第95話 どうなることやら

 この三週間は正に社畜に戻っていた。普通科のカリキュラムが出来たらそれに沿って教科書を作り、貴族が入学するから学校の方針を決めなければいけなかった。


 この方針というのはラノベの学園物で学校内では貴族も平民も同等なんて言うのがあるけど、現実の王制の国でそんな事出来ないから、ちゃんとルールを作りそれを学校の方針とする事にした。


 ラノベで平民がいるから貴族が存在する。だから学校では平等なんて言ってるけど、存在意義と平等は別だから、存在意義は確かだよ平民がいるから貴族がいるというのは、それが王制だからね。


 俺からしたらそれが学校内平等とどう関係してるの? って思う訳よ。


 だからこの学校では、校内での身分を笠に着た行動は禁止する。これだけ。


 身分の差は認めるけど、権利は認めないと言う事です。


 この学校は国立だからね、教師は言ってみれば王の配下だから貴族と立場的には同じなのよ。


 校内だけでも平等何ていうのは王制の否定だし、王制の崩壊に繋がりかねない。現実ではありえないと言う事です。


 そうそう、ニックも戻って来ましたよ。弟子を5人連れて、良かった間に合って。


 けっこうハードだったみたいです。そうだよね王都に戻って事情を説明して引き継ぎ、準備をしてとんぼ返りだもんね。

 次期薬師科教師に成って貰わないといけないから、俺はこれからが大変。


 入学式の1週間前ぐらいから生徒が集まり始め、次々と入寮してきました。


 寮も教室も貴族と平民は分けていますから、そう問題は起きないでしょう。


 可能性があるのが食堂ぐらいでしょうね。でもこの学校の食堂の料理は貴族でもそう食べた事が無い物が多いからそれ程心配はしていません。


 貴族の100人は殆どの人が若いですね、貴族の学校を卒業したてかそれに近い人達でしょう。男女半々ぐらいです。


 下級官僚は20代~30代、こちらは貴族と平民がいますが同じ官僚ですから分けませんでした。男女は男45人、女5人、男性社会ですね。


 商人は大きな商会の跡継ぎと関連商会の跡継ぎが多く、男女は男35人、女15人です。


 結局、三期生は全部で912人。一期生の1000人と殆ど変わりません。げせぬ……


 入学式も無事に終わり、授業が始まりました。


 普通科の魔法の授業は二つの教室をぶち抜いた広い教室で100人一度に行います。

 算数はグラン商会の計算のスキル持ちが教師をやってくれているので、50人づつです。

 計算スキル持ちに九九や筆算を教えると、物凄い勢いで習得しましたよ。

 方程式何て教えたらどうなるんだろう?


「聞いているとは思いますが普通科の午後の授業は魔法についてです。ただ魔法についてだけでは解り難いとは思います。強いて言えば魔法の可能性ですね」


 生徒は何だそれ? って顔をしています。この世界の魔法は確立されていて進化がない、ましてそれが当たり前だと思っている。


「魔法の可能性とは何でしょう?」


 一人の生徒が、そんなものあるのか? ある訳ないだろうという顔で質問してきました。ま、馬鹿にしてるんですけど……


「そうですね、口で言っても信じられませんよね」


 信じられないなら信じさせようと言う事で、実演することにしました。


「今から、この木を水魔法で切断します」


 俺のオリジナル、超高水圧のウォータージェットの水魔法で木を切断しました。


 生徒は口を開けたまま呆然としています。この世界にこの魔法は存在しません。存在しない魔法もそうですが、水で木が切れる事が理解できないのです。


「どうです、これが魔法の可能性です」


「属性魔法の使えない人には関係無いと思っていませんか?」


「では、次はこれなんてどうでしょうか」


 小さな石をみんなに見せ、確認させた後、手で握りつぶしました。


 そして、今日は特別にローズに助手に来てもらってるので、彼女にも同じことをして貰いました。


「解りましたか? 彼女は属性魔法は持っていませんよ」


 正確には無も属性魔法なんだが、それを今言っても理解できないだろう。


「今のを私は強化魔法と呼んでいます。確かにこの魔法も全員が出来るとはいいませんが、可能性はあるとは言えます」


 生徒は静まり返って、はじめと違って皆目が真剣です。


「私が貴方達に知って欲しいのは魔法はイメージだと言う事です。魔法はイメージで作れると言う事です」


 此処まで言うと全員の目が輝いている。自分にも出来るかもという希望が見えているから。


「魔法は可能性というのはまだ解っていない事が多くあると言う事で、私もまだ研究中であると言う事です。一緒に研究しませんか?」


 その瞬間「わー」「うぉー」とか言葉に成らない歓声が起き、拍手が鳴り響きました。


 掴みはOKかな?


 正直、貴族と会ったことが無いから、どう接したら良いか解らなかったが、何とかなりそうで良かった。


 ラノベみたいに生意気な生徒が居たらどうしようと思ってたけど、居なくて良かった。


 下級官僚と商人に魔法は必要ないのではと思ったが、可能性を体験することで変わる事もあるだろうから、魔法の授業はする事にした。


 魔法の授業は座学と実技を交互にやって、実技は別の人に監督を頼んで俺は座学だけにする。


 普通科は200人いるから100人づつの交代制にしなと教師が俺一人しかいないからね。


 あれ? これってもしかしたら、普通科がなくならないと薬師の教師から外れる意味がない?


 下級官僚と商人は初日の今日は授業が組めないので特別に拠点の見学に行ってもらっている。


 研究施設でもあるけど、今日は生産だけにして貰っている。一応商人もいるからね。


 特許登録済みな物はいくら見られても問題ないから。



 拠点と言えばもう直ぐ魔石魔道具の販売をする予定なんですが、価格設定がまだ決まっていない。


 生活魔法があるから、高すぎても売れないけど、安すぎてもいけない。


 学校での付与術は来期からを考えてるから、付与術を広める為にもある程度の収入が確保できる価格にしないと錬金術師が作らないだろう。

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