第340話 会議室に向かおうとしたらトラブルが発生した。

俺は呼ばれたとおりアンドレアと話した会議室へ戻っている。


もう少しで着くと思った矢先に、タイガが何かに気付いたかのようにバッと何も無い方向に向き直る。


「どうしたんだ?」


「グォォッ!」


するとタイガは城の外へ向かい猛ダッシュで走り出す、なんだなんだどうしたんだ!?


俺はドリアードの力を使って必死に振り落とされないようにしがみつくので精一杯、一体何があったんだろう。


途中天使族にぶつかりそうになったが、タイガは物凄い反応速度で全て避けていく……すごい。


そしてあっという間に外へ到着すると、俺が最初ここに降り立った時と同じ警鐘がマルクス城に鳴り響いた。


『ワイバーンの群れがまもなく城に入ってきます!

 守護天使は第二種戦闘配置、その他の者は城内へ避難を!』


拡声器の声を聞いてタイガがどうしてここまで走ったか納得、そういう事か。


「タイガ、やれるのか?」


「グォォン!」


任せとけと言わんばかりの表情で返事をするタイガ、それじゃお願いするとするか。


俺はタイガと一緒に守護天使が飛んで行く先へ向かう。


天使族がどれくらい戦えるか分からないが、ここはタイガに任せるのが一番被害は少なくて済むだろう。




「ダメです、避難してください!

 何かあってからでは遅いです、それにデモンタイガーは飛べないではないですか!」


守護天使と合流してタイガに任せてくれと言うと、開口一番怒られて拒否された。


気持ちは分かるけど、タイガはドラゴン族に次いで強いから飛べないくらいじゃハンデにならないような気がする。


タイガは守護天使の言葉にムッとした表情を浮かべる、そして凄い勢いでジャンプした――と思ったら、空中を蹴って方向転換を何度も行いどんどん上へ上がっていく。


え、なにそれ。


タイガ、そんな事出来たのか?


「空気を……蹴ってる……?」


守護天使が驚きながらポツリと呟いてる、そんなバトル漫画みたいな台詞を聞くとは思わなかった。


そしてタイガはネコ科さながらの着地を見せてドヤ顔でこちらへ戻って来た、よくやったな、偉いぞ。


「恐らくこれでどうだ、心配無いだろうって言ってると思う。

 タイガの戦闘参加を認めてやってくれないか?」


「あのような芸当が出来るなら戦力どころではないでしょう。

 むしろ天使族がデモンタイガーの戦火に巻き込まれて被害が出そうです、珍しい物が見れるかもしれませんし私達は城の警備に専念しますので、ワイバーンの群れはお任せしますね。」


「グォッ!」


タイガは天使族に返事をしてワイバーンの群れが来るであろう方角へ向き直った。


俺もどうなるのか少しワクワクしながら待っていると、疑問が一つ浮かぶ。


「ワイバーンって生の理とやらからは外れてないだろう?

 どうやってマルクス城を見つけたんだ?」


「見つけてませんよ、ワイバーンが飛んでいる方向にたまたまマルクス城があるんです。

 マルクス城はそんなすぐに軌道修正出来ませんし、ワイバーンも動きを見る限り真っ直ぐに来るでしょう。

 マルクス城の結界は侵入を防ぐのではなく認知を妨げるものですからね、こういった事が時々起こるんです。」


なるほど、そういう仕組みだったんだな。


ワイバーンからしたら事故以外の何物でもないのはちょっと気の毒だが、驚いた魔物は興奮していて危険だからこっちも対処せざるを得ないし。


運が悪かったということで、しかし久々ワイバーン肉を食べれるな。


『あの……神様?

 今どちらでしょうか、お待ちしているのですが……。』


拡声器からちょっと半ベソになったアンドレアの声が響いてくる。


忘れてたわけじゃないんだけどな。


「なぁ、アンドレアと連絡を取るにはどうすればいい?」


とりあえず守護天使に何か方法が無いか聞いてみる。


「アンドレア様ったら……。

 守護天使がアンドレア様に伝えてきます、有事の際の決定権はアンドレア様より守護天使の方が強いので怒られることはないと思いますよ。」


「それならよかった、頼むよ。」


「承知しました。」


俺は守護天使に伝言を頼んでここでタイガに何かあった際、すぐに対応するために待機させてもらうことに。


タイガの本気を見たいっていうのもあるけど――ワイバーンくらいじゃ本気になれないかもしれないけどな。


ワイバーンは村では既に食糧として認識されているし、過去にダンジョンで生成されるようにすればと言ってみたが不慮の事故があっては駄目なのでお流れになったけど。


でもそれくらい危険な魔物ではあるんだよな、守護天使も戦線を敷きながらも表情に緊張が隠せてないし。


「来ました、ワイバーンの群れです!」


守護天使が叫ぶ、俺はタイガを見ると既に上空へ駆けあがっていた。


恐らく守護天使が叫ぶ前に動いていたように思う……タイガってもしかして索敵魔術のようなものが使えたりするのか?


マルクス城を見つけた時といいレオとトラを見つけた時といい、遠方の何かを感知する能力がずば抜けている気がするな。


今度ラウラと一緒にそのあたり聞いてみるとするか。


とにかく今はワイバーンの群れに突っ込むタイガを心配しよう――ケガとかしないでくれよ。

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