第166話 村を改造して思わぬトラブルが発生した。

村の大改造をして3日、メアリー達はまだ帰ってない……何かトラブルでもあったのだろうか?


だが争っていると言っていたし、行動が慎重になっているのかもしれない……万が一にも負けるとは思えないが何かあった時のためにポーションを補充しておこうか。


村の大改造で結構使ったからな、200個くらい作っておけば足りるだろう。


「村長、トラブルが発生してます。」


ポーションを作り終えて材料の整理をしていると、プラインエルフ族から声をかけられた。


「トラブルなんて珍しいな、どうしたんだ?」


「魔族領から来られている方々が転移魔術の魔法陣を見て困惑しています、どうしましょうか?」


やってしまった、普段何気なく使っていたから囲いをつけるのを忘れてたぞ……。


今からでも間に合うか、よく話を聞くと魔族領から来た人は転移魔術の魔法陣を利用してないみたいだからな。


「俺はケンタウロス族とミノタウロス族を呼んで囲いを作って回るから、悪いが魔族領の人々には村の極秘技術だと説明しておいてくれ。

 一応ドアを付けて錠もかけることにする、錠は村の住民全員に配るから。」


「承知しました、そのようにしておきますね。」


プラインエルフ族は走って魔族領の人々へ説明しに行ってくれた、俺も急いで囲いを作らないとな。




「疲れた……。」


「お疲れ様です、私たちも失念していました。」


何とか全ての魔法陣に囲いを作って錠を設置することに成功した、そこまで大騒ぎにならなくてよかったよ……。


俺はその時設置した錠に合う鍵も作っていたのでケンタウロス族とミノタウロス族に渡す。


「とりあえず100個ほど渡しておくよ、余ったら長が管理して一族の子どもが産まれた時に配ってやってくれ。」


「分かりました、お預かりしますね。」


手伝ってくれたケンタウロス族とミノタウロス族に鍵を渡す、他の種族にも配って来ないとな。


その後村の見回りがてら全種族に鍵の束を渡すことが出来た、その時に現在の村の住み心地を聞いて回ったが以前より快適らしい。


頑張った甲斐があったよ、だが今回みたいなトラブルがいつあるか分からない。


暫くはいつもより注意深く見回りをして、住民の意見をどんどん聞いていかないと――もちろん魔族領から来る人達の声も。


俺はそのまま行商を探しに村を歩き続けた、村の構造がガラッと変わって戸惑って変な所へ行かなければいいが……一応門には引き続き警備を立てているし事故は起こらないはず。


施設区と居住区の間には案内板も立ててあるし、施設区にも多めに立ててある……これをみて居住区へ営業をかけていると踏んだんだが見当たらない。


どういう事だろうと思い施設区へ向かうと、行商と商店街に出す店の準備をしているマーメイド族が話しているのが見えた。


どうしたんだろうと思い近づいてみる、聞こえてきた話を要約すると「私たちもここを使えないだろうか?」という質問をマーメイド族にしていた。


「私じゃ判断出来ませんよー……。」と困っているマーメイド族。


「済まない、話が聞こえたし俺もその話のために行商達を探してたんだ。

 この商店街を使いたいという事なのだろう、賃貸料さえもらえれば利用するのは構わないがどうする?」


俺がそう言うとマーメイド族がホッとした顔をしてお店の準備を再開した、頑張ってくれよ。


「「「賃貸料はどれくらいでしょうか!?」」」


俺の言葉を聞いた行商が物凄い食いついてきた、そこまで魅力的だったか。


「1日で1店舗当たり金貨3枚だ、ちょっと高いかもしれないが行商が使うだろうということは村の住民に伝えてあるから住民も買い物に来るぞ?」


「金貨3枚でこのような場所が借りれるなら安い物です、地道に営業をかけるより売り上げが見込めますからね。」


「確かに、目玉商品を持っていけば口伝でお客様がお客様を呼んでくれますし。

 営業がダメとは言いませんがやはり店舗には負けます。」


「どうでしょう、この話を商人ギルドに持っていって営業と店舗で班を作り同時にやるのは。

 そうすれば営業が店舗を出してることを宣伝出来ますよ?」


既に借りることは確定して効果的な使い方を話し合い始めてしまった、カタリナからは「ちょっと吹っ掛け気味だと思うけど折れないでね。」って釘を刺されてたんだけどな。


折れるどころか値下げ交渉もされずに話が通ってしまった、だが村がそこまで評価されてるということなので素直に嬉しい。


「村長、ちなみにこちらは何店舗まで借りられるでしょうか?」


「村の住民が作ったものも種類別に売りたいからな、貸し出せるのは半分くらいだろう。

 あまりに需要が高いなら増築も検討する、それは今後の様子を見てだが。」


「分かりました、ありがとうございます。

 やはり領の職人さんにも声をかけて――。」


もしかして半分全部借りるつもりなのだろうか、流石に赤字になりそうだとは思うが算術で商人が失敗するはずもないし……何か勝算があるのだろう。


もし全店舗が埋まれば繁盛しているように見えるし、商店街を目当てに来る人たちも増えるはず。


そこは他にも店を出したい人が居ないか話し合ってだな、もし希望者が多いようなら早めに増築をしてもいいだろう。


それに人間領にも声をかけたい、リッカとマーメイド族を通して声をかけてもらうことにするか。


「とりあえずまたどうなるか決まれば俺まで連絡をくれたら対応する。

 他にやることがあるから俺はこれで。」


「分かりました、ありがとうございます!」


俺は行商と別れてリッカの所へ向かっていると「何ですかこれは!?」という叫び声が聞こえた。


振り向くとグレーテの声はするが姿が見当たらない、どこにいるんだ?


「魔法陣の周りに囲いが!

 ドアがあるのに出れない、鍵かかってますよこれ!?」


そうか、今魔族領から帰って来たから鍵を持ってないんだな……悪いことをした。


俺は鍵を開けて囲いからグレーテを救出する、村を見たグレーテはもう一度「何ですかこれ!?」と叫んだ。


そりゃ出かけてて帰ってきたら村が大改造されてたらそうなるよな、悪気は無いんだぞ?


「―-ということだ。」


「あの話がまとまって即座に実行したんですね、ですがよく見ると用途別にしっかりと建物が集まってていいと思います。」


見ただけで好感触だ、やはりしっかりと考えられてただけはあるな。


「目玉の商店街も行商が間違いなく利用するだろう、住民にとってもいい施設になりそうだよ。」


「それはいいですね、営業待ちだったり探したりする手間が省けるのはありがたいですよ!

 ……おや?」


グレーテが何かに気付いて空を見上げる、俺も同じ方向に視線をやると遠くからドラゴン族が帰って来るのが見えた。


だがメアリー達が率いた人数より少ない、何かあったのだろうか?


ドラゴン族は俺を見つけて近くに着陸、村の変わりように戸惑いながらもこう告げた。


「村長、食糧の補充に帰ってきました。」


「かなり持っていってたように見えたが足りなかったのか、倉庫まで案内するよ。

 グレーテもお疲れ様、ゆっくり休んで冒険者ギルドの予定を後で聞かせてくれよ。」


「わかりました!」


俺はドラゴン族を倉庫まで案内して食糧をドワーフ族と積み込む。


「ありがとうございます、村の力を見せるために必要だったのでこれで大丈夫ですよ。」


「村の力ってどういうことだ?」


「メアリー様やラウラ様が話したことを2種族は半信半疑の状態でして、争いは収まり村に移住する話だったのですが……移住した後が心配らしく。

 3日以内にこの箱いっぱいに食糧を積んで帰ってきたら信用すると言われ、それを実行している次第です。」


その心配は仕方ないことだ、片方が移住することによって滅ぶかもしれないという予想だったし。


「お疲れ様、だが2種族とメアリー達のためにもうひと踏ん張り頼むよ。」


「お任せください!」


箱いっぱいの食糧を運ぶドラゴン族を見送り、俺は改めて村の見回りに戻ることに。


あ、図面通りに整地と住居をしているから2種族の居住区が無いな……拡張しておこう。

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