第305話 災厄の集塊を何とかするために村で緊急会議を開いた。

パーン族の村から帰って、魔力を持った村の住民の長全員と緊急会議。


ひとまずパーン族の里とエルケに関しては心配無いはずだ、任せれることは任せたし。


災厄の集塊もエルケだけで封印を維持出来ていたのを数人で対応すれば格段に楽になるはず、そのまま消滅してくれたらいいがそんな都合のいい話は無いだろうな。


そのためにこの緊急会議をしている、コロポックル族が居た島の調査を一時中断してまで集まってくれた。


ミハエルを連れていってくれて感謝するよ、おかげですぐに連絡を付けることが出来たから。


シモーネから話を聞いたオスカーは、シモーネが見せた怖い笑顔より更に怖い笑顔を浮かべている……焚きつけたのは俺だけどあそこ一帯が吹っ飛んだりしないよな?


ちょっと不安。


「さて、集まってもらった理由は大体伝わってるだろう。

 パーン族の里の地下にある災厄の集塊をどうにかしなければ、良くないことが起こるのは間違いない。

 ラウラに索敵魔術に反応があったからな、しかも今まで見てきた反応で一番敵意が強いそうだ。

 そしてそれはオスカーとシモーネの全力でも消し去れない存在らしい、これはドリアードがそう言ってた――だが、それ以上の力なら可能ではないかと俺は考える。

 その考えについて意見を聞きたく集まってもらった、それとアラクネ族の装飾品以外に自身の力を向上させる案があればどんどん出してほしい。」


いつになく長い台詞を喋り終えて、ふぅとひと息。


皆は俺の言葉を聞いて周りと相談してくれている、俺自身の考えだけじゃたかが知れてるのは経験済みなのでこの会議は大事。


話し合いじゃなく会議、割と世界の危機だと感じてるからな。


「マーメイド族が持っていた要石、あれは内部から外部への衝撃も吸収してくれるのですか?」


「外部からの衝撃と同程度吸収しますよ。」


アラクネ族がマーメイド族に要石について聞いている、地下と聞いて衝撃による落盤や崩落を心配してるんだろう。


そういった準備も大事だが……それなら俺の想像錬金術イマジンアルケミーで周りをくり抜いたほうが早い気もする。


地形破壊が物凄いことになるので出来ればしたくないが、世界の危機の阻止と地形破壊を天秤にかけると前者が圧倒的に重要だからな。


「そんな事に力を使うなら災厄の集塊とやらを消し飛ばすのに力を使ったほうがいいだろう。

 上から下への力ではなく、前方へ力を放つことに全力を注げば破壊も最小限に抑えられる。」


オスカーがちょっとしたドヤ顔で解決策を提示したように言ってるが……それ、前方の破壊がとんでもないことになりそうだけど大丈夫なのだろうか。


「ねえ拓志、想像錬金術イマジンアルケミー想像剣術イマジンソードプレイで災厄の集塊を消すことって出来ないの?」


「それはワシも思っておったぞ、わざわざ力技をしなくてもそれが一番平和だと思うが。」


流澪の質問を皮切りに、オスカーや他の人からも想像錬金術イマジンアルケミーで対応すればいいのではという意見がどんどん俺まで届く。


だが無理なんだ。


「俺も最初はそう思った、ドリアードを呼んだ時点でドリアードが必要とするエネルギーに変換して同位体の生成の手助けになるとさえ考えたよ。

 けどな、災厄の集塊を想像錬金術イマジンアルケミーでどうにかしようとすると俺の生命力と魔力が足りない――もし強行して想像錬金術イマジンアルケミーを使用すると俺が死ぬ。」


実はあの地下でドリアードを呼んだ時、想像錬金術イマジンアルケミーを使おうとしていたんだが――精霊樹を錬成しようとした時と同じポップアップが目の前に浮かんだ。


要するに想像錬金術イマジンアルケミーで対応が出来ない、装飾品をつけて魔力と生命力を増やしてもいいんだがどれくらい増やせばいいか分からない。


それならオスカーやシモーネといった村の主力に装飾品を投入して、力技で消し飛ばそうと思った次第だ。


俺の話を聞いた皆は「それはダメだ。」と納得してすぐさま元の相談に戻ってくれた。


「良く分かったわね、魔力が足りないって。」


「一応自分のキャパシティを超えるものには警告のポップアップが出るからな。

 流澪も注意しておけよ。」


「そこは親切なのね、注意しておくわ。」


流澪はポップアップが出ることを知らなかったんだろう、そんな大きな存在を切ることなんてなかったろうし仕方ないと言えば仕方ない。


しかし、2人で同時に災厄の集塊を神のスキルでどうにかしようとすると何とかなるかもしれないな……この会議が終われば災厄の集塊の所へは行くし試してみるか。


「魔族領や人間領に身体能力を向上させる技術が無いか聞きに行くのはどうかしら?」


「魔族領にはそういう魔術はありますが、使える人は限られてますし……その人の協力が得られるかどうか。

 ちなみに私は使えないですし、効果もアラクネ族の装飾品に比べれば微々たるものです。」


「それでもないよりはいいだろう。

 グレーテ殿、冒険者ギルドへ行き協力を仰いでくれ。」


「分かりました。」


オスカーからの指示で、グレーテがすごいスピードで魔族領へ続く魔法陣へ走っていった。


「それじゃ私はワルターと父上に何か無いか聞いてくるわ。

 私も民衆も知らない事を王族は知ってるかもしれないし。」


ミハエルもグレーテに続いて魔族領へ向かっていく、よろしく頼むぞ。


「人間領ではそういった話は聞いたことがない。

 魔術に関してはかなり遅れているから……力になれなくてすまない。」


「気にする事はない、リッカはやれることをやってくれているんだから。」


リッカがしょげているが、災厄の集塊に住民全員を投入することは出来ない――村の防衛が手薄になってしまうからな。


だからこそ物理攻撃に特化したウェアウルフ族やリッカには、気兼ねなくしてそういったことを任せることが出来る。


魔術を使える人にそういったことを頼むのは惜しい気がしてしまうからな。


「あの、少しいいですか?」


「どうしたんだ?」


アストリッドが恐る恐る手を挙げて意見を言おうとする、そんなオドオドしながらじゃなく堂々と意見を言えばいいのに。


「イザベルさんって服飾造形で村に住まれてますが、一般魔術と黒魔術に精通してますよね?

 何か力になっていただくことが出来るんじゃないかなー……って思いまして。」


その意見を聞いた全員がアストリッドを見る、全員に注目されて「ぴぇっ!?」と震え上がるアストリッド。


取って食べたりしないから安心してほしい。


「確かに黒魔術なら災厄の集塊自体を弱めることが出来るかもしれぬ。

 そこの者、至急イザベル殿とザビン殿を呼んでくるのだ。」


「はっ!」


オスカーがドラゴン族に指示を出してイザベルとザビンを呼びに行かせる。


ん?


「待て、ザビンを巻き込むのは可哀想じゃないか?」


「村長は知らぬのか。

 ザビン殿はイザベル殿に憧れるあまり黒魔術も多少嗜んでおるらしいぞ。」


黒魔術って魔族領じゃ禁忌なんだろ、そんな軽い感じでいいのだろうか。


だが今はそんなことより世界の危機を何とかしなければ……イザベルに期待するとしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る