第339話 異世界を訪問しているらしいので、詳しい話を聞かせてもらった。

案内をしてくれた天使族に連れられて食堂へ到着。


タイガをずっと怖がってたが俺が必死に説明して、タイガもお腹を見せてゴロゴロしてたら大丈夫だと認識してくれたらしい。


俺としては嬉しいが、タイガはそれでいいのか。


デモンタイガーの尊厳とかプライドとか威厳とか、そういったものに傷が付きそうだけど。


タイガがいいならいいか、満足そうだし。


「オススメは何だ?」


「基本何でも美味しいですが最近はコロッケが人気ですね。

 異世界訪問班が持ち帰った技術がやっと物になったんで、かなり目新しいメニューなんですよ。」


「異世界訪問班だって!?

 天使族は異世界に赴いて技術を持ち帰ってるのか!?」


「そうですよ、地上の技術は大分持ち帰ったので次は異世界だという話が出まして。

 結構仲良くやれてるみたいです、中にはそのまま夫婦の契りを交わして異世界に留まる人も居るくらいで。」


どこか抜けてる種族かと思ったら相当アグレッシブな事をしていて驚いてしまった。


そんな事をしているとは……話を詳しく聞いてどんな世界か聞かないと。


もしかしたら前の世界の調味料があるかもしれないし、コロッケがあるなら充分その可能性はある。


「あ、とりあえずコロッケとご飯を。

 タイガには生肉と内臓を与えてやってくれ。」


「はーい、注文しておきますね。」


考えてて何を食べるか決めないとダメなのを思い出して天使族にお願いした。


コロッケは村でも作ってないからな、久々に食べるから嬉しいぞ。


今度想像錬金術イマジンアルケミーで試作した後ドワーフ族に作って……いや、天使族と交流をしてドワーフ族とレシピ交換してもらうのが一番だな。


天使族の調理係は俺より料理のレパートリーが多いだろうからな。


当然と言えば当然なんだけど。


しばらくするとコロッケ定食が運ばれてきたのでいただくことに、タイガには牛一頭分の肉と内臓。


では、いただきます。


うーん、コロッケはホクホクで美味しい。


このソースも懐かしいな……ウスターソースか。


……ウスターソース!?


いくらなんでもこんな俺の知識に偏った食が立て続けに出てくるだろうか、いくらなんでも出来すぎだと思う。


「ものすごい驚いてますが、どうしました?」


「いや、ちょっとな。

 君はこの料理の技術を手に入れた異世界に行ったことはあるのか?」


「私は無いですが異世界訪問班にツテはありますよ。

 よろしければ紹介しましょうか?」


「頼む、ちょっと気になることがあってな。」


「分かりました、では神様の食事が終わればご案内しますね。」


もっと裏方仕事を回ろうと思っていたが事情が変わった、少しでも話をしたいし急いで食べさせてもらおう。


タイガは……牛一頭分の肉と内臓をもらってたのにすぐだったみたいだ。


よっぽどお腹が空いてたんだな。




「ご馳走様。

 それじゃ案内してもらおうか。」


「神様もそのように食事の前後で挨拶をされるんですね。

 何となく神様が異世界にこだわる理由が分かった気がします。」


……ほぼ間違いないな。


いただきます、ご馳走様の挨拶をするのなんて古今東西探しても俺が前に住んでいた世界の俺の国くらいだろう。


そのくらい食への感謝はすごかった、同時に執念もだけど。


他の国に驚かれるくらい食に貪欲だったからな、魚を見て美味しそうとか食べれるかなって思うのは俺が住んでいた国くらいらしいし。


「着きましたよ。」


「おっと、ここか。」


考え事をしていると異世界訪問班の詰め所に到着したらしい。


アンドレアとの話が再開する前に少しでも多く話を聞いておかないとな、天使族との交流に向けて物凄い大事なことだし。


「神様、このような狭苦しい所へ御用とは一体何でしょう?」


「広い狭いなんて気にしないぞ。

 俺は天使族が訪問している異世界が気になってるんだ、詳しい話を聞かせてほしい。」


「分かりました、答えれることは全て答えさせていただきます。」


「ありがたい、それじゃ早速質問なんだが――」




十数個の質問をしただろうか、異世界訪問班はそれに全て答えてくれた。


「神様、最後の数問は最早あの異世界を見てないと知らない事だったのでは……。」


「そうだよ、ほぼ確信を得ていたがこれで絶対だと分かった。

 天使族が訪問している異世界は、元々俺が生まれ育った世界だ。」


「えぇぇぇぇっ!?」


俺の質問に答えてくれていた天使族が驚く、そりゃそうだよな。


異世界なんて何千何万とありそうなものなのに、その中から俺が住んでた世界を引き当ててるなんて思いもしないだろう。


もちろん俺も思わなかった、だがこれは物凄い嬉しい事でもある。


何しろ向こうに縁がない人がほぼ自由に異世界を訪問出来て、しかも向こうの知識がある程度ある。


……調味料と技術を可能な範囲で持ち帰ってもらおう。


だがそのあたりは流澪と相談だな、俺だけの判断より間違いなく適切な答えが返ってくるだろうし。


「見た所休みだったんだろう、わざわざ質問に答えてくれてありがとう。」


「いえいえとんでもございません。

 お役に立てて何よりです、今まで崇めていた神様のお役に立てるなんて恐悦至極ですよ。」


そう言われるとむずがゆくなる、信仰されるのって小っ恥ずかしいな。


『神様、派遣する者の選定が終わりました。

 先ほどの会議室へお戻りください。』


「アンドレア様がお呼びですね、お茶も出さず申し訳ございませんでした。」


「構わないよ、非常に有益だったから。」


俺は異世界訪問班と別れて会議室へ向かう――絶対に交流をするようアンドレアと話を付けないとな。

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