第208話 式典に向けての準備が村の住民も必要だという事に気付いた。
俺はオスカーとクルトにキュウビからダンジョンを発見したと連絡があったのを伝えると、オスカーは目を子どものように光らせながら「ワシが対応しよう!」と引き受けて家を飛び出していった。
「父さま……本当に戦うの好きだなぁ。」
「本当にな、だがあれだけの強さがあれば仕方ないのかもしれないぞ。」
クルトも若干呆れ気味にオスカーを見送る、クルトは行かないのかと尋ねたが「ウルスラが居るから。」と今回は見送ることに。
そういえばあれだけウルスラにデレデレなオスカーもダンジョンには食いついていったな、孫より戦闘なのだろうか。
戦闘面に関してはオスカーに任せておけば心配無い、ダンジョンコアが欲しいのは伝えてあるしそのまま破壊という事も無いだろう。
俺はオスカーの家を後にして見回りを再開、デパートの様子も見ておくとするか。
デパートは相変わらず大盛況、それに商品在庫補充部隊も引っ切り無しに飛び回り走り回りで大忙しだ。
次回からはもっと多めに商品を持ってきてもらったほうがいいな、そのあたりは商人ギルドも分かっているだろうし早めに準備をしてくれるだろう。
しかし村の商品がよく持つな、そんなに色々作って在庫があったのだろうか。
それとも他より割高であまり売れてないとか……いや、あの客入りを見る限りそんなことはないだろうし。
だがこの村の住民の手際は異常なほどいいからな、前の世界のような量産工場が無くともどんどん物が出来るのだろう。
今回は物品販売だけになったが、食事関連でこういうイベントもいいかもしれないな。
前の世界で言うB級グルメグランプリのようなものだ、実際にはB級なんかじゃないものが集まりそうだが。
高級志向から庶民的な味まで幅広く集めれば、そういうものを食べない人達も楽しめるしいいかもしれない。
デパートの抽選会対策の話し合いと一緒に案を出してみるか、皆食べ物に関しては貪欲だし間違いなく開催しようという声が大多数だと思うけど。
とりあえず妻達に相談してみるか。
その後色々見回りをしたが特に異常無し、デパートも滞り無く2日目が終了。
家に帰って休んでいると、前日に引き続きほくほく顔で帰宅する妻達。
「ただいまー、昨日と違って全然品揃えが違って楽しかったわ!」
「村長の欲しがってた物で良さそうなのがあったから買っておいたわよ、食器はドワーフ族に預けてあるから。
はいこれ、採掘は出来たけど用途不明の鉱石だって。」
カタリナが俺に鉱石を手渡してくる、用途不明な物にお金を出すなよ……頼んだのは俺だけどさ。
実際俺が見ても何の鉱石か皆目見当もつかない、明日にでもドワーフ族に見せてみるか。
「ちなみにこれ、魔族領と人間領どっちの店で買ったんだ?」
「人間領ね、一応行商に話を聞いたら鉱脈らしきものはあるみたい。
ただ強度があって採掘が困難らしくって、たまたま採れたものを持ってきてみたって。」
用途が分かれば採掘をさせてもらってもいいかもな、ダンジョンコアで出してもいいけど。
「ところで開様、魔族領でギュンター様へアポイントメントは取れたのですか?」
メアリーから魔王とクズノハの件について聞かれる
「あぁ、その件だが――。」
俺はどうなったかを3人に説明する。
「受け入れてくださってよかったです、もし断られたらどうしようかと。」
「どんな式典なんだろ、少し楽しみ。
当人にはなりたくないけどね、堅苦しそうで。」
花嫁姿なんて女の子の憧れだと思ったんだが、それは前の世界での価値観なんだろうな……実際参加する側も堅苦しいから俺もああいう場は得意ではない。
「でも村からするとなれば、私達もきっちり着飾らないといけないわね。
ケンタウロス族やアラクネ族、大丈夫かしら。」
それもそうだ、クズノハのドレスはもちろんの事俺達も恥ずかしくない格好をして式典に臨まないとクズノハに恥をかかせてしまう。
「明日また商人ギルドへ行ってどういう衣装がいいか聞いて、もし可能ならサンプルを持って帰ってくるよ。」
今からサイズに合わせて買ってもいいが、村の住民は全員が全員人間と同じ姿ではないし。
「そうですね、お願いいたします。」
「ミハエルさんならある程度分かるんじゃないの?
一応あれでも王女なんだし聞いてみてもいいかも。」
一応は失礼だが、確かにそうだな……他にも式典に参加している可能性はあるしもしかしたら知ってるかもしれない。
「じゃあまだ夜になってすぐだし聞いてきてみるよ、この時間ならまだ起きてるだろうし。
それだけの大荷物だ、3人は片付けをしててくれ。」
「「「はーい。」」」
3人はそのまま片付けを開始、俺はミハエルの家へ。
「ミハエル、居るか?」
家のドアをノックすると「ちょっと待ってー。」とミハエルじゃない声が聞こえた。
他に誰か住んでるのか?
誰だろうと考えているとミハエルの家のドアが開く、そこに居たのはイザベルだった。
「イザベルじゃないか、いつから村に来てたんだ?」
「え、あれからずっとここに居るけど?」
あれからずっとって……黒魔術の研究者は魔族領を出ちゃダメじゃなかったのだろうか。
「まぁイザベルがいいならいいんだけど……魔族領から何か言われないのか?」
「研究は続けてるし報告書は提出してるから大丈夫でしょ、多分。
それに表向きの仕事をしなくなっても食べていけるくらいお金は魔族領からもらってるし……報告書さえ出してれば私は魔族領に居なくても問題無いから。」
「表向きの仕事なんて持ってたのか、生粋の研究者だと思ってたよ。」
「黒魔術研究してますなんて看板出して暮らせないわよ、禁忌なんだし。
それに最近はそっちの依頼も減るどころか無くなってきてたし大丈夫だわ、若い人や新鋭の服飾造形師がたくさん出てるみたいだし。」
今なんて言った、服飾造形師?
「イザベル、服飾の造形が出来るのか?」
「冒険者をやめて黒魔術の研究が軌道に乗るまではそっちで食べてたわよ?
研究の傍らその仕事してたから当時は睡眠不足で地獄だったわね……。」
俺の知らないところでイザベルがずっと滞在してくれてて良かった、もしかしたら式典の服もデザインしてもらえるかもしれない。
サンプルをもらってもそれをアレンジしたりするのはやはり本職じゃなければ難しそうだし、デザインを村で出来るならそれが一番だ。
イザベルを村の住民にカウントするのは違う気がするけど、俺の知らないところで滞在してたし。
「そういえばミハエルに用事だったのよね、あの子今お風呂に行ってるわよ。」
「いや、イザベルのほうが適しているのが今の会話で分かった。
今度魔王とクズノハが夫婦の契りを交わしたため魔族領を挙げて式典をするのは聞いてるだろ、それに村の住民も参加するんだが……着ていく服の造形を頼みたい。」
「え、この村全員分……?」
イザベルの顔が真っ青になる、村の住民も結構増えたから不安なのだろう。
「流石に村を空にするわけにも行かないからな、俺と妻3人……それに各種族の長とミハエルとグレーテ、それにリッカと後は参加希望者をある程度募ろうかと思ってるけど。」
俺の話を聞いたイザベルは慌てた表情で俺の肩を掴む。
「それでもキッツいわよ!?
そんなにポンポンと案が出るわけじゃないし、一人じゃ厳しいわ。」
「一応引き受けてくれるんだな?」
「そりゃあね、ただ飯食べてた自覚はあるし……頼まれたらやるしかないわよ。
ただ助っ人は欲しいわ、量が量だし。」
そうか、あまり考えなかったがイザベルってこの村に長く滞在してて唯一村のために仕事してなかったんだな……。
そもそも滞在してるのを知らなかったのだから仕方ないけど、他の人は知ってたんだろうか?
まぁいいか、誰も咎めてなかったし。
「分かった、明日また魔族領に行って助っ人を頼めないか聞いてくるよ。
造形に関しては村より魔族領や人間領のほうが上なのは自他共に認めているみたいだし。」
「お願い、私も今の研究がキリのいい所まで進んだら服飾造形に回るわ。」
イザベルと会話を終えて家に帰っていると、風呂帰りのミハエルが俺に気付いて走って来た。
「村長、私に用事でしたか?」
「そうだったんだが、イザベルが服飾造形を出来たからとりあえず解決したかな?
助っ人が欲しいらしいから明日商人ギルドで相談してくるけど。」
「え、あの子もう服飾造形師引退するって自分で宣言したのに!?」
本人はそんな事一言も言ってなかったが、まさか忘れてるんじゃないだろうな?
だが出来ないというどころか引き受けると言ったしイザベルを信用するとしよう……ミハエルの言葉を聞いてちょっと不安になったけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます