第96話 魔道具販売

 魔石魔道具の販売が始まる。拠点の錬金術師達は全員が付与術スキルを発現させました。

 ミランダ達が発現させた条件であろう、一定の魔力量をクリアする為に魔力量を増やす、いつものプチパワーレベリングもやりました。

 拠点の錬金術師は兎に角習熟度が高い、作っている物が多岐に亘るからだ。同じ物を作っても習熟度は上がるが、当然色々作った方が上がり方が早い。


 魔力量、習熟度をクリアすれば、イメージの補完をしながら付与の練習あるのみ、スキル発現の条件らしきものが解っているんだから発現が早い。


 魔道具の販売を決めてから、付与術師を増やさないといけなくなったが、都合が良い事に化粧品が作れる錬金術師が、学校のおかげで増えた事で拠点の錬金術師達に時間が出来た。その結果がこれ。


 付与術は発現したけど、魔道具科(付与魔法科)の設立の為の錬金術師が1年で付与術を発現出来るかの検証には成らなかった。


 なぜなら、拠点の錬金術師の習熟度が高過ぎました。恐らくポーションだけを作ってるような一般の錬金術師の10年分ぐらいの習熟度はありますから、未経験から1年で錬金術スキル発現をした学生が次の1年で付与術を発現出来るか分からない。


 勿論、1年制のスキル持ちの付与術科も現状可能か分からない。もし科を作るなら習熟度を見る為の試験がいるだろうな。


 そんな事もありつつ、魔石魔道具の量産が可能に成ったので、いよいよ販売に踏み切ることにしました。

 始めは貴族のみの販売、次に富裕層、それが落ち着いたら庶民に広げて行く予定です。


 価格は悩みに悩んで庶民が頑張ったら買えるぐらいにしました。頑張ったらというのは庶民の1月分の収入ぐらい。所謂貯蓄すれば買えるという値段。

 前世でいう昭和の時代の家電が売り出された時と同じような感じです。


 逆に貴族や富裕層の商品は装飾などをして高額にしました。


 魔石魔道具ですが魔道具である以上魔石だけで販売することは出来ませんので、用途に適した金属を使って外側も作りました。水の魔道具なら蛇口のような物ですね。


 この金属も合金です。水に触れるものですから、錆びにくい合金です。

 合金も色々作ったので、勿論、特許登録しましたよ。これで鍛冶の分野も進歩するでしょうね。


 そうそう王様が帰ってから、速攻で宰相のカルロスから嫌味たらたらの手紙が届きましたが、当然適当に理由を付けて無理やり納得させました。


 販売は貴族と関係が深い王都の大商会を数店代理店として販売します。グラン商会は直営店のみの販売で、後は代理店に任せます。

 グラン商会はメーカーの立ち位置ですね。これも大商会から恨みを買わないためです。一人勝ちというのは良くありませんから。


 魔道具販売が始まると、問題が起きそうなんですよね。

 既存の錬金術師達から今度は何かしらの反応がありそうなんです。化粧品は基本既存の錬金術で作れますから、作るかどうかは錬金術師任せですが、今度は全く新しい技術です。


 ただ錬金術師に適性が高いスキルですから、作りたいと思えば学んでスキルを習得すればいいのですがどうするでしょう?


 でも多分そうはしないと思うんですよ。ではどうするか? 引き抜きだと思うんです。

 ですが現状付与が出来るのは拠点の錬金術師だけです。当然引き抜きなんて出来ませんから、取れる行動は以前の薬師スベンのような強硬手段が予想されるわけです。

 それが個人なのか、学校や化粧品関係でも沈黙していた錬金術ギルドなのか分からない。


 学校の卒業生や拠点の錬金術師はギルドに入っていません、というか入れません。

 沈黙はしてるが何もしていないと言う訳ではないのです。ミランダ達は入会済みだったので退会はさせられないのでそのままですが、それ以外は弟子制度から外れた錬金術師ですから、ギルドは認めていないので入会が出来ないのです。


 しかし後数年もすれば、弟子制度から外れた錬金術師の方が多くなるはずですから、そうなるとギルドの存在意義が無くなると思うんですがね、何故それが分からないのでしょうか?


 実際ここ最近は弟子に入る人は殆どいないと聞いています。弟子に入るぐらいなら3年ぐらい別の仕事をして、学費を貯めて学校に入った方が確実にスキルが発現出来て、作れる物も多いですからね。


 今は学校に魔道具科がありませんから良いですが、もし出来たらギルドの衰退が早まります。


 そんな訳で、また警戒が必要になりました。


 拠点の従業員は時間を見てプチパワーレベルングはしてるので、それなりにステータスは高いから、戦うことは出来なくても、ちょっとした抵抗と逃げる事は出来ると思うのでそこまで心配はしていませんが、それでも万が一はありますからね。


 対抗策としてクロスボウも検討しましたが、これはやはり拙いと思い止めました。

 弓より便利な秘匿武器ですから拠点を襲撃されたのならまだ使えますが、温泉やラロックに出かけている時では使えません。


 そこで考案したのが防犯の魔道具です。魔石に一瞬強力な光を発生させる魔法を付与した物と、無魔法の大きな音が出る魔法を付与した物です。

 無魔法は問題ありませんが、俺の属性がばれる、光魔法は躊躇しましたが従業員の安全には変えられないので作りました。


 目立たないのが大前提でも人の命には代えられませんから、いざとなったら魔境に逃げ込めばそう見つかりませんからね。


 この魔道具を両手に持って同時に魔力を通せば、一種の閃光弾の様になります。

 この世界にこのような物は存在しないので、これだけでもかなり有効だと思います。

 怯ませてる間に逃げられますし、大きな音で助けを求められますから、防犯の魔道具として最適でしょう。これもばれたら売ってくれと言って来るんだろうな。


 特に王族や貴族……カルロスが筆頭かな?




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