第220話 カタリナを無事発見、回復させるためにやれることをやろう。

準備が完了して即座に出発、ウーテも全速力で村へ向かって飛んでくれた。


俺と流澪は飛ばされないようにウーテの首に必死にしがみつく、怖いしスピードを緩めてほしいが今は一刻も早くカタリナのところへたどり着きたいので我慢。


そこそこ離れているはずだが、村を発って30分ほどで元プラインエルフ族の里に辿り着いた……相当飛ばしたんだな。


「よし、カタリナを探すぞ!」


俺の言葉と同時に三手に分かれてカタリナを探し出す、プラインエルフ族の里はあまり建物の場所なんかは覚えてないけど……こんなことになるならしっかり里を散策しておけばよかった。


だが外に居るとは考えにくい、建物の中に居ると考えるのは妥当だろう――奥から順番に探していくか。


そう思い一番奥の建物に入ると、辛そうに横たわっているカタリナを発見。


「カタリナが居たぞ、一番奥の建物だ!」


俺は2人に呼びかけた後、すぐさまカタリナに駆け寄る。


「カタリナ、大丈夫か!?」


「村長……どうして来たの……!?」


「来るに決まってるだろ、勝手に飛び出しやがって……。」


俺はカタリナを抱きしめる、飛び出して一人で治そうとしたがやはり不安だったのだろう……弱弱しい力でカタリナは俺を抱きしめ返した。


「カタリナさん、大丈夫!?」


「大丈夫ですか!?」


俺の声を聞いた2人も入ってきてカタリナを抱きしめる、ちょっと苦しそうだが嬉しそうだ。


だかそれもつかの間、カタリナは辛い表情をしながら俺達を必死に引き離す。


「十日熱が感染するわよ……離れて……!」


「俺達は看取りに来たわけでも感染しに来たわけでもない、カタリナを助けに来たんだ。

 まずは水分補給だな、この里も引き払って結構経ってるしまともな飲料水は無いだろ?

 それとさっき抱きしめて分かったが熱がすごい、氷嚢も持ってきてるからこれをおでこと脇に挟むんだ……脇が辛かったら首の裏でもいいからな。」


俺はバックパックから水筒と氷嚢を取り出しカタリナに渡す、カタリナは俺の指示通りに水分補給と氷嚢を使って体を冷やしだした。


「後は布団を使ってゆっくり休んで、取ってくるから。」


そう言ってウーテは外に置いてある布団の入った箱を取りに戻る、確かに体調の悪いまま村に戻るよりは少し楽になったほうがいいかもしれない。


「本当は早く村に戻ってほしいけど仕方ないか、結構熱高かったもんね。

 清潔な水はウーテさんに言えば出るし……拓志、向かいの家を掃除しましょ。

 幸い掃除道具が外にあったし、多分生活魔術を使わない人の家だったんでしょうね。」


疑似的に清潔な空間を作るわけか、確かにそこで休んだほうが早く体調が良くなるかもしれない。


「待って……清潔な空間って何?

 十日熱なんて治るか死ぬかの二択なんだから何したって……。」


「カタリナさんは私達の言った通りに休んでて。

 その症状の病気は前の世界でさんざん見てきたし情報も持ってる、それに拓志と私は抗体というその病気に対抗出来る物が備わってるから。

 ちゃんと清潔な場所でしっかり休めば体に備わってる治癒能力で絶対に治る、だから安心して。」


反論するカタリナを宥めていると、すぅすぅと寝息を立て始める。


俺達の顔を見れて安心したのか氷嚢が冷たくて気持ちいいのか……恐らくどっちもだろう。


掃除をしに向かうと布団を持ったウーテと合流、状況を説明して3人で向かいの家を掃除することに……速くカタリナを元気にしてやらないとな。




しばらく掃除してある程度綺麗になり、換気をしっかり行う。


うん、健康な俺にも分かるくらい過ごしやすい部屋になったな。


「そろそろカタリナをここに連れて来てもいいだろう。

 動けるくらい良くなったら村に運んで療養させればいい。」


「そうしましょ。」


「私は村に行って追加の食糧やカタリナさんの着替えを取ってくるわ。

 もしかしたらしばらく動けないかもしれないし、ミハエルさんも呼んで転移魔術も起動したほうがいいと思うし。」


「分かった、よろしく頼むよウーテ。」


ウーテも疲れているだろうに、再び全速力で村まで向かってくれた。


俺と流澪は2人でカタリナを起こし、掃除した家まで運んで予め敷いておいた布団に寝かせる。


「気持ちいい……ありがとう……。」


「ゆっくり休んで早く良くなってくれよ。」


俺はカタリナの頭を撫でながら寝付くのを待つ、流澪は俺とカタリナのことをじっと見ていた。


ちょっと恥ずかしい。


その後は特に何も無く、ウーテとミハエルが帰って来て俺達のご飯も持ってきてくれていたのでいただくことに。


カタリナも軽く食べたが、まだ食欲が戻ってないのであまり食べなかった。


「水分は取ってるから大丈夫だと思うけど、こういう時こそ体に栄養とエネルギーが必要だから食べて欲しいのにな。」


「無理して吐き戻しても可哀想だ、本人の食べたいタイミングを尊重しよう。」


流澪は心配そうに寝ているカタリナを見つめる、俺も心配だがインフルエンザなら流澪の言う通りにしていれば問題無いだろう。


前の世界でも罹患したことあるが、病院で薬を貰って数日寝たら治ったからな。


解熱薬はまだ出来てなかったのが残念だけど、ミハエルが転移魔法陣を展開してくれたので折を見て取りに行き、カタリナに飲ませれば大丈夫だろう。


食事も終わり交代で風呂に入る、カタリナも誰も居ない時間を狙って入ることを勧められたので頑張って入ってくれた。


さっぱりするのは嬉しかったのだろう、風呂から帰って来たカタリナは少し調子が良さそうに見えた――ウーテにおんぶされてるけど。


その日はそのまま就寝、一晩起きて様子を見てようかと提案したが「看病側が疲労で倒れちゃ元も子もないから寝なさいよ。」と諭されたので寝ることにした。




翌朝。


カタリナは少し寝苦しそうにしている、少し暑いのだろうかと額を触ると昨日よりあからさまに熱が上がっていた。


「カタリナの熱がすごいことになってる、ちょっと解熱薬が完成してないか確認するため村に帰るぞ!」


全員眠たげにしていたが、俺の言葉を聞いて一気に真剣な表情になりカタリナに近寄る。


「体温計があればなぁ……でも40度を超えてるかもしれない……!」


流澪がカタリナに触れて暫定的に体温を計る、40度はかなりやばいな……お腹の子どころかカタリナの命すら危うくなっている。


俺は急いで村に帰りヒルデガルドに解熱薬が完成してないか聞くと、1回分は完成しているとのこと。


一気に調合しないのかと聞くと分量が難しく、確実に作るにはこの方法しかないそうだ。


1回分しかないのは心もとないが何もしないよりマシだ、俺はヒルデガルドに礼を言ってすぐさまカタリナの下へ帰る。


解熱薬をカタリナの口に含ませて、水差しで口に水を入れて飲み込ませる……これで様子を見るしかないか。


しかし40度となるといよいよ気が抜けない、カタリナの軽微な変化にも気が付けるようしっかり見てなきゃな。


俺が険しい顔でカタリナを見ていると、流澪が「ちょっと相談があるんだけど。」と口を開く。


「どうしたんだ?」


想像剣術イマジンソードプレイでカタリナさんと病気の繋がりを切ることって出来るのかなって思いついたの。

 何が起きるか分からないから怖いけどさ、もしインフルエンザじゃなくって治らなくってカタリナさんが亡くなったらと思うとそっちのほうが怖くて……。」


流澪が少し涙を浮かべて思ったことを話す、だが最初に話した方法は試してもいいかもしれない。


想像剣術イマジンソードプレイの治療を誰かで試してみよう。

この中で体の不調がある人はいないか?」


本来こういったことはいきなりするものではないが、今回は人命がかかっているからな……。


「あ、私肩が凝ってるわ。」


ウーテが即座に手を挙げる、メアリー程ではないがウーテの果実も大きいからな……そりゃ肩も凝るだろう。


「ウーテさん、もしかしたら多少不自由が起きるかもしれないけど……さっき話した想像剣術イマジンソードプレイを使った治療の実験台になってくれる?」


流澪がウーテに確認を取る、ここで拒否されたら被験者を村で募るしかない。


「村長も流澪さんも信用してるから大丈夫、それにそれが成功したらカタリナさんは元気になるんでしょ?

 私はドラゴン族よ、ちょっとやそっとじゃ死なないから安心して試して!」


「ありがとう、じゃあ行くわね……。」


流澪はいつでも想像剣術イマジンソードプレイを使えるようにと持ち歩いてる短剣を構え、ウーテの前で振り下ろした。


頼む、うまくいってくれよ……。

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