第245話 別視点幕間:ドリアードの心情。
私はドリアード、世界の始まりから自然を司って生命を見守ってきた存在。
まぁ最初は知性を持った生命なんて居なかったけど、そこから進化するだろうと神様に言われてただけで。
長らくそんな風に生きていると退屈にもなるので、色んな種族に紛れて俗世にも触れたりしてみた……食事が美味しくて幸せになったので羨ましかったなぁ。
ただ私は美味しいとか幸せという感情が湧くだけで、それ自体が存在するための力にならないんだけど……世界に存在する自然から力を分けてもらって初めて存在を維持できるから。
でも幸せになってもいいよね、私だって生きてるんだし!
私の過去はさておいて、少し前に神様から通達があってこの世界に異世界から人間を連れて来たとのこと。
そんな事をしてこの世界で生きれるのかと思ったけど、神様謹製のスキルを渡しているらしい。
それなら安心ね、神様は威厳とかは無いけど力は確かだし――いつも説明は足りないけど。
何処に呼ばれたのかと世界の自然から情報を得て探してみると、なんと未開の地と呼ばれる場所に転移したとのことだ。
神様も酷な事を……あそこは文明も発達してないし、各種族が散らばって集落を形成してるから生存率が極端に下がると思うのよね。
何かあったら助けてあげましょうか、と思ったけど神様はとんでもないスキルを渡していたみたいだった。
材料を消費すれば何でも好きな物を作れるスキルだろうか、最上位の精霊と呼ばれる私から見ても物凄いわよあれ。
だけどいきなり使いこなすことなんて出来ないだろうし、しばらくは災害なんかから守ってあげるとしましょ。
その次の日、デモンタイガーを飼いならして森を歩いているとオークの死体が大量にある場所へ案内されていた。
デモンタイガーって結構知性があるのね、言葉が喋れないだけで理解は出来てそう。
人間も流石に困ったのか、腐らせるよりはとオークの死体を纏めて肥料にして土に混ぜ込んだ。
これはこの森の木々が喜ぶし私もたくさん力を分けて貰えるわ!
未開の地の自然はかなり質のいい力をくれるから助かってるのよね、個々の力が強いから自然も強くならざるを得ないみたいだし。
それからとんとん拍子に人間の周りに色んな種族が集まり、未開の地をひとまとめにしつつある状態まで持っていった。
これはすごいわね、神様のスキルも多大に影響してるでしょうけどこの人間の人柄もあるんでしょう。
もう私の見守りは必要ないかな、と思い人間の傍を離れて世界を再び見回ることに。
ここ最近は大きな災害も出てないし、結構暇なのよね。
なんて思っているとドラゴン族が使った力で自然が乱れて、天気が大荒れする場所が出てくるのを察知。
あの村のドラゴン族かしら……自然の一部を操るのはいいけど本気を出すのは出来ればやめてほしい。
その後の処置って結構大変なんだからね!
天気の対応も終わり、存在するための力が結構減って来たので世界各地の自然から分けて貰おうと回っていると、あてにしていた未開の地の自然から拒否される。
私はもちろん抗議、未開の地だって守っていなかったわけじゃないんだからいつも通り分けてくれていいでしょうに!
話を聞くと「少し前に大量に土に混ざった栄養が大変美味だった、あれがもう一度手に入るなら今まで以上の力を分ける。」とのこと。
あれ私の力じゃないのにー!?
自然と対話するのはドリアードとして当然だけど、抗議されたのは長い私の歴史において初めてだわ。
何か策は無いかと考えたけど、あの人間に頼む以外方法は思いつかない。
けどあの人間、精霊がどういった存在かなんて知らないわよね……ならあの村に気付いてもらうしかない。
森と再び対話してあの栄養を得るためだと協力を仰ぐ、そして村に森ごと近づいて気づいてもらう事にした。
あの村は警備が常に門を守っているし、これなら騒ぎにしてくれるでしょう。
案の定警備は腰を抜かして叫び出す、ごめんね?
少しすると、この村に住んでるほぼ全員が集まってきた……流石に私でも一斉に襲い掛かられると負けるかもしれないなぁ。
特にドラゴン族のリムドブルムが強すぎる、ドラゴン族の持ってる属性は自然に属するから無効化は出来るけどそれで精一杯でしょうね。
怒らせないようにしなきゃ。
とりあえず私が起こした事変は認知してもらえたので、姿を現すことに。
精霊がそこに居るかもしれないと誰かが思わないと姿を現すことが出来ないのよね、これが結構不便。
特に俗世に紛れる時、信心深い人を見つけるのが大変で。
閑話休題。
私の自己紹介をすると、村長と近くの女の子以外全員が跪く……そこまでしなくてもいいのに。
今回は私が何かを頼む立場、存在を有難がってくれるのは嬉しいけど!
プラインエルフ族が人間に何か説明すると人間も跪きだした。
あなたに用事があるの、畏まらないで!
上から目線で喋るの苦手なのに……なんて思っていると一番怖いリムドブルムから私が助けて欲しいという内容を問いかけてくる。
これは好都合、しっかり説明してそこの人間に用事があることを分かってもらおうとしたが……ちょっと自然に力を分けて貰えなかったのがショックでありピンチなので挫けかけた姿を見せてしまう。
だって本当にショックだったし……。
すると人間が立ち上がって私を抱き上げる……抱き上げ!?
え、触れちゃったの!?
すぐに契約の内容決めなきゃ、えーっと……<還る場所>で!
絶対精霊に触れたら契約することになるなんて知らなかっただろうし、困らない物を選択したつもり。
特にこの人間自身に負担はかけないし、村にはかけるかもしれないけど。
何よりこれで私は常にここで顕現出来るし俗世に触れれる、そして食事が味わえる!
かなり私にも好都合な内容なのよね、私ナイス。
とりあえず呆けているフリをしながら自然を通じて村を見回りさせてもらいましょうか、美味しい食事があるのは自然の噂で知ってるけど、他に何があるか知らないからね。
ここまで発展する前に離れちゃったから。
少しすると村の住人が慌てて人間の容態を心配しに来た、慕われてるのねぇ。
事情を説明したらプラインエルフ族から物凄い変な物を見る目をされる、最上位の精霊に向けていい視線じゃないと思うのだけど!
不敬!
罰するつもりはないけどね、そんなものを契約の対価に支払うなんて思わないでしょうし。
ある意味正しい反応だったわ、反省。
少し説明はしたけど、まだ話すこともあるし向こうも聞きたいことがありそうだけど……寝ます!
もう私がいつも寝てる時間はとっくに過ぎているので!
陽が落ちればおねむなんですよ、おやすみなさーい。
また明日!
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