第8話 別視点幕間:メアリー、混乱する。

私はメアリー、一緒にいるのが妹のラウラ。


プラインエルフの里を離れ、姉妹で旅をしている身。


エルフの生活に退屈になって里を出たわ。


私が村を出ようとしたらラウラに見つかって、そのまま2人で飛び出した。


ピンチは何度かあったけど、今回のオークに追われたのは一番ピンチだったわ。


ドワーフ族の里に補給と弓の修理に向かっていたから、対抗策がなかったのよね。


そんなところを開様に助けていただいた、本当にありがとうございます。


死を覚悟せず叫んでよかったと心から思うわ。


タイガ様もありがとうございます。


開様に武器の相談をすると、弓を直せるもしれないって!


願ったり叶ったり!


愛用してきた弓だから本当に嬉しい。


嬉しいんだけど!


それと同じくらい嬉しいことが、開様のお顔が私の好み。


性格も決して悪くない、なんなら優しくてすごくいいんじゃないかしら?


お近づきになりたい!


エルフの男はイケメンすぎるか、女顔過ぎるのよね。


他のエルフもそう。


開様のような、イケメン過ぎない男が好み。


でも、弓の修理なら素材確保も含めて数日はかかるわよね。


その間に少しでも距離をつめてみようかしら!


開様は一人暮らしだし、開様の下に定住するのも考えてみようかなぁ。


しかし、家を見ても材料はおろか工房もない。


大丈夫なのかしらね?


すると、開様が弓を持って外へ行く。


どうしたのだろう?


お邪魔になるかと思い留まったが、やはり気になるので外に出る。


出たら弓が直ってた。


えっ、なんで?


何したの開様!?


どうやら神から授かった特別製の錬金術スキルらしい。


開様と距離をつめる時間すらなかったわ……弓が直ったのはとても有難いんだけれど。


なんて色々考えてると、有り得ない言葉が飛び出してきた。


エンチャント付与が出来る!?


世界のパワーバランスが壊れちゃうわ!


魔族領や人間領でもエンチャント付与された武器はほぼ無いはず。


魔族や人間の冒険者を何人も看取ってきたもの、その誰もが持ってなかったわ。


持ってる者が居るなら、その力で未開の地に来るはず。


つまり、山の向こうに住む種族がここを開拓する力もエンチャント武器もほぼ存在しない。


未開の地の原住民でも見たことがない、言い伝えでしか聞かない代物。


で、それを簡単に付与出来る開様。


おかしい!!


歯止め役が必要かもしれないわね、私が立候補するわ!


色々難しいこと考えたけど、エンチャント付きの武器が使えるのはすごく嬉しい。


冒険者全員の憧れだ、何が付くのかなっ?


…え?選べる?


私は、そう聞いた後気絶したわ。




目が覚めると開様が晩御飯の準備をしていた、泊まっていくといいとのこと。


開様、なんて積極的……なんてことはないわよね。


純粋な親切心だ、ありがたくいただこう。


開様に近づきたいけど、タイガ様は開様にべったりだ。


ラウラ、あなたタイガ様が怖くないの?


私はまだちょっと怖い。


開様の隣が羨ましいな。


そして晩御飯の間にお役に立てるチャンスが。


開様は塩を欲しがった、というか調味料全般を欲しがってる。


ドワーフ族の里に行けば手に入るけど……。


タイガ様がドワーフ族の里に近づいたら間違いなく大混乱。


悪気はなくても長に絶対怒られる。


そうならないために、私とラウラでドワーフ族を連れてくれば話が出来るはず!


なんと開様からそうお願いされ、喜んで引き受ける。


もう一度開様とお近づきになれるチャンスだわ!


食料を直接ではなく育つ前のものが欲しいの?


あるとは思うけど、今から育てても氷の季節までに収穫出来ない。


聞くと、スキルで育てれるって。


もうそれ錬金術じゃないです開様、ズルです!




話が終わり寝ることに。


気になってる人と一つ屋根の下で…キャー!


なんてモヤモヤ考えてたら、タイガ様がお布団代わり。


怖すぎる!モヤモヤが吹っ飛んだわよ!


というかラウラすごい。


怖くて半泣きになったが、開様とラウラに宥められて勇気を振り絞った。


タイガ様も情けなさそうな顔をしないで、ほんとに泣きそう。




夜が明けて朝に、おはようございます。


そして昨日は色々ありがとうございました。


あ、ラウラも起きたのね。


そしてとうとう弓にエンチャントをすることに、もう気絶しないですよ!


希望を聞かれて、威力が上がるものがいいと伝えた。


どうなったんだろう、ワクワクしながら試し打ち。


近くの木でいいかしら、それ!




……開様、お話があります。


普通矢が木に当たると刺さります、コンポジットボウの威力でも木が抉れて刺さるくらいのものですよ?


なんで丸く木が貫かれてるか説明をお願いします、それも2本も。


3本目だってものすごい抉れてから刺さってるんですが!


なんですかこの威力!?


ほら、ラウラだってポカーンってしてるじゃないですかー!


そりゃそうよね、お姉ちゃんが打った矢があんなことになるなんて思わないわよね。


私だって思わないわ!


開様は<威力倍化>を付けただけだぞ、とのこと。


倍どころか!


……考えられるのは弓の修理で使った剣。


あれがかなりの業物で、その攻撃力がこの弓に併せられている。


開様に伝えると、そうかもなって軽く返された。


この問題軽くないんですけどー!?


既存の武器を素材にすると作った武器が強くなるってどう考えても大問題なのに!


タイガ様を追い詰めたオークが持ってたからよくわからんって……オークがタイガ様を追い詰めること自体が異常なので、やっぱすごい業物なのでは。


と、とりあえず強くなった。


飛躍的に。


武器だけ。


私は何も変わってない、武器に使われないように注意しなきゃ!


そして植物をスキルで育てるのを見せてもらう、私とラウラが見てなきゃちゃんとした証人になれないからしい。


実演。


ほ、本当に育った……。


ドワーフ族、すごい反応しそうだなぁ。




さて、そろそろ出発しますね。


何かあったら使ってくれとポーションをいただいた、優しいです。


キュンキュン。


3日くらいで戻れるだろうと開様に伝える。


移動で片道1日、ドワーフ族の里で1日。


うん、3日で戻れるね。


次こそは開様とお近づきになりたいな!


まず目下の課題はタイガ様に慣れること!

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