は過剰気味に保管してあるから心配しなくていい。」


「旅の妖狐に聞いた話は脚色されてると半信半疑でしたが、脚色どころか説明が足りなかったまでありますね。

 ここまでしていただけるとは聞いていませんでした……。」


キュウビは罪人として扱っていたからな、寝泊まりもクズノハのところでしていたしその辺は分からなくても仕方ない。


アラクネ族5人で相談して、家は1人1棟欲しいとのことなので同じものを4つ近くに作った。


「あの、後はシュムックを加工する工房が欲しいのですが。」


「それはもちろん大丈夫だが、どういう施設か分からないと作れなくてな……。

 あの倉庫に材料はいくらでもあるから使ってもらって構わないし、力を使う人手が必要ならケンタウロス族やミノタウロス族、器用なのはダークエルフ族とドワーフ族だな。

 細かな図面が書けるならそれを参考に俺が作ってもいい、好きな方法を選んでくれ。」


「図面……はちょっと苦手なので作ることにします。

 では4人で作ることにしますので、1人はシュムックの確認に向かってもらいます。

 ティナ、貴女が一番目利きの質が高いからお願いね。」


「はーい、わかりました。」


「じゃあティナ、シュムックが採れる場所に行こうか。

 ドワーフ族とミノタウロス族には伝えてあるから、もしかしたら少しは採掘出来てるかもしれない。」


「ここではどのようなシュムックに出会えるでしょうか、質がいいと嬉しいですね!」


種類だけはそこそこに思い浮かべたが、質はどうなんだろうな……一応俺が映像や写真なんかで見たことあるものを想像したから大丈夫だとは思うが。




ティナを連れてダンジョンへ向かう。


「あの、これってダンジョンですよね……?

 なんで村にダンジョンが……まさか私魔物の餌にされるのですか!?」


物凄いことを言いながらオロオロするティナ、そんなことするはずがないだろう。


「違う違う、このダンジョンの所有者は俺なんだ。

 ダンジョンコアは所有者の思い通りの生き物やアイテムを生成することが出来る、だからここに家畜や鉱石なんかを生成して村のものにしているんだ。

 シュムックも採掘出来るようにしてあるからここに来たというわけ。」


ダンジョンの説明をすると、ポカンとするティナ。


知らないのが当然だろう、ダンジョンコアの所有者になんてなろうと思ってなれるものでもないだろうし。


例外としてクズノハはダンジョンコアを生成出来るが、恨みを晴らすために使ってしまっているからな……そういえばダンジョンコアの生成はどうなっているんだろう。


家畜に鉱石に石炭、石油にシュムックとごちゃつき始めたので、そろそろ分けたい気持ちはあるんだが。


それは今度聞けばいいか。


しばらく進むと採掘した鉱石や石炭を仕分けしているエリアに着いた、仕分けを担当しているミノタウロス族に声をかける。


「仕事中すまない、ここで綺麗な石を採掘出来るようにしてるのを伝えてたと思うがもう成果はあがってるか?」


「これは珍しいですね、村長お疲れ様です。

 はい、あちらに見慣れない綺麗な石はひとまとめにしてありますよ。

 ただ、種類が沢山あるのでとりあえずごちゃ混ぜになってしまっていますが……。」


「それで構わないよ、アラクネ族に使えるかどうか見てもらうから。

 邪魔したな、無理せず仕事頑張ってくれよ。」


ミノタウロス族が教えてくれたところに行くと、確かに色々な宝石の原石が転がっている。


原石の状態でも大分綺麗なんだな、加工されたものしか見たことなかったからちょっと感動。


「何ですかこの高品質のシュムックの原石は!?

 こんな高品質なもの、アラクネ族の里でも見かけることは無いですよ!?」


ティナが次々と原石を手に取り驚いている、高品質なようで一安心だ。


「それならよかった、多分原石はほぼ無限に採掘出来るから好きなだけ加工して装飾品を作ってくれ。

 いずれ村の女性に配ったり魔族領へ売りに出したりしようと思っているから、いくらあっても大丈夫だぞ。」


「いいんですか!?」


「もちろんだ、アラクネ族のために用意したんだからな。

 ドワーフ族なら加工出来るかもしれないが、それを生業としていたアラクネ族には敵わないだろうし。」


この村は食糧こそ豊富だが装飾品や着飾るものがあまり流通していない、女性ならそういうのは好きだろうし魅力的だろう。


そういったものが村から生まれるのは俺としてもありがたい、そういうものには疎いしセンスも無いから想像錬金術イマジンアルケミーでも作れないからな。


「ここまで高品質なら見た目だけじゃない、強い付属効果がついたものも作れるかもしれません!

 燃えてきましたよ、原石を持てるだけ持って帰ってイェンナ姉さん達と加工に移らなきゃ!」


「落ち着け、まだ工房が出来てないだろう。

 まぁ道具は鍛冶をしているドワーフ族に言えば貸してくれると思うが……。」


慌てて帰ろうとするティナを引き留める、しかし物凄く気になることを言っていたな。


付属効果がついたものを作れるだって?


「あ、すみませんはしゃいじゃって……。

 とりあえずドワーフ族に声をかけてみます、鍛冶工房の隅っこと工具を貸してもらえれば加工は出来ると思うので。」


「うん、それは別に構わない。

 だが今、付属効果があるものを作れるかもしれないって言ったよな?

 もし作れたら具体的にどういった効果があるか分かるのか?」


「低品質でも付属効果はあるんですが、体感できないようなレベルの物ばかりで。

 私たちアラクネ族が作ればとりあえず確かに付属効果があると分かるものは作れるのですが、これはそれ以上の物が作れそうです。

 具体的な効果は力や魔力量の上昇ですね、他にもあるかもしれませんが。」


「魔力量の上昇!?

 もしそれが出来たら俺に譲ってくれないか、地上で家を作ったスキルは魔力を消費するんだが、もし魔力が切れたら俺の生命力を消費してしまうんだよ。

 少しでも危険を減らしたい、協力してくれないか?」


思わぬところから想像錬金術イマジンアルケミーの弱点をカバーするものが転がって来た。


見た目だけかと思っていたがそんなことはない、まさかゲームのように効果があるなんてな。


「そういう事でしたらもちろんです、もし魔力量が上昇する装飾品が出来たら村長に持っていきますね。」


よろしく頼むぞ。


ティナは持てるだけ原石を持ってドワーフ族に声をかけ工房の隅で加工を始めた、もう周りは目に入っていない……まさに職人の顔になっている。


俺はティナを置いて外に出てアラクネ族の様子を見に行くと、既に工房が完成していて驚いてしまった。


アラクネ族、ダークエルフ族並に手先が器用なのかもしれないな……。

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