第74話 ダラダラしていたら皆から相談を受けた。

今日は特にやることがない、ここ最近バタバタしてたから家でゆっくり過ごせそうだ。


メアリーのお腹も少し大きくなっている、予定は稔の季節くらいだろうとのことだ。


元気な子を産んでくれよ。


ウーテ・カタリナも入れて4人でダラダラと過ごしている、たまにはこんな日もあっていい。


「最近出ずっぱりだったから、こうやって1日だらけてても文句言われないよねー?」


ウーテが珍しく床に寝っ転がってゴロゴロ転がりながらだらけている、最近どこに行くにも付いてきてもらってたから疲れてたんだろうな。


「いいと思いますよ、ラウラから聞いた話では特に変わったこともないそうですし。

 最近はワイバーンも出てないので空の哨戒も平和そのものと言ってました。」


メアリーがだらけているウーテに相槌を打つ、確かにワイバーンは最近見なくなったな……いったいクルトはどこからワイバーンを見つけていたのか。


また食べたいけど、見つからないものは仕方ない。


カタリナが喋らないなと思い目をやると、スヤスヤ寝息を立てている……今日は本当にだらけきっているな。


まぁ俺も床に寝転んで、ドワーフ族からもらってきた酒を飲んでる状態だから何にも人のことは言えない。


メアリーはプラインエルフ族に作ってもらったロッキングチェアに座ってゆったりしている、横になりづらいからと気を利かせてくれたらしい。


皆でだらけていると、玄関をノックする音が聞こえた。


「すみません村長、相談したいことがあって尋ねたのですが入ってよろしいですか?」


ザスキアの声だ。


「ちょっと待ってくれ、着替えたら俺が出るから。」


さすがにこのだらけ具合を見られるのは恥ずかしいので、入るのを待ってもらう。


急いで着替えて玄関を開けると、ザスキアの他にローガーとハインツが居た。


「どうしたんだ?

 例の魔族領の件での相談か?」


「そうです、向こうの要望に応えようとするとどうしても村の人数が手薄になってしまって。」


「私たちもどこまで向こうの戦力を鍛えたりしていいかわからず。」


「ピンチヒッターとして呼ばれるのは良いが、向こうを甘やかしすぎることにならないか?」


ローガーとハインツは負担にならない程度にやれることをやってあげてくれ、魔族領の戦力を向上したところでこちらが不利益を被るわけではないからな。


それに強敵が現れて応援に行かずに全滅されても寝覚めが悪いし……その辺は俺が協力してやれないから。


「わかりました。」


「わかったよ村長。」


ローガーとハインツは俺の話に納得して帰っていった、こちらに被害が及ばないよう相談を重ねていたんだろう。


あまり断りすぎると角が立つし、今度そういうことがあったら早めに相談してほしい。


さて、残るはザスキアだ。


「とりあえず向こうからの要望がどうなってるかも聞きたいし、話も長くなるだろう。

 今日は天気もいいし花の季節で暖かくなってきたから、広場で座りながら話を聞くよ。」


「えぇ、お願いします。」


そう言って俺とザスキアは広場まで歩き、ベンチに腰掛けて話の続きをする。


要約すると、城・魚市場・野菜市場、それに一般領民の分の食糧まで冷凍冷蔵を頼まれているらしい。


そりゃ村が手薄になるわけだ、流石にそこまでは人員を割けないな。


「1回やるとそれ以降生活レベルは下げにくいからな……城と市場までは予想してたが一般市民までは予想してなかった。

 どうするかな、何も思いつかないぞ。」


「やはり断るべきでしょうか、魔族領の方は是非と言われていたのですが。」


食糧を配っているとき、あれがとても便利に感じて領民から声が上がったんだろう。


領民からしたら、そんなことが出来るなら是非してほしいと思うに決まっているからな。


「断るのは簡単だが、何か工夫をすれば解決するかもしれない。

 俺も他の人と相談してみるから、返事は保留にさせてくれないか?」


「大丈夫です、魔族領の方には返事はこちらからするように伝えてあるので。」


それなら数日待たせても大丈夫だろう、ドワーフ族とかに相談してみるか。




「この村みたいに食事をする場所が一か所なら簡単だろうが、すべての家で保存するとなると一家に一人くらいプラインエルフ族が必要じゃろ、無理じゃないかの?」


デニスに相談しても想像通りの言葉が帰ってきた……やっぱりそうだよな、さてどうしたものか。


悩みながら家に帰り、悩んでいるとロッキングチェアでくつろいでいるメアリーから声をかけられた。


「どうしたんですか、そんなに悩んで。

 おばあ様の相談が解決しないのですか?」


「まったくその通りだ、城や市場の食料保存までは読めていたんだが一般領民の分まで頼まれてるらしくてな。

 流石にそれを受けてしまうとプラインエルフ族が全員魔族領に移住しなきゃならないくらい手が足りなくなるんだよ。」


俺の話を聞いて少し悩むメアリー、流石に頭の回転力がずば抜けてるメアリーでも悩むよな。


なにせ解決方法が断る以外見当たらない、輪作障害は解決したがもしものために食糧の備蓄を一般領民が出来ると安心感が違うだろうから請けてやりたいんだがな。


「魔族領の一般領民の住居は区画分けがされていますか?」


「あぁ、ある程度区画は分かれていたと思うが……それがどうしたんだ?」


「それならその区画ごとに共用の倉庫を作って、内部を仕切り個別に保管と冷凍冷蔵をしてはどうでしょう。

 冷凍冷蔵をする時間を決めれば、その時間だけにプラインエルフ族が生活魔術をかければいいので倉庫の数だけ人員を派遣すれば解決するのでは?」


銀行の貸金庫みたいな要領か、確かにそれなら人員を削減出来るし倉庫番として魔族領の雇用も生むことが出来る。


かなりいい案だ、土地の問題があるがそれは魔族領の問題なのであちらで話し合ってもらおう。


「その案いただくぞメアリー、話を聞いてもらってよかったよ。

 さっそくザスキアに相談してくる。」


「お役に立ててよかったです。」


俺は駆け足でザスキアのところへ向かい、先ほどのメアリーの提案を伝える。


「なるほど……それなら村に負担をかけることなく要望が聞き入れれますね。

 あの子はそんなに頭が回る子でしたか、里に居た時から賢いと思ってましたが――過ぎた信仰は目を曇らせますね。

 それが生活に役立つなどと当時の私は思っていませんでした。」


「過去は過去、今は今だ。

 それより土地の問題と倉庫の警備については魔族領に何とかしてもらってくれ、少人数だが新しい雇用も生まれるしあちらにもメリットはあるだろ。」


「わかりました、そのように伝えておきます。」


よし、これで相談されたことは解決だな。


日も落ちかけているし、4人で食堂に行ってご飯を食べるか。


食べ終わったら、また寝るまでダラダラの続きをしよう。

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