第99話 教会

 学校での魔法の研究が進んで行くのは楽しいのだが、最近気に成っている事がある。


 それは教会、なぜ急に教会? と思うだろうが、魔法の事やスキルの事を研究してると俺の知ってる教会の光魔法の知識は間違ってるんじゃないかって不安になるんだよ。


 転移の時、神様からある程度の事は教えてもらったけど、本当に大雑把な知識なんだ、それと俺の前世の記憶が入り交ざっておかしくなってる。


 その原因が創造魔法、この世界のルールに反しない限り魔法が作れるから、俺の考えたヒールと、この世界にあるヒールでは違うのではないかということ。


 なぜそれが気になるのかというと、錬金術と薬師、教会でこの世界の医療系は成り立っているのですが、このうち錬金術と薬師には俺が介入して変化を起こしてる。


 そして残るは教会、これからポーションでひと悶着、確実にある相手の事を知らな過ぎると思うんです。


 シャーロットの結核だって薬師が診てたでしょ。


 教会の魔法では病気が治せないのか、それとも治せない病気があるのか? 知らないんだよ。


 この世界ではちょっとした病気は薬で治す。勿論、ポーションでも治せる。でも治し方が違うんだよね。


 ポーションの場合、基礎体力が上がって治るという感じだから、薬とは根本が違う。


 ただ毒消しポーションのように、体内で毒と判別されれば、上級毒消しポーションだと病気も治せるものがある。


 でも結核には効かないから条件があるんだろう。


 特に色々研究してると、神様が言ってたことと違ってるなという事が時々あるんだよ。それって俺が貰った知識を勝手に解釈してたんじゃないかってね。


 だから今一番知らないのが教会なんですよ。この世界に転移して一度も絡んだことさえないからね。


 ましてこういうのが一番、人に聞けないんだよ。山奥で暮らしてました設定はもう使えないし本当に困る。


 こうなったら自分で調べるしかないか? 先ずは教会に神様にお祈りしに行く振りでもして現地調査かな。


 別に教会が祀ってる神様が、俺の知ってる神様なら振りじゃなく、ちゃんとお礼のお祈りすれば良いしね。


 ラロックにも小さいながら教会はあるから、そちらから行ってみるか。


 おっとその前に教会の評判ぐらいは聞けるだろうから、ケインの店によって食事しながらケインに聞いてみるか。


「ケインさん、俺、教会にお祈りに行こうと思うんだけど、此処の教会ってどんな感じ? 以前寄った教会の司祭が愛想が無くて気分が良くなくってさ」


「なんだユウマ此処の教会に行ったことないのか? 駄目だぞちゃんと神様に感謝してお祈りには行かないと。そうだな此処の教会もそう変わらないんじゃないか、基本教会がそんな感じだ。」


 ケインから聞けた話は教会関係者は基本高飛車で愛想がない。献金を多くする人には愛想が良いという事みたい。これって怪我や病気の患者にも同じ事じゃないのかな?


 光魔法で病気が治せるなら、安ければ教会に行くよね。そうしないで薬師を頼ると言う事は少なくとも薬師が出す薬よりも高いか病気は治せないと言う事。


 これはやりようが分かったな。


「こんにちは神父さん、お祈りに来たんですがよろしいですか?」


「お祈りするなら神に感謝して献金も忘れないようにな」


 何だこのあからさまな態度、金の亡者だな、神様が泣いてるぞ。


(神様ご無沙汰しています、お礼が遅くなってごめんなさい、この世界に転移させて頂き感謝しています。神様に何か意図があるのかは分かりませんが、この世界の進歩にちょっとだけ力を貸そうと思っています。どうかこれからも見守っていてください)


 ユウマは今の正直な気持ちを神様に告げてお祈りを終わった。


 ここからは一芝居打って教会を探ってみますか。その前に献金もちゃんと多めにして神父の口が滑らかになるようにしないとな。


「神父さん、お祈り有難うございましたこれをお納めください」


 ユウマは銀貨1枚を神父に手渡した。銀貨1枚って概算日本円で1万円だからね。


 お祈りに来て1万円は少なくないだろう。


「これはこれは、敬虔な信者で神もお喜びでしょう」


 そのニコニコ顔、気持ち悪いんだよ、神様は泣いてるよ。


「ところで神父さん、最近身体の調子が悪くて薬師に薬を出して貰ったんですが、一向に良くならないんです。教会で何とかならないでしょうか?」


 さてどんな回答が帰って来るか?


「薬師で治せん病か、それは難儀じゃのう。ここでも治せるか分からんがやってみてもよいぞ」


 これってこの世界のヒールはポーションと同じって事じゃないの? 体を正常に戻したり、基礎体力を上げるということ、その戻す量で魔法の強さが変わる、ポーションの中級、上級のように。


 ヒールならハイヒール、エクストラヒールみたいに、実際にあるかは分からんけど。


 結核みたいに菌が原因の場合、ポーションもヒールも治せない。菌は毒物と認定されない。当然だよね、体の中には人にとって必要な菌もあるから。


 一時的に臓器は回復しても、菌がある以上また再発する、だから治せない。


 そうするとポーションもヒールも病気が治せない訳ではないけど、内臓の病気とかに成ると最低でも中級ポーションかハイヒールが必要という事、臓器の状態次第では上級が必要で上級でも追いつかない病気もあるかな? それが改良版なら大丈夫に成るかも?


「そうですか、治るか分からなんですか? それならまた今度にします」


 そういうとまたあからさまに態度が変わった。


「次に来ても治るとは分からんが、せいぜい養生するのじゃな」


 ユウマはその言葉を聞いて教会を後にした。


 教会の光魔法については詳しく解らなかったが、少なくともヒールや病気については解ったような気がする。


 あくまで推測だけど大きくは違っていないだろう。それにこれじゃ薬師が可愛そうだ。薬師でしか治せない病気があるのに評価が低すぎる。


 この世界では菌やウイルスは、知られていないから病気としてしか考えられていない。だからヒールやポーションでは治らない。


 前世の研究ではウイルスでがん治療をする研究がされていたから、菌やウイルスには善悪があるから全部を排除できない。だから個別に排除する必要があるから薬なんだ。


 この世界本当に良く出来てるな。魔法のある世界でのちゃんとしたルールがある。


 今回色々解ったけど、一番の収穫は教会は腐ってるという事だな。

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