第135話 話し合いをして今後の方針が決定した。
調査部隊の報告を聞いたら初っ端からとんでもない報告を聞かされた、ドラゴン族の里の近くに地下世界に繋がる道があるだって?
「正確には道というより監視用通路のようなものですね、大型の魔物や部隊が通るような大きな道では無かったので。
ドラゴン族があの里に住んでた間にギガースが出なかったのは、あそこからドラゴン族の動きを監視して異形の者を送り込んでいたのでしょう。」
ドラゴン族の里に何かあるというメアリーの読みは当たっていた、まさかそんなものがあったなんて。
「そんなものがあったのね……自分が長年住んでいたところなのに気付かなかったなんて。」
「ワシもだ、ドラゴン族に楯突く種族など居らぬと驕ったか……。」
オスカーとシモーネが落ち込んでいる、しかしドラゴン族という種族の里の近くにそんなものを作るなんて考えもしないだろうし仕方ないとは思うけど。
「その通路に何か生命体は確認出来ましたか?」
メアリーが調査部隊に問いかける、確かにその通路には何かが居るはずだからそれは重要だよな。
「いえ、こちらが気づく前に身を潜めたのか何も確認出来ませんでした。
常時見張りを置くようにしましょうか?」
「その必要はないでしょう、ドラゴン族に気付かれたと知れば焦って何かいつもと違う行動を起こすか何もしないの二択でしょうから。」
「こちらに対して何か攻撃を仕掛けてくる可能性は無いのか?」
「そんなことが出来るならドラゴン族が里に住んでる間に何かしているはずです。
それにそんな不自由な選択しか取れないところに居座るということは、そこから動けない明確な理由もあるはずなので。」
なるほど確かに……相手の戦闘力はドラゴン族より格下で移動も出来ないのか。
「ならさっさと穴と谷を埋めてその地下に住んでる何かの話を聞こう、こんな時間をかけて大掛かりな事をするのには理由があるはずだ。」
俺が今後の方針を皆に伝えると次々と疑問の声が上がってきた、理由は「対応が甘すぎる。」ということ。
だが話も聞かずに相手を殺すことは誰にでも出来る、しっかり話を聞いたうえで生死の判断をしてからでも遅くないと説得した。
悪いことをしたことはキュウビのように償えばいい、もしそれも出来ないような奴なら処断すればいいだろう。
それにオスカーは俺の力を生かす力だと言ってくれたからな、
「オスカー様はドラゴン族の里にある通路の奥の調査をお願いします、オスカー様の力なら瘴気を払いながら移動出来ますよね?」
「無論だ、ワシが見逃した失態はきちんと働いて返そう。
だがメアリー殿、奥に居る者は捕えたのでいいか?」
「悪意ある者ならそれでお願いします、ですがよく考えると……悪意ある者に何かが捕えられている可能性もあるんですよね。
その場合はその人の救出を、可能なら状況の打破をお願いします、その判断はラウラも動けるようになりましたし部隊に編成すれば対応も可能でしょう。」
「心得た、そのように部隊を編成させてもらおう。」
危険な行動だが……いくら穴や谷を塞いでも元を断たなければ解決には至らないので仕方ない。
それにオスカーが誰かに負けるとは思えないし恐らくシモーネもついていくだろうし……あの夫婦が負けるならもう世界の終わりのようなものだ。
2人が率いる部隊とラウラの能力を信じよう。
「開様と資材搬入及び護衛部隊は準備が出来次第、谷の表面だけでも埋め立てるようにお願いします。
地下で何かを企む者の計画を遅らせる事は重要ですので、穴を塞ぐのはそれからでも構わないでしょう。」
「分かった、準備が出来たと声が掛かり次第そちらに向かうことにする。」
メアリーの指揮の下、それぞれが準備に向かって動き始めた。
本来なら村長である俺がするべき仕事なのだろうが、ドラゴン族すら認めるメアリーの思考能力を無視してまで俺がすることでもないだろう。
実際今までメアリーの考えで動いて最悪の結果になったことはない、やはりこういった場で物を言うのは信頼と実績だ、決して立場なんかではない。
話し合いが終わってすぐに地下へ続く通路の調査部隊は編成し終わったらしいので出発していた。
無事に帰ってくれよと声をかけると「ウルスラを悲しませるわけにはいかん、全力でラウラ殿を守って解決してくる。」とオスカーの気合の入った声をもらえたので安心。
オスカー……ウルスラにデレデレだったもんな、シモーネもだけど。
下の穴を埋める資材はウーテの見立てだとまだ足りないらしいので、山で土砂崩れが起きそうな場所からどんどん運んできてくれてるらしい、俺の出番はもう少し先だな。
準備が出来たら声をかけてくれと言っているので、俺は通常通りの仕事をすることに。
見回り前に通貨を入れる箱を作るのを忘れていたので試作、各貨幣は家にあるのでそれぞれ100枚ずつ入る箱を作製してみた。
試しに入れてみたところぴったり100枚入る……うん、これは便利だぞ。
とりあえず家にある貨幣を箱に収納するため必要分だけ作ることにした、こうして枚数が分かるようになると結構な貨幣が俺の下にあるのがわかる。
他の種族のところにはもっとあるんだろし、そりゃ経済混乱を危惧するよな。
箱を作り終えていつもの見回りへ、すると魔王とクズノハが2人で歩いているのが見えたのでつい隠れてしまった。
どちらも笑顔だったのは確認出来たので決して悪い雰囲気では無いだろう……尾行するのも2人に失礼なのでやめておくことに。
後で結果は聞けるだろうし、今は2人の時間を楽しんでもらおう。
そういえば今回の記録は誰が取ったんだろう……もし取ってないなら分かる範囲でメモしておいたほうがいい気もするが、後でメアリーに確認しておくか。
俺は2人に気付かれないように2人から離れて、村の見回りを再開した。
牧場を見回りしていたら、興奮気味のドワーフ族とケンタウロス族から声をかけられる。
どうしたのかと思ったらバターの作成に成功したらしい……時間は少しかかったが作れただけでもすごいと思う。
「それと、バターを作る過程で違うものも出来たんです……加工するのを忘れてて固まったものですが食べてみると美味しくて!
村長にも是非食べてもらいたいのですが!」
そういって俺の前に出されたのはどうみてもチーズだった、まさかこの世界でチーズが食べれるとは。
実際食べてみるとものすごく濃厚で美味しい、これはお酒が欲しくなるやつだ。
「これは美味いよ、俺が前に居た世界ではチーズと呼ばれてたものだな。
ちなみにこれの量産は出来るのか?」
「忘れてたものだが工程は再現出来るから大丈夫だぞい、村長が美味しいと言うなら大丈夫だろう。
バターと一緒にチーズも量産するとしよう、これは忙しくなるぞい!」
そう言ってドワーフ族が牧場へ走っていった、ケンタウロス族もドワーフ族の後を追いかけて走っていく。
バターにチーズ……乳製品は保存が難しいものだが生活魔術で解決出来るし魔族領にも流通させれるだろう。
また貨幣が村に集まるのか……俺は地下に住む者や世界規模の問題とは別のことに頭を抱えながら見回りを続けた。
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