第11話 ウェアウルフ族が目を覚ました。

「ウェアウルフ族ですね、かなり戦闘に長けた種族なんですが…何があったのでしょうか。」


メアリーが気を失っているウェアウルフ族を心配そうに見てそう言った。


ポーションを飲ませ、布団に寝かせておく。


「とりあえず起きるまでは休ませておく、俺たちは夕食にしよう。」


無理やり起こして食べさせるわけにもいかないので、ラウラも呼んで3人で食事。


タイガにはお肉を与えた。


その日、ウェアウルフ族は目を覚まさなかったのでそのまま就寝。




朝になりデニスが帰ってくる。


「いろいろ取って帰ってきたぞ、豆類も欲しそうだったのでそちらは多めに持ってきた。

 ……ウェアウルフ族じゃないか、どうしたのだ?」


「昨日傷だらけで助けを求めてこちらに来たの。

 開様のポーションで傷は治ったのだけど、まだ目を覚まさないわ。」


「索敵魔術を使ってるのですが、特に敵は見当たらないのです。」


「そうか、生きてるなら目を覚ますまで寝かせておいてやろう。

 それより開どの、持ってきた種は植えて大丈夫かの。」


「あぁ、頼む。

 その後デニスは台所を作ってくれないか?」


「それは大丈夫だが、開どののスキルで作れば良いのではないかの?」


想像錬金術イマジンアルケミーは俺が知ってるもので、なおかつその素材が無いとダメだ。

 俺が知ってる台所を作るのはこの世界じゃ再現出来ないんだよ。」


「ふむ、そのスキルは万能ではないのだな。

 知らないものを作るのは不可能、無から有を作るのも不可能は道理だの。

 あいわかった、植え終わったら素材を集めて作っておこう。」


「素材と仕組みが分かれば後は複製出来るから最初は頼んだ、俺は風呂場を作る。

 メアリーは染料を頼むぞ。」


「わかりました。」


「私は何をすればいいのです?」


ラウラは仕事を振られなくてムスッとしている。


「ラウラは索敵魔術と、ウェアウルフの看病を頼む。

 目を覚ましたら俺を呼んでくれ。」


「わかったのです、任せてくださいです。」


「タイガは狩りを頼む、仕留めたら食べずに持って帰ってきてくれ。

 優先順位はグレースディアー、イノシシ、オークで頼む。」


タイガはグォッと鳴き、森へ潜っていった。


仕事を皆に頼み、それぞれの仕事についた。




まずは温泉を思い浮かべ、木製の浴場を錬成。


家の近くがいいので隣に作る、廊下も作って繋げるか。


流石に露天は危ないので、簡易の建物の中に作る。


屋根も必要だしな。


次に貯水場を作り、上り台と滑車と桶、蔦をロープ代わりにして貯水場から風呂場の屋根まで水を組み上げれるように。


井戸の要領だ。


貯水場の水は泉じゃ足りなさそうなので、川から引っ張ってきた。


後は染料が出来れば、太陽熱温水器を取り付ければ完成だ。


「こっちはあらかた終わったぞ。」


「では開様、炭作りの番をお願いしていいですか?

 私は今出来たものを染料にする作業に入りますので。」


「わかった、頼むぞ。」




染料がある程度完成し、太陽熱温水器を想像する。


よし発動出来るぞ、よかった。


太陽熱温水器を屋根に取り付け、中に水を入れる。


最後に石で作った配管と、木の蛇口を取り付けて浴場にお湯が行くようにして完成。


風呂が出来た、入れるのは明日からだろうが。


「開様、お風呂とはなんでしょうか?

 後は屋根についてるものも……。」


水浴びで特に疑問を感じてなかったもんな、風呂の習慣がないのか。


「風呂は水浴びの水が温かくなったものだと思ってくれ。

 屋根につけてるものは陽の光の熱を使って水を温かくする装置だ。

 明日から使えるぞ。」


「温かい水で水浴び……楽しみです!」


温泉が湧いていれば話は早かったが、そこまで贅沢は言えないだろう。


そうしていると、デニスが材料を集めて帰ってきた。


「開どの、これをワシの言ったように加工をお願い出来るかの。」


「わかった、それくらいなら任せてくれ。」


「なら私は羊がいないか探してきますね。

 うまく繁殖出来ればこの先役に立ちます。」


畜産か、考えてなかったな。


しかし羊毛はかなり魅力的だ。


「あぁ頼む、気を付けてな。」


「大丈夫です、開様の弓があればその辺の魔物には後れを取りませんよ!」


それでも油断は禁物なのでポーションを持たせておこう。




デニスの指示された通りに材料を加工しているとタイガが戻る。


グレースディアーだ、よくやった。


肉を錬成して内臓を食べてもらう。


肉を地下室に持っていってると、ライラの声がする。


「開様、ウェアウルフが目を覚ましたのです!」


やっと目を覚ましたか、よほど疲れてたんだな。


「デニス、ちょっと離れるぞ。」


「うむわかった、必要な加工はもう終わっているから後は任せておけ。」


「ここは……?

 エルフ・ドワーフ・人間……あと一つはデモンタイガーの匂いがするぞ!?」


「ここは俺の家だ、俺の名は開 拓志という。

 みんな一緒に暮らすようになった仲間だ、お前は?」


「俺はローガー・ヨアヒム。

 少数とはいえ、他種族が一緒に生活してる?

しかもデモンタイガーまで……?」


そうか、各種族の里しかないから他種族で暮らす場所は未開の地にはないんだな。


「ここに来たときは傷だらけだったな、どうしたんだ?」


「狩りの途中オーガの群れに襲われて、しくじってしまった。

 動けるようになるまで身を潜めて、つい最近なんとか脱出したんだ。

 だがそれでもギリギリでな、限界だった時にここが目に付いて……迷惑をかけた。」


「構わないよ、困った時はお互い様だ。

 今日も休んで、泊まっていってくれ。

 グレースディアーの肉をドワーフ族のデニスに料理してもらう予定だ。」


「グレースディアーをドワーフ族に……!

 お言葉に甘えさせていただく、ありがとう開どの。」


ローガーのよだれがすごいことになってた。


ドワーフ族の料理が美味しいのは他の種族も知ってるんだな。




台所も完成しており、デニスとメアリーと俺で夕食の準備をして食事にする。


羊はいなかったらしい、急ぎではないからへこまないでいいぞ。


初日に比べて料理も美味しくて温もりも安心感もある、充実感がすごい。


異世界生活、前の世界より楽しいじゃないか。


未開の地ということは、この辺りは好きに使っていいんだよな。


いろいろ作って、もっと快適にしよう。


「ところで開どの。」


今後のことを考えていると、ローガーが俺に話しかけてくる。


「なんだ?」


「デモンタイガーが俺をずっと睨んでいて怖いんだが……。」


タイガ、同じ毛皮持ちだからって威嚇するな。


ローガーに抱き着いて寝たりしないから。

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