第394話 ウルリケが使役している魔物を村に移住させた。

シュテフィの家を訪ねた次の日。


ウルリケに話を通してくれてたみたいなので、2人で瞬間移動を使いダンジョンへ向かった。


「ゴシュジン、オカエリ。」


着いた先には5体のオーガと、その奥に居る下半身が蛇のような魔物……あれがナーガか。


しかし本当に喋っている、分かっていたがやっぱりびっくりするな。


「皆ただいま。

 一応アタイの近況を説明するわね、まずあれから――」


ウルリケは魔物達に近況を説明し始める、まさかそんな事まで理解出来る知能を有しているのか?


てっきり喋れはするけど幼児程度の知力しかないと思っていたが、普通に暮らしている人達と変わらないくらいの知力があるな。


話を聞いてフンフンと鼻を鳴らしながら頷いている様子を見ると、ウルリケの話は理解出来てるみたいだ。


「――というわけよ、これから村に住んでコロポックル族の手伝いをするのが貴方達の仕事。

 このダンジョンに長く住んで名残惜しいかもしれないけど、ここより村のほうがずっと快適だから。」


「ゴシュジンニモ、アエル?」


「えぇ、毎日会えるわ。」


会えることが分かったのか、オーガとナーガはあからさまに嬉しそうな表情になった。


寂しかったんだろうな、かなり長い時間離れてても慕われてるウルリケも凄いと思うけど。


「ナラ、ムラニイジュウスル。

 アナタガソンチョウカ、コレカラヨロシク。」


「あぁ、俺が村長でこの世界の神の開 拓志だ。

 まさか魔物とこうして意思疎通をするとは思ってなかったよ、これからよろしくな。」


俺は魔物達と握手とハグを交わして挨拶を済ませる、人間や魔族よりよっぽどフレンドリーでびっくりの連続だ。


しかもちゃんと力加減をしてくれている、どうやってそんな事を覚えたんだろうな。


ウルリケに視線を向けると、安心した表情で魔物達を見ていた。


心配してたんだろうな、肩の荷が下りたようで良かったよ。


「さて、そろそろ帰る――いや、忘れ物があるな。」


目的を果たしたので帰ろうと皆に声をかけようとしたが、聞き忘れてた事があるのを思い出したのでウルリケに確認を取らないと。


「どうしたの?」


ウルリケも俺が言葉を詰まらせたのに気付いて問いかけてきた。


「このダンジョン、もう用事は無いよな?」


「えぇ、アタイの荷物は全部運び終わってるしこの子達の移住も決まったからね。

 ここは超危険な罠があるだけの洞窟になった……入り口に食糧用のオークは出るけど。

 ダンジョンコアを破壊するかどうかの確認?」


オーガってオークを食べてるんだな、てっきり近縁種かと思ったがどうやら違うみたいだ。


共食いの可能性は否めないけど。


「俺の能力でダンジョンコアをリセットして、所有者を変更できるんだよ。

 ここが必要無いならダンジョンコアを持ち帰って、村で活用してもいいかなと思ったんだ。」


「私だけじゃ決めれないわ、ここのダンジョンコアは恐らく他の吸血鬼族の命から出来たものだと思ってるし。

 だからシュテフィと相談させてほしいかな、また後日返事をするから……それでいい?」


「構わないぞ。」


俺はウルリケに返事をして、全員と触れるようにして瞬間移動で村へ帰る。


騒ぎにならないようにコロポックル族の結界の中に移動したが、コロポックル族に驚かれてしまった。


全員で謝り魔物達の自己紹介、そして受け入れが完了した。


家に関しては後で作りに来ると伝えて俺はその場を後にする。


しかしウルリケ……まさかそこまで分かっているとは、直感かダンジョンコアを調べたか……どちらにせよウルリケの技術力は本当に凄まじい。


村だけならいいが、技術が外に出て行って文化や技術、それに暮らしが加速度的に変化しなければいいけど。


だが、イフリートの話だと大丈夫そうだし安心していいかな?


とりあえず魔物達の家を準備するため資材の準備をしにいくとしよう。


ウルリケはどうするか聞いたが、クリーンエネルギー機構の研究施設に呼ばれているそうだ。


ちなみに遠隔会話の接続は全て終わっているらしい、さすがウルリケ。


それじゃ俺は仕事をするために材料の準備をするとしよう、そう思った俺は想像錬金術イマジンアルケミー用の素材をしまってある倉庫へ向かった。




「村長、ここに居たんだ。」


俺が材料を荷車に載せていると、後ろから声がしたので振り返る。


そこにはリッカが立っていた、人間の姿で。


「何か用か?」


「うん、私が魔族になった件について父上から返事が来てね。

 少しでも早く伝えなければと転移魔法陣を使わせてもらったけど。」


「あぁ、それは構わない。

 それで返事は?」


そういえば報告書を出すと言っていたな……誰も知らなかったとはいえ王族が他種族に変化する事態、リッカは今の状態で人間領に帰還するという命令が妥当だろう。


村の住民とも打ち解けてたし、冒険者ギルドでも活躍してると聞いてた……少し寂しいけど仕方ないよな。


「命に別条が無ければ問題無し、村に長く居座る人間に周知徹底すれば今と変わらぬ生活を――だって。

 それと人間領の式典は明後日を希望してるみたいなんだ、村長の予定は空いてるかい?」


「あ、あぁ……大丈夫だ。

 しかしいいのか、そんな軽くて。」


「一応要約したものを伝えたからね、他にも色々あったけど。

 でも王位継承に関して僕は相変わらず関与しないし、それと同じくらい重要な村との繋がりと親善大使としての仕事を全うしてほしいみたいだよ。」


それならいいんだけど。


しかし明後日か、思ったより早かったな。


別段予定は無いからいいけど、俺の妻達や他の種族の長は予定を合わせれるだろうか。


「よかったよ、村長が参加出来れば大丈夫だ。」


「他にも村から参加する人はいるだろ、話を聞かないと。」


「実は、予定を聞くのは村長が最後なんだ。

村に住んでるほぼ全ての種族の長は参加するって言ってたよ。」


まさか既に話が通ってるとは。


しかし俺がダメだと言ったらどうするつもりだったんだろう。


「ちなみに村長がダメなら延期してたからね。

 人間領は開催予定日の候補を10日ほど挙げて来てたから。」


リッカは俺の考えてることが読めるのだろうか?


だがそれを聞いて疑問は無くなったので良しとしよう。


「じゃあそういうことで、僕は失礼するとするよ。

 僕の後ろで待ってるミノタウロス族とケンタウロス族も居る事だし。」


「分かった、伝言ありがとう。」


リッカが去っていくと、ミノタウロス族とケンタウロス族は何も言わずに追加で資材を荷車に積みだした。


「「これは私達の仕事ですよ?」」


あ、うん……すまない。


そんな圧をかけないでくれ、別に必要だと思わなくて呼ばなかったわけじゃないから。

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