第330話 憲法?

 この国は封建制なのだから、本来憲法という物は存在しないと言って良い。法の元と成る物が必要ないのだから。でも俺は憲法と言えるかどうか分からないが幾つかの法の元を作りたいと思う。


 1 権利

 2 義務

 3 平等


 この三つを基本に法律をつくりたい。勿論封建制なのだから、矛盾することもあるだろうが、他国の法律でこの三つに整合しないものは、少し作り替えれば何とかなると思う。王の権利は絶対だが、当然王にもその分義務が生じる。そして国民を平等に庇護しなくてはいけない。


 これが国民なら言論の自由の権利はあるが、その責任を取る義務もある。そして男女の区別なくそれらの権利や義務を負わなくてはいけない。封建性ならではの権利、義務、平等の一つの例だ。


 三つの法律の下を決めた後、この法律の元についてサラの意見も聞いてみた。


「俺はこれを基本にした法律を作りたいんだけどどうかな?」


「ん~~? 分かりません? これしか答えられないですね」


「それってこういうことを考えたことも経験したことも無いからだよね」


「多分そうだと思います。あなたの言っていることは王や国民、相互に関する事ですが、現在の仕組みだと一方通行ですからね。上から下に対するものが殆どで、唯一下から上にあるものは、服従と義務だけです」


 サラのいう事は封建制ならそれが当たり前、共和国でさえこの世界ではこれに近い。民主主義を知っている俺からしたら理不尽極まりないものだが、封建制でもやりようによっては良い国が作れる。


 後はロベルト達が戻って来てからだな。


「陛下、ロベルト以下13名陛下のご命令を遂行し、只今っ戻りました」


 わぁ~~、また堅苦しいロベルトに戻ってる。これはもうそう簡単に直せそうにないな。13名という事は後ろにいる10名が選挙で選ばれた代表という事のようだ。しかし、これは凄い事に成っているな。どうしてこう成った? 


「ご苦労、それで後ろの10名が村や町の代表という事で良いのか?」


「はい、村と町から各2名が投票で選ばれました」


「ひとつ聞いて良いか? 何故こうも男女が均等に選ばれた?」


 そうなんです。俺はまだ平等という事は言っていないのに、男女がそれぞれ1名ずつ選ばれているんです。


「代表を2名選べという事でしたので、文字が書ける者は投票で、書けない者は口頭で投票という形にしたら、自然とこういう事に成りました」


 ん~~、これってもしかして殆どの男性は男性を選び、女性は女性を選んだ結果かな? いや、2名選ぶんだから女性が女性2名を選んでもこうはならない。勿論男性も同じだ。こうなったという事は、一部男女1名づつ選んだ人がいたから、差が生まれ男女一名づつという結果に成った。そう考えるのが論理的だ。


 この結果って男尊女卑が強かったせいかもな? その反動で女性が女性の代表を選んだという事だろう。


 まぁ結果オーライ! 出来ればいつかこうなれば良いなとは思っていたからね。それが最初からこう成ってくれるなんて、ラッキーでしかない。


「それじゃ、一応自己紹介をして貰おうか。名前と年齢、何処の代表かを言ってくれ」


「では私から、エジン代表の……」


 10人の自己紹介が終わって、俺が思ったのは、女性の殆どが俗に言う肝っ玉母さん的な人だという事。多分村や町でも頼りにされるおばちゃんという立場なんだろう。ミル村のルイーザを若くした感じだと思えば良いな。


 一方男性の方はというと、こちらは年齢が見ただけでバラバラだというのが分かったが、自己紹介でもその通りだったので、ちょっと不思議に思った。グラン位の年齢からフランクと同年代の人もいれば、一人どう見ても成人してそんなに経っていない人もいた。その人がなんと、20歳だった。


 この20歳の青年が選ばれたという事は何か特技があって、村に貢献していたんだろう。そうじゃなければ選ばれる筈がない。気になるから鑑定をしてみたらその答えは直ぐに返って来た。


 恐らくこの人は先天的に持っていたんだろうが水魔法を持っていた。農業に欠かせない水、それを魔法で出せるんだから、村人から重宝されるだろう。天候が不順だったり、干ばつに近い事があっても問題ないからね。


「自己紹介も済んだことだし、君達にこれからやって貰う事を説明する。先ず初めにやって貰うはこの国の法律を作って貰う。その為の資料用に他国の法律の本は集めてある。これらを参考に、法律を作るんだが、次の三つの事を基準に作って欲しい。権利、義務、平等だ。この三つの事を基本に他国の法律を作り変えると言ったらいいかな。分かるか?」


「「権利、義務、平等……?」」


 皆、意味が分からないようで、それぞれブツブツと言っている。


「分かりやすく説明すると例えば王である俺は君らに命令できる権利がある。だがそれと同時に君らに対して責任という義務を負う。君達を幸せにするというな。そしてそれらは国民全員に平等に与えなければいけない」


「陛下、そうするとそれは私達にも同じ権利があるという事ですか?」


「そうだ。君達は代表、選ばれた者達だから、村人などに命令ができるという権利がある。でもそれと同時に村人たちに責任という義務を負う。村人が幸せになるように働かなければいけない。そして最後の平等というのは王、君達、国民全てに平等に権利もあるという事だ」


「国民の権利?」


「国民の権利とは王に対してもものが言えるという事だ。当然君達へもな。まして選挙があるから、君たちの行いが悪ければ選挙で落とされるという事」


「王にものを言う……?」


「王にものを言うという事にも責任という義務を負うから、嘘は駄目だし、俺を納得させることが出来るような根拠がいる」


 滅茶苦茶混乱しているな。そりゃ今までそんな国はないし、そんなこと考えた事も無いだろうからな。


「先ずは今言った三つの事を考えながら、此処にある法律書を全部読んでみろ。それで三つの事にあってないと思う法律を抜き出せ。そこから俺も含めて議論しよう」


「陛下、申し訳ありませんが、それでは半年ぐらい掛かりますよ」


「それで良い。建国宣言の時にはまだ必要ないからな。ただそれまでは俺が法律だから、俺に従ってもらう事に成る」


「陛下、もうそれで良いのでは?」


 こういう所が抜け出せない庶民感情なのかな? 王や貴族に絶対服従それが染みついている。それでも今まで普通に暮らしてこれ……てないな。何とか封建制でも法治国家なんだと分かってくれたら良いんだが……。


「話しは変るが、建国宣言の時に建国祭をやりたいんだ。全国民のうちどれくらい集まってくれるだろうか?」


「間違いなく全員集まりますよ」


 全国民……。それはちょっと厳しいかな? 2万人だよ。でも来るなとも言えないしな……。


「それじゃ、やはり建国宣言だけにしよう。建国祭で2万人の食べ物とか用意できないからな」


「陛下、それなら皆で持ち寄れば良いのですよ。皆で祝う事こそ建国祭でしょ」


 おぉ~~、ロベルトは中々良いことを言うな。そうだよな皆で祝うからこそ建国祭。正にその通りだ。そうすると後は日程を決めるだけだけど、何時が良いかな? 役人の試験がまだだからその後だよな。でもそんなに長く城の事を隠しておけないのも事実……。


「役人の試験が終わったら、直ぐに建国宣言をするから、日程を考えておいてくれ」


 あぁでも建国宣言って他国にも知らせないといけないんだよね。それに普通なら招待客とか呼んで、パティ―とかをするんだよな。今の現状だと呼べてもエスペランスとグーテルぐらい。ビーツ王国とフリージア王国は微妙だな。幾ら同盟国でも?


 神聖国は呼んでも来ないだろうし、帝国も多分無理。共和国は利益に成ると思えば来るだろうが、来たら来たでめんどくさいことに成りそう。


 逆にエスペランスとグーテルを呼ばないという選択肢も無いのか。呼ばなかった時の嫌味がそれはそれで嫌だ。


 あぁ~~~~、。やること多過ぎ……。















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