第285話 怖いもの見たさ

 サラから魔境の森の範囲を調べたらとは言われたけど、大きさは分かっているからそれ程魅力を感じない。


 ん~~~、!! そうだ! これならどうだろう?


「折角魔力濃度計を作ったんだから、もう国がない部分だし、これからは魔境の上空を飛びながら時々高度を下げて濃度を測定しながら範囲を実際見てみるのは」


「それいいですね。魔境の森の魔力濃度も調べられますしね」


 サラは気安く言っているが、俺の本当の目的はこの濃度が分かることでドラゴンの生息地を探そうとしてるのです。まぁこれで分かる保証はないんですけどね。恐らく魔力スポットの付近にあるとは思うけど、それが海岸沿いにあるとは限りませんから絶対見つかるとは言い切れません。


 ただ魔力濃度が他の場所より濃い場所があればそこから近い可能性はあるから見つけられるかもしれない。それに見つけたとしても到底俺がドラゴンに勝てるとは思わないので、遠くからでも見れたらいいなと言う感じですけどね。


「そのついでに二人のレベルも上げられたら良いかなと思います」


「それも良いですね。最近レベルも上がっていませんから」


 それは俺が言いたいセリフだよ。俺のレベルが高いから、もうサラ達と同じ魔物を倒してもピクリともレベルが動かない。経験値100倍をもってしてもね。レベル100なんて当分先の話なんだよ、今の状況では……。


 せめてレベル15のクロコダイラスやレベル25のワイバーン位の魔物をそれなりの数倒さないとレベルは上がらない。特にレベル5の壁と言うのは俺のようにレベルが高い程強烈な壁になる。


 ドラゴンでも倒せば違うんだろうが、そんなの無茶、死にに行くようなものだからね。でも見たいという気持ちもあるからどうしようもない。怖いもの見たさと言うのは誰にでもあるでしょ。それがあるからの魔力濃度測定でもある。


 ただね、俺のこの世界での目標はあくまで文明の進歩であって、俺最強が目標じゃない。


 そう言えばワイバーンの記録はあったけど、ドラゴンの記録はなかったよね。そうするともし今回俺達が見るだけでも、記録的事なんだよね? でもそれ発表は出来ないよな……。


 サラが見たらなんていうだろう? ワイバーンの大きい奴? まさかそんな頓珍漢なことは言わないよな。俺も見たことはないから何とも言えないけど、ワイバーンは前世の記憶に似ていたから、ドラゴンも似たような物だろうと思っている。


 これが日本や中華圏の龍のような魔物だったらちょっと幻滅するな。別にその龍が悪い訳ではなく、この世界観に合っていないだけなんだけどね。世界観て小説じゃないんだから、気にする方がおかしいんだけど、それでもね~~~。


 これフラグ? 嫌々こんなフラグは立つ前にへし折りたいよ。立たないでくれよ……。


 それから数日、魔力濃度を計測しながら、そこに現れた魔物を討伐回収しながら順調にサラはレベルを上げて行った。


「あれ? ここの濃度は異常に高いね」


 次の場所に行っても、


「あれ、此処もだ」


「近くに魔力スポットがあるんですかね?」


 近くに魔力スポットがあるのは確かだけど、これはちょっと高すぎるんだよ。今いる場所は海岸から少し入った場所だけど、それでも異常に高い。


「この場所は高すぎます。警戒してください! 今までの魔物とはレベルの違う魔物が出る可能性がありますから」


「はい!」


 その瞬間! 周りの特別丈夫な魔境の森の木がバキバキと折れる音がした。


「な! なんだあの魔物は! 片方はヘビの魔物と分るけど、もう一方はなんだ?」


 そうそこに現れた魔物は二種類いたのです。一匹は巨大なヘビの魔物、でももう片方が分からない。俺の前世の記憶にも登場したことがない魔物だった。


「ユウマさんヘビの方は私が引き付けておきます。もう一匹の魔物を鑑定して下さい」


「分かった! 急いでやるから無理はしないでね」


 鑑定結果


 キマイラ? レベル27 


 熊の魔物がヘビの卵を食べたことで生まれた突然変異種、新種と言っても良い。


 そりゃそうだ熊の面影さえないし、ヘビの名残も殆どない。体毛が無い所にウロコのような物は見えるけどそれだけだし、その体毛が熊の面影と言われればそうだが、体毛のある魔物なんていくらでもいる。顔なんて熊でもヘビでもない。


 鑑定結果はキマイラ? となっているけど、俺の考えではこれはミュータントと言った方が良いような感じだ。


 しかしこれをサラにどう伝えよう? 新種ですとしか伝えようがないな……。


 取りあえず先ずはヘビの方だ。ヘビは鑑定したらブラックバイパー、レベル20と出た。こいつなら一撃で倒せるからこいつから初めに倒してサラと合流しよう。


「サラ! 先ずはヘビの方をやるからそしたらこっちと合流して!」


「はい!」


 そうは言っても俺も新種の相手をしながら、サラの様子も見ているからレーザー系の魔法も中々撃てない。何故か二匹とも魔力感知に反応がなく突然現れたから、距離が取れていないのもある。


 幾ら魔法に慣れていると言っても撃つ前にイメージはする必要があるから、何秒間かは必要なのです。え~~い、こうなったら賭けだ。サラの方に逃げながらブラックバイパーにレーザーを撃ち込んでこちらからサラと合流しよう。


 サラに向かって走りながら、バイパーに狙いを付けてヘッドショットで一撃で沈める。だがそれも良くはなかった。ヘビというのは完全に頭を潰さないと、脳に一発撃ち込んだ程度では神経は生きているので胴体の動きは止まらない。


「サラ摑まって!」


「はい!」


 サラを掴まえて直ぐに空中歩行をして上空に上がり魔物達との距離をとった。するとバイパーが暴れまくっているところにちょうど俺を追いかけていた新種の魔物がぶち当たり、跳ね飛ばされた。


「よし! 今がチャンスだ!」


 新種の魔物が跳ね飛ばされて横ばいに成り、起き上がろうとした瞬間にレーザーをヘッドショットして討伐した。新種の方はヘッドショットで沈黙させられたので、後はバイパーの動きが止まるまで待つだけだった。


「ふ~~、流石に今回は焦りました。こんな所であのレベルの魔物が出るとは思わなかったし、まさか新種まで出るとは……」


「本当にびっくりしましたね。それにしても魔力感知に掛からなかったのは何故でしょう? 私はユウマさんに警戒しろと言われる前から魔力感知を使っていましたよ」


 そうなんだ。俺の方が無警戒だったわけね。これは俺のおごりだね。それにしても魔力感知に掛からないってどういう事なんだろう? まさか魔力を抑えて掛からないように出来るってことかな?


 さっきは戦闘中だったから、詳しく魔物の鑑定も出来なかったからもう一度やってみるか、集中すれば詳しく見れるだろう。


 ん? 何だこの魔力隠蔽ってスキルか? 魔物もスキルを持っているものもいるけど、これは初めて見るスキルだな。ラノベとかだと見た記憶はあるけど、この世界では見たことも聞いたこともないな。


 そもそも魔力を抑えていると弱い魔物が寄ってくるから鬱陶しい筈。知能の低い魔物は別にしてそれなりに知能があると魔力に反応して逃げる事の方が多いからな。それなら何故この魔物達は隠蔽などしているんだ?


 考えられるのは弱い魔物を逃がさない為か逆に強い魔物から身を隠す為かのどちらか、いや違うな、両方の方が合っているように思う。こいつらより強い魔物がいればそれから見つからないように餌をとるにはこの方法が一番いい。


 そうするとこの近くにこいつらより圧倒的に強い魔物がいるという事だ。これは拙いな、直ぐに此処を離れた方が良い。


「サラ、直ぐに此処を離れますよ」


「どうしたんです急に」


「訳は後で話します。兎に角魔物を回収したらすぐに離れます。その間警戒はずっとしていてください」


 その後は何とか他の魔物に襲われることもなく、無事飛行船に戻ることが出来た。


「サラ、此処は拙いです。恐らくあの魔物達より圧倒的に強い魔物がいます。それもかなり近い所に」


「あの魔物より圧倒的に強い? それはどんな魔物でしょう?」


 俺は何となく分かっているがそれはサラには言わなかった。確実ではないけどドラゴンに匹敵する魔物であることだけは間違いないと思っている。多分あの魔力隠蔽は本能的に修得した物なのではないかと思う。そうしないと生きていけない場所だという事だ。


「それは分かりませんが、それを知る為には最低あの魔物達が持っていた魔力隠蔽が出来るように成らないと無理ですね。それよりこの場所は危険ですから目印を何処かに残しておきましょう」


「それは良いのですが、あの見たこともない魔物は何だったんですか?」


「あれは突然変異した新種の魔物です。ですから名前はありません」


 今ここで、サラにキマイラとかミュータントと言っても分からんだろうしな……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る