第102話 神の神殿建設イベントの相談が終わった。
商人ギルドで魔王、ギュンター、企画担当者と話してから2日。
神の神殿建設イベントに対しての住民の声を届けるため、再び魔族領へ足を運んでいる。
俺としてはかなり億劫だが、村の住民の総意を無下にするわけにもいかない……楽しみにしてくれてる人もいるし頑張ろう。
魔法陣から少し歩いて商人ギルドに到着、受付の人にギュンターを呼んでもらう。
しばらくするとギュンターが奥から顔を出しまたあの応接室へ通された、紅茶飲みたかったな。
「村の住民から意見を聞いてきた、どの種族も全て参加してもいいらしい……というかむしろ楽しみにしている節がある。
俺の登場と一言だけが不安だが、あの企画受けさせてもらうよ。」
「おぉ、ありがとうございます!
これで村長をこの世界へ導いた神の信仰心もうなぎ登りですぞ!」
ギュンターは企画が通ったことに喜んでいる、俺はまだ緊張で怖い気分があるんだが。
「少し汚い話になるが、この企画で商人ギルドはどれくらい儲けるんだ?」
ちょっと興味が出たので聞いてみた、多少はぼかされるがどれくらい利益が出るかは気になる。
「おっと、村長からそのような言葉が出るとは思いもしませんでしたな。
てっきり儲け話には無頓着かと思っておりましたので……詳しい額はお伝え出来ませんが通常の神殿建築の2倍前後、とだけ言っておきますぞ。」
そこまで儲けが出るのか、そりゃ是が非でも通したいわけだ。
「しかしそのような話をされるという事は、村長にもいくらかお渡ししたほうがよろしいでしょうか……?」
「そんなつもりはないから安心してくれ、ちょっと興味があっただけだよ。
食糧を出荷した際のツケがまだ城にあるし、住民が村に訪れた冒険者に武具を売ったり食事を出したりで村にもお金はあるからな。」
「そうでしたか、安心しました……いやこんな言い方をすると意地汚いですな。
ご協力感謝します、せめてものご恩に村へは最優先で要望の品を融通させていただきますぞ、何かありましたら是非私か商人ギルドのギルド員までお申し付けください。」
お金よりそのほうがありがたいな、村にお金が集まりすぎるのも良くないだろうし。
「なら、ここでいつも出してもらってる紅茶が欲しいな。
行商人からも買ったんだが、どうも種類が違うらしくて……俺はここで出される紅茶のほうが好みなんだよ。」
「さすが村長、お目が高いですな。
あの紅茶は魔族領でも最高級の紅茶なのです、次の行商で持っていかせましょうか?」
「そうだったのか、道理で美味しいと思ったよ。
最高級と聞くと怖いな、俺が城にツケてる売り上げで支払えるか?」
「あの紅茶を100キロ卸しても城にツケられてる金額には届かないので安心していいですぞ……。」
どれだけ城にツケれているんだ、財政難になったらどうしようかと不安になるが……何も言ってこないということは大丈夫なのだろう。
俺が思っているより魔族領の財政は潤っているのかもしれない、ただ特定の物資と少しの技術が不足しているだけで。
その点人間領は技術があると思うから、あの闇討ちを理由に上手く技術を提供してもらえれば魔族領はもっと発展するかもな。
だがそこは俺が関与するところではないだろう、キュウビも村を発つ前に政務の引継ぎをしたと言っていたし、魔族領へ何かしら謝罪なんかをきっとしてくれているはずだ。
俺の耳に入ってこないという事は裏で何かしてるんだろうな、一度人間領の市場を自分の目で見てみたいが頼んだら連れて行ってくれるだろうか。
「村長、えらく遠くを見てボーっとしているみたいですが……大丈夫ですかな?」
なんて色々考えているとギュンターに心配された、思ったより長い時間ぼーっと考え事をしていたみたいだ。
「すまん、大丈夫だ。
じゃあ紅茶は次の行商で、企画が前に進んだらまた言伝を村に送ってくれ。
後、村に帰ってあの設計をよく見たんだが俺の追加要望も聞いてもらえたりするか?」
「それはもちろん、何がご希望ですかな?」
「セメントと鉄をあの3倍くらいに増やしてくれないか?
せっかく俺の
「地震とは?」
地震を知らないのか、未開の地ではこの前あったが魔族領では揺れてないのか?
陸路では結構な距離があるからな、もしかしたら向こうで揺れてもこっちでは揺れないのかもしれない。
「地面が揺れる災害のことさ、大きいものになると建物が倒壊したり海から海水が迫ってきて町を飲み込んだり……とにかく俺の世界では怖い災害の1つだったんだ。」
「そのようなことが……私は体験したことないものですな。
しかし備えはあって損はないでしょう、準備させてもらいますぞ。」
魔族領は地震が少ないのかもな、海が近いから魔族領のほうが多いイメージがあったが俺の思い違いなのだろうか。
海に面してる土地は地震が多いと勝手に思っていた、陸や海のプレートが関係しているんだっけ……あまり詳しくないけど。
ギュンターとの話も終わり商人ギルドを後にする、今度行商にあの紅茶を持ってきてもらえるのは嬉しいな。
俺は企画の不安を一時忘れ、足取り軽く村へ帰った。
村に帰ると、プールに変化が起きていた。
プールの外で休んでる人や話してる人が、大きめのタオルを羽織って肌の露出を避けている。
体を冷やしにくいし目のやり場に困ることも少なくなりそうだ、ケンタウロス族が気を利かせて用意してくれたのだろうか。
後でお礼を言わないとな。
だが今日はプールに入る気分ではないのでそのまま通り過ぎ、食事を取りに食堂へ行く。
昼の時間を少し過ぎているのであまり人は居ないが、村を訪れている冒険者なんかがお酒を飲みながら賑やかにしているな。
活気があっていいことだが、あまりうるさくなり過ぎないように住民用と来客用と食堂を分けて作るべきだろうか……食べ終わったらドワーフ族と相談してみようか。
大分お腹も空いていたので早々と食事を終え、食器をドワーフ族に渡す。
「少し相談なんだが、住民用の食堂と来客用の食堂は分けたほうがいいか?
問題が無いならこのままでもいいんだが、もしそっちのほうが便利ならそうしようと思ってな。」
「考えたこともなかったが、確かに分けると便利かもしれんな。
だがあまり離れると良くない、厨房の人手が足りなくなるからの……デニスと相談するか。
村長も時間があるなら一緒に来てくれんか?」
「大丈夫だ、俺が言い出したことだし。」
そう言って食堂の奥へ行き、デニスを交えて食堂の分け方の相談を始めた。
結果、住民用と来客用で食べる場所のみを増設して厨房はそのまま据え置きがいいだろうということに。
これなら人手は今まで通り、住民も来客も気兼ねなく食事が出来るようになるな。
善は急げということなので、楽しい時間を過ごしているところ悪いが冒険者には一時退去してもらって早速増設。
机と椅子もそっくりそのまま、今の食堂を完コピしたものだ。
「邪魔して悪かった、こっちを使ってもらって続きを楽しんでくれ。」
俺がそう言って誘導しようとしても、冒険者は啞然とした表情のまま固まっている……これは
一応使っていいとは伝えたし、我に返れば使ってくれるだろう。
この時間メアリーは狩りに行ってるだろうし、俺はカールを迎えに行ってお世話の練習や指導を受けてくるか。
オムツは大分早く替えれるようになったが、ミルクの温度とかがまだ熱すぎたり冷たすぎたりなんだよな……そのあたりのコツがあれば教えてもらわなければ。
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