第300話 俺のせいじゃない
「サラがそこまで言うなら、一応試作品を出してみますから、皆さんで好きな物を選んでください」
俺はインベントリに封印していたミスリルを使用した魔法武器を、一通り皆の前に並べてみた。これらを作った時の俺はどうせ公表出来ないんだからと思ってかなり遊び心をふんだんに入れて作ったから、武器の種類がこの世界にないものもある。
それだけならまだ良いが、防具も作っているから問題なんだ。正直これは本当に拙いのよ。前世でいうコスプレに成りそうな防具まであるから、俺の人格を疑われかねない。
黒騎士はその時作った物の中では、まだまともな方。黒騎士のフルプレイトアーマーの皮バージョンもあるんだ。 日朝の戦隊ものに出てくるコスチュームの皮バージョンと言えば分かるかな……。
防具の話はまだある。ドレスアーマ―なんていうは序の口、ビキニアーマーなんていいう物まであるから、絶対に出せない。今回は武器をと言われたから良いけど、これにもし防具もと言われたら、作っていないというしかない。近いうちにまともな防具も作って置こう。付与を施した防具なら良いだろう。クロコダイラスの皮なんて使ったらめちゃめちゃいい防具が出来そう……。
本命の武器は、レイピアに始まり、ハルバート、バトルアックス、短槍、長槍、薙刀、青龍刀、そして長さや太さの違う剣と刀、勿論全てに色んな付与がされている。
これは出さなかったけど、忍者の武器や道具、手裏剣、忍刀、くない、撒菱、手甲鉤、鎖鎌、吹き矢、目潰し、仕込み杖、角指、捕火方なども作っている。昔忍者物のドラマや映画に一時期ハマったことがあって、その時に色々調べたからこの手のものには詳しい。
「此処にあるものは全て魔法や効果が付与されています。ですから魔力を流せばその付与されている魔法や効果が発動します。ですが自分で作ったものなのにどれにどんな付与をしたのか覚えていないので、出来たらこれというのがありましたら、付与について聞いて下さい。鑑定して答えますので……」
「それなら俺も手伝ってやろう。鑑定が使えるからな」
フランクがやけに積極的なのは恐らく自分も何か良い物がないか探すためだな。あなたはミスリルの入った魔刀を持ってるでしょうがと言いたいが気持ちは分かるから言わない。今フランクとロイスが持っている魔刀には付与は付いていないからね。
クロコダイラスが相手だと、フランク達が今持っている魔刀では切れないことは無いけど苦戦はするだろうから、余計に文句は言いづらいし、命名までした魔刀だからね。そうは言っているが自分の魔刀には付与してるんだから勝手と言えば勝手なんだけど……。
「おい、ユウマこの斬鉄っていう付与はどういう意味だ? まさか鉄が切れるという事じゃないよな」
「はい、その通りですよ。ただその付与には条件が色々ありまして、ミスリルを混ぜていない武器には高魔力帯の魔石を合成しないと付与出来ません。それに付与できたとしても魔力を通さないと効果が表れません」
「それが本当ならミスリルの混ざっている物ならそんな魔石じゃなくても付与できるし、魔力を通さなくても効果は出るという事か?」
「良く分かりましたね。それだけミスリルは特別なんです。それにミスリルの混ざったものは付与がなくても魔力を通せばよく切れるでしょ。ですから付与されたミスリル剣は同じ斬鉄でも効果がもっと上です。分かりやすく言えば熱したナイフでバターを切るように切れます」
本当はもっと複雑なんだけど簡単に言えばこんな感じかな。以前この事についてはフランク達にも話しているが、付与や合成が絡むと錬金術が必要になるからまだそこまで研究が進んでいなかっただけだ。
まして斬鉄なんて言うイメージが付与出来るなんて思いもしないだろうからね……。
「ユウマ、軽く出してるけど此処にある武器は全てとんでもないものばかりだぞ。良かったのか?」
「良いも悪いも武器を出せと言われたから出しただけなんですが……」
俺は言えないけど、出せと言ったのはサラなんだから、それはサラに言って欲しい。
「もう大分前ですからフランクさん達は忘れているかもしれませんが、付与も魔法なんですからイメージなんですよ。ただ出来る、出来ないはあるし、出来ても素材や作り方に色々違いがあるという事です」
「まぁ俺も錬金術を発現して付与をやり始めたが、習熟度も足りないからこんな高度な付与はまだ出来ないな」
俺とフランクがそんな話をしている間に、皆はもう武器を決めて素振りをしている者までいた。が! それで良いのか? どう見てもその人に不釣り合いな物を選んでいる人がいる。
「お義母さん、本当にそれで良いんですか?」
「私はこれが気にいりました。ユウマ君に何か不都合でもあるんですか?」
不都合はないけど、不釣り合いはある。決して口には出せないが、いくら何でもそれはないでしょう。
お義母さんが選んだ武器はなんと青龍刀。それも薙刀に似ている長尺の物じゃなく、韓国ドラマに出てくる斬首に使われるタイプの青龍刀だから、素振りを見ていると正にあのシーンを思い出してしまう。
斬首の前に踊りながら青龍刀を振り回してるあのシーン。分かる人には分かると言ってもこの世界じゃ俺しか分からんが……。
他にももう一人、それは何故か武器は必要ないと思っていた、今回の魔法武器公開の張本人、サラ。
「サラさんや、あなたは武器は必要ないでしょ。魔法もあるし、あれもあるんですから」
「何を言ってるんです。あれを出さない為の武器でしょ」
それはそうだが、いくらそうだとしてもその武器は無いでしょ。親子揃ってどういう感性をしてるのかな?
サラの持っている武器はなんとハルバート……。確かに昔見たアニメや漫画で女性がバトルアックスを持っているなんて言う物もあったけど、それって大概持ち主がムキムキの女戦士とか女性のドワーフとかいう怪力の持ち主だったから違和感が無いけど、流石に力はあっても公爵令嬢が持つものじゃないでしょ。
まぁどうせ何を言っても武器は変えないだろうから諦めるけど、出来たらもっとスマートに魔刀とかにしてくれたら良かったな……。旦那としては物凄く複雑な気分。
それに引き換えスーザンは俺の希望通り、女性ならではの薙刀を選んでいたし、残る女性のエリーはこれまたごく普通に自分の体格に合わせた長剣を選んでいた。ここでエリーやスーザンがもし大剣なんて選んでいたら俺は此処にいる女性達を見る目が変わっていたかもしれない。
「ユウマ君、わしはこれを使わせてもらうよ。以前からフランク君が使っているのを見ていて、一度使ってみたいと思っていたんだ。これは魔刀というのだろ」
「はい、魔刀といいます。お義父さんもレベルが上がって魔力が増えていますが、それを使いこなすなら、切るタイミングで魔力を流す練習をした方が、長時間使えます」
「成る程、それは是非やってみなくてはな」
これが普通なんだよな。どうしてあの二人は……。俺のせいか? 遊び心満載で作ったのが悪いのか? サイラス達冒険者にも作ってるから普通に作ったが、女性が使う事は想定していなかった。
「ユウマ、悪いけど俺達も今回はこれとこれを使わせてくれ」
「別に良いですよ。フランクさんとロイスさんだけダメとは言いませんから」
まぁ魔刀を持っているフランク達だから遠慮していたんだろうが、鑑定でその付与を見たら使いたい気持ちは分かる。
「短時間ですが、このまま行くよりも良いので、切る瞬間に魔力を流す練習をしていてください。その間に飛行船を着陸させて魔物をおびき寄せておきますから」
皆にこう言った後、ちょいちょいとサラを手招きして、
「サラ、今回もお義母さんを頼みますよ。無茶はしないと思いますが、危険だと思ったら、迷わず魔銃を使って良いですから援護をしてください」
「分かりました。出来るだけ傍にいますから、魔銃を使うようなことは無いと思いますが、その時があれば遠慮なく」
ん~~、本当に大丈夫かな? サラもお義母さんも戦闘狂だという認識に成っている俺からすると、決して信用できる言葉じゃない。
サラはハルバートだから戦闘には距離をとらないと味方を危険にさらすし、お義母さんも青龍刀だからどちらかと言えば振り回しそうだから、傍にいると言ってもそれなりに距離はあく筈。
これは魔銃の公開もカウントダウンかな……?
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