第301話 回収
サラにはくれぐれも言っておいたが、どうも俺にはフラグが立ったようにしか思えない。これはおびき寄せはしない方が良いかな? 乱戦に成りそうだから、此処は移動しながら魔物を探して討伐させた方が安全かもしれない。
しかしな~~、それであの人たちが満足するか? しないよね。戦闘狂が殆どだよ無理に決まっている……。
成るように成るだけだな……、気にしてもしょうがない。フラグ回収は覚悟しよう!そうは思うがやはり魔法武器でも多分大騒ぎ成りそうなのに、その上魔銃何てバレたら俺はいったいどうなるのか?
魔法武器の切れ味をまだ味わっていないから、あの程度の反応だけどあれは本当に凄いからね。付与なしの魔刀でさえフランクがオークやオーガを一太刀で首を刎ねられるから、あれを味わったら、多分パニックになるんじゃないだろうか?
さっきから、? ばかりだけど、こればっかりはやってみないと分からないと言うやつだ。
「皆さ~~ん、もう降りて来て大丈夫ですよ。ボチボチ魔物も集まってくるでしょうから、各自好きなように討伐してください。恐らく此処に出る魔物はレベル5~10ぐらいまでだと思います」
これは前回サラと此処で魔銃の試射をした時に出てきた魔物のレベルを言っただけだが、まぁ大きな違いはないだろう。それにレベル10の魔物が同時に複数出てこない限り、今の皆のレベルであの武器なら問題ない筈。
「ユウマ君、わしは久々にワクワクしてるよ。本当にこんな気持ちに成ったのは何時ぶりだろうか? 何だか若返ったようだよ」
嫌々お義父さん、若返ったようだじゃなく多分肉体的には今のレベルでも相当若返ってますよ。寿命という意味ではまだまだそんなに影響があるレベルじゃないですが、ステータスが上がるという事は肉体の強度なんかが上がるんですから、俗にいう肉体年齢は相当に若返っています。
「くれぐれもその魔法武器の取り扱いには注意してくださいね。予想してる以上に切れると必ず思って行動してください」
「そう言われると益々楽しみだな。俺達の持っている魔刀でも相当切れるからな」
「フランクさん楽しむのは良いですが、あなたはレベルが高いんですから、女性陣の援護も忘れないようにしてください」
「あぁ勿論分かっているさ。でもスーザンだけはロイスにやらせるぞ、本人にもちゃんと言ってあるしな」
此処で二人を接近させるのかよ! つり橋効果でも狙ってるのか? まぁそういう事でもないとあの二人が一歩踏み出すのは無理かもしれないけど、やり方がちょっと過激だよ。サラとフランクで考えたんだろうが、流石戦闘狂らしい発想だ……。
こりゃ、俺は色んな意味で戦闘には加わらない方が良さそうだ。これだけそれぞれの思惑が違うと何が起きるか分からんからな。
「母上きましたよ!」
サラのこの一声から、魔物がぞろぞろと現れ、一斉にそれぞれの場所で戦闘が始まった。
ん? ちょっといきなり多くないか? 初戦にしては前回より明らかに魔物の数が多い。前回は二人でも余裕で試射を兼ねた討伐ができる量だったが、あの時今の量だったら余裕は無かったな。
なんだなんだ、今回もあの時ようなイレギュラーが起きるのか? そんな都合が良いとは言えない事が何度も起きるのかよ! 俺ってそんな運の持ち主だったっけ、違うよなきっと誰かの運だ! そうなると答えはサラという事になるけど、それだけじゃないような……。
「お~~これは我妻イザベラの何時もの恩恵じゃな。楽しいぞ! ワハハ!」
ちょっと待て今お義父さんは何と言った? お義母さんの恩恵? それってもしかしてさっきのサラの運というのも遺伝でなの? 運の遺伝なんていう話、聞いたことも無いけど、お義父さんが恩恵なんて言うんだから何度も経験しているんだろう。
それが恩恵と思えるのは、脳筋の戦闘狂位だろうが、実際に俺もこれで二度目の経験だから、恩恵だとは思わないが、そういう運があることは認めざるを得ない。
そんなこと思う程気が動転していたが、冷静になって周りをよく見たら状況的にはまだ大丈夫だが、これ以上増えたら本当に拙いことに成りそうなので、
「皆さんちょっと魔物の量が想定より多過ぎます。一度飛行船に戻って休憩と体制を整えましょう!」
と、皆に大声で言ったが、誰も聞いちゃ~いない。戦闘に夢中になり過ぎて何も聞こえていないようだ。聞こえない? これは拙い! あれ程お義母さんを見てろと言ったのに、サラも戦闘に集中し過ぎて聞こえていない。
そう思った瞬間、起きて欲しくはないことが起きた! お義母さんの後方からレベル7はありそうな、此処にはいない筈の飛行型の魔物アピス(蜂)が一度に5匹も現れた。
俺はそれを見た瞬間、お義母さんに一番近いアピスをレーザーで撃って討伐したが、5匹だと思っていたアピスはその後方からまだ複数接近していることに気が付いた。
流石に俺でも同時に10匹近いアピスに来られたら援護という意味での攻撃はやりずらい。俺が一人で対峙するならどうという事はないのです。こちらが動き回りながら攻撃すれば良いだけだから。しかし、援護だと連続して魔法を撃たないといけないし、アピスは針を飛ばしてくるので、それも防がなくてはいけない。
お義母さんもアピスに気が付いてはいるが、如何せんアピスは飛行型なので、青龍刀では向かってこない限り対処ができない。出来ても針をはらうぐらいだ。
俺がそれでも必死に援護を続けていた、その時です。全く別な方向からレーザーの魔法がアピス目掛けて飛んで来ました。そうサラが魔銃を使ったのです。それまで戦闘に夢中になっていたサラも俺のレーザーの魔法の光が目に入り、やっと母親の危機に気が付き、魔銃を撃ったのです。
「遅いよサラ! 魔銃の方が連続で撃てるからお願い!」
「ごめんなさい! 分かりました!」
威力のイメージが曖昧でも魔銃は魔法が発動するから連続で撃てる。こういう複数の敵を連続して攻撃するには向いている武器だ。
あ! 俺も魔銃持ってるじゃん……。何をしてるんだか? サラを注意しておきながら、俺の方こそ慌てすぎだ。実弾タイプの魔銃を持っている事すら忘れているなんて……。まぁ思い出したんだから使いましょう。連続で撃つ事に特に向いている魔銃なんですから。
「ユウマ、何だそれ!」
俺の実弾タイプの魔銃は発射音がするし、サラの魔銃はレーザーですから光りますから、それが連続すれば流石に気が付く人はいる。
「その話は後です! 今は一度引くことを考えてください」
俺のフランクに掛けた言葉がサラにも聞こえたのでしょう、そこからは俺とサラで魔銃を使いながら、他の人に気づかせながら声を掛けて、一度撤退するように促した。
「ふ~~、やっと一息つける」
何とか全員に声を掛け終わり、飛行船まだ戻って来たが、そこからがまた大変だった。予想はしてたけど、やはりめんどくさい。
「ユウマ、さあ聞かせて貰おうか」
「ユウマ君、サラの持っているあれは何かね?」
「「ユウマさん!!」」
「ちょ、ちょっと待ってください。皆さんの気持ちは分かりますが、兎に角一度落ちついて下さい。少し休憩をしてから説明しますから」
この人達は疲れるという事を知らんのか? 今までかなりの魔物と連続して戦っていたのに……。普通肉体的にも精神的にも疲れる筈だが、アドレナリンが出過ぎていて何も感じないのか? 俺はちょっと慌てまくっただけで疲れているんだが……。
「サラ、結局使うことに成りましたね」
「そうですね。それはしょうがないとして、ごめんなさい私が集中し過ぎたせいで……」
あれは集中とは言わないと思う。あれは興奮だと思うと言いたいが、ここでそれを言っても戦闘狂には意味がないので言わない。
「サラ、俺は折角討伐した魔物の素材がもったいないので、回収してきますから、皆さんが落ちつくまで一緒に居てください」
俺はそう言ってその場から実質的に逃げた。あのままあそこに居たら、そう時間が経たないうちにまた質問攻めにあっていただろうから、理由を付けてあの場を離れるしか思いつかなかった。多分サラがその犠牲に成るのが分かっていながら……。
結局フラグは回収することに成ったが、これもフラグを立てた張本人に責任をもって回収して貰う事に成りそうだ……。
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