第134話 ドラゴン族の里の調査へ向かった部隊が無事帰って来た。

ドラゴン族の里の調査部隊が出発して1週間と少し経った……流石に長すぎないかと心配になってオスカーに相談する。


「メアリー殿が念入りに調査してくれと言っていたからその通りにしておるだけだろう。

 それにアラクネ族の里にも寄るはずだ、時間がかかるのも仕方あるまい。」


そういうものなのだろうか、だが俺はドラゴン族の里を見たことがないから広さも分からないのでオスカーの言葉を信じることにする。


とりあえず見回りをして気を紛らわせようと思い歩いていると、クズノハがキョロキョロとしながら広場で座っていた。


「クズノハ、どうしたんだ?」


「む、村長か。

 今日は魔王が来る日だろう、魔族領のトップを私が単身で対応するなど少し緊張してな……服も髪型も皆の意見を参考にして決めたのだが、変ではないだろうか?」


「大丈夫だ、ちゃんと似合ってるぞ。

 魔王と仲良くしてやってくれ。」


今日が魔王の来る日だったか、偶然だがクズノハも服装や髪型をバッチリ決めてる。


良かったな魔王、今日のクズノハは可愛らしく仕上がってるぞ。


俺は2人の邪魔になっても悪いので早めに会話を切り上げて退散する、クズノハから「やはり村長も一緒のほうがいいのでは。」と言われたがそんな事は絶対にないのでしっかり断った。


でも後でどうなったか気になるから聞かせてほしい、魔王も頻繁に時間は取れないだろうし思いを伝えると思うんだよな。




2人の行く末は気になるが俺は見回りの続きをする、土と岩の確保のために採掘場へ行くと外にとんでもない量の土と岩が山になっていた。


これだけで足りるんじゃないか……?


「あ、村長お疲れ様です。

 シュムックの採掘ついでに土と岩を出してますが、まだまだ出したほうがいいでしょうか?」


「ちょっとシモーネとウーテに確認を取ってもらう、でも足りないといけないからまだ継続して出しておいてくれ。」


「分かりました、では引き続き作業を続けますね。」


しかもこれを出しているのはアラクネ族みたいだ、俺の心配は完全に杞憂かもしれない。


あの蜘蛛のような足でケンタウロス族と同等の脚力があるのか……アラクネ族すごいな。


その後シモーネとウーテに土と岩の量を確認してもらったが一部分しか埋めれないだろうということだった、継続して作業してもらってよかった。


そしてその時言われたのが、ドラゴン族が土や岩を運べるような道具が必要になるとの事だ。


俺は陸路で行こうと思っていたが、確かに空路で解決するならそのほうがいいかもしれない。


そもそも人間領にも穴があるって言ってたし空路で資材を運ぶ方法が無いとダメなんだよな、完全に頭から抜けていたよ。


その後シモーネの協力を得てどれくらいの重さまで余裕を持って運べるならテストしていたが、後程ウーテから「シモーネおば様の力と他のドラゴン族を一緒にするのは可哀想よ……?」とツッコミが入った。


シモーネってそんな力が凄かったのか、あまりそういう場面を見たことがないから分からなかったぞ。


ウーテに連れられてシモーネは家に帰り、他のドラゴン族でテストするとシモーネが持った重さを持って飛ぶのは無理らしい。


やっぱり規格外だなあの夫婦、今度から基準にするのはやめよう。


それからテストを続けて、これくらいなら大丈夫だろうという重さが分かったのでそれに合わせて土や岩を入れる箱をダークエルフ族に、それをドラゴン族が運ぶためのベルトの作成をドワーフ族に依頼した。


そこまで時間もかからず作れるらしいので任せることにする、もし手が足りないようなら俺が作るつもりだったけど。


これで後は報告を待つだけだな、大分何が起きているか分かっているからそこまで新たなことは分からないと思うんだけど。




やることを終え食堂で食事を取っていると「調査部隊が帰ったぞー!」と外から声が聞こえた。


やっと帰ったか、何より無事に帰ってきてくれてよかった。


残り少しの食事をかきこんで調査部隊の出迎えのため外へ出る、すると里に居たであろう全てのアラクネ族を連れて帰ってきた調査部隊の姿があった。


「すみません、アラクネ族の里に行くとギガースに襲われていたので討伐した後、そのままアラクネ族全員を運ぶため試行錯誤してて遅くなりました……。」


「そんなことがあったのか、とりあえず今日はゆっくり休んでくれ。

 報告は明日聞くから、何を話せばいいか休みながら考えていてくれると助かる。」


調査部隊は「分かりました、それではお言葉に甘えさせていただきます。」と一目散に食堂へ向かっていった、腹も減ってただろうし酒も飲みたいだろう。


しっかり休んで英気を養ってくれ。


俺はアラクネ族の住居を作らなきゃな、ざっと数えても60人は居るが全員女性のようだ、どうやって繁殖を行っているんだろう。


「あら、あなたが村長さんかしら?

 私たちを見ているようだけど……何か疑問なの?」


アラクネ族の一人が前かがみになって俺に話しかけてくる、果実の谷間が見えてるから少し自重してほしい。


「いや、見たところ全員女性だから男性のアラクネ族はどこにいるんだろうなぁ……って思って。」


「男という性別のアラクネ族は居ないわ、同時に女というアラクネ族も居ないのよ。

 私たちは両性具有種族だから、どちらも男であり女なのよ。」


ものすごい刺激的な情報を聞いた気がする。


「そうだったのか、それは知らなかったよ。

 とりあえずイェンナやティナが住んでる場所の近くへアラクネ族の住居区を作る、同じような作りなら問題無いとは思うが、他に希望があればまた俺か俺の妻へ伝えてくれ。」


「えぇ、分かったわ。

 これからよろしくお願いしますね。」


「こちらこそよろしく、シュムックの加工以外にも何か出来ることがあれば教えてくれると助かるよ。」


そう言いながら住居を希望分作り終えて、アラクネ族が続々と荷物を運びこんでいく。


よく考えたらこの人数のアラクネ族だけでなく荷物も運んでいるのか、調査に行ってたドラゴン族……お疲れ様。




調査部隊が帰った次の日の朝、調査部隊の報告と現在の状況を周知するための話し合いが広場で始まった。


「さて、まずは調査部隊から報告させていただきます。

 ドラゴン族の里とその周辺をくまなく探索した結果、地下世界へ繋がる通路を発見しました。」


初っ端からとんでもない報告が入ってきたな、これは今までの話し合いで一番長くなりそうだ。

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