第98話 驕りの結末
「私たちが何をしたと言うのだ」
「そうだ、こんな事をされるおぼえはない」
ラロックの警備兵に連れられて行った重鎮2人は何もしていないのに、どうしてこうなってるのか解らないと初めはしらを切っていたが、そこは警備兵の方が上手でそういう事に慣れていない、、一般庶民ではいくらギルドでは重鎮でも何時までも抵抗できず、此処に来た目的を白状してしまった。
事情が解ったので、今回は罪に問えるような行為にまでは発展していなかったので、厳重注意の上、2人は解放された。
解放された2人は此処にいても、もうどうしようもないので、そそくさと冒険者の護衛と共に王都に帰って行った。
その護衛についてもひと悶着あった。事件を知った冒険者に帰りの護衛を渋られたのだ。犯罪に加担した冒険者のせいで冒険者ギルドの管理が厳しくなっているので、要らぬ疑いを掛けられたくないという理由でだ。
そこは罪には問われていないと言う事と護衛料の増額で何とか冒険者を宥め2人は帰る事が出来た。
一方、ローズと警備兵から事情を聞いたグランは直ぐに、このことをビクターを通じて王宮に連絡を入れた。
これは魔道具大好きなカルロスを動かす為である。グランは当然錬金術ギルドにも抗議をするが、相手は教会に次ぐ権力を持っているギルドだから無視される可能性が大いにあったので、国から注意なり圧力を掛けて貰う為である。
グランの思惑通り、グラン商会からの抗議を無視していた、錬金術ギルドに国から厳重注意がされた。
錬金術ギルドは驕っていたのだ。今までポーションというこの世界に絶対に欠かせない物を作って来たという自負が国と対等に渡り合えると勘違いさせていた。
特にギルドマスターのエンリケは錬金術を神の御業の如く思っているので、教会と同じように考えていた。
カルロスはビクターからの報告で物凄く憤慨した。魔石魔道具を作っているのが錬金術師だという事は知らなくても推測は出来ていた。
カルロスは二度も拠点を訪れているのだ。だからグラン商会の事には詳しいので魔道具=錬金術師が成り立っていた。そこに錬金術ギルドの報告が入れば、尚更確信に近づき、魔道具の製造にちょっかいを出そうとしたギルドに怒ったのだ。
国からの厳重注意が入ってもエンリケは気にしていなかった。それどころか次はどうしようかと考えるほどの一種の狂信者であった。
しかし直ぐにそうは行かなくなった。国が怒ると言う事は当然貴族にも話が行くわけで、中級、上級ポーションのお得意さんである、貴族との取引が減って来たからだ。
グラン商会は化粧品や魔道具だけでなく、中、上級のポーションも当然作っている。学校の卒業生たちも初級なら作っているし、中には中級を作れる卒業生もいる。
錬金術師で上級が作れるのは高齢でベテランや重鎮と言われる人達だ、その人達にとって上級ポーションの売り上げはとても重要なのだが、それが減って来ては死活問題になる。
そうすると苦情の矛先はギルドマスターに成るわけだ。国からの注意だからどんなことで注意されたのか当然末端まで広まっている。その結果いらぬことをしたとギルド員から批判され、次など出来るはずも無くなった。
暫くして一度信用を失った錬金術ギルドに客が戻って来ることは無く、ギルドマスターエンリケの求心力は無くなり、引退するしかなくなったのだ。
「何故だ、なぜ錬金術の崇高さが分からない。錬金術師はポーションを作ればそれで良いのだ。魔道具など、魔道具など……」
今回はギルドマスターの引退で済んだが、錬金術ギルドの驕りが無くなった訳では無い。このまま進歩することを拒んでいれば、改良型のポーションが発売されれば一気に衰退するだろう。
今の現状で危機感を持てない錬金術師はいずれ確実に凌駕される運命が確定してしまっている。
この錬金術ギルドの一件が、この先大きな問題へと繋がるとは、この時のユウマもグラン商会の誰も思っていなかった。
事件も終息し魔道具販売が順調に進んでいる頃、学校の普通科でも色々起きていた。
俺が身体強化を教えた、三人衆、フランク、ロイスは全員が習得したが、普通科の生徒には未だ習得出来ている人がいない。しかし結界魔法を習得した人が5人もいるのだ。
200人中5人だから多いと言う訳では無いが、身体強化は誰も習得出来ていないのに、この結果は非常に興味が沸いた。
結界魔法を習得した人は全員が属性魔法持ちでレベルは高くないがMPが他の人より多い、勿論、属性持ちは他にもいてMPも多いが習得していない。
この差は何だ? まだ期間的に短いからまだ結論は出せないが、もしかしたら
結界魔法を習得したのがエマだけだったように、適性が関係してる事が濃厚になってきた。
では身体強化はどうだ。全員習得しないというのはちょっとおかしい、何か原因があるはずだ。
そこで全員を鑑定してステータスを紙に書き分析してみた、すると殆どの人がレベルが2~4、高くても5が数人だった。
うちの5人は全員がレベル7以上、レベルが高いと言う事はHPも高い。
もしかしたらHPと関係してるのかも?
身体強化を考えると、筋肉、骨、皮膚などに関係してるから、ある程度のHPが無ければ習得しないのかも、HPが高ければ当然普通の状態でも筋肉、骨、皮膚は強い、あ! そうか! 身体強化に耐えるだけの身体が必要なんだ。
その最低限のHPは解らないが、今の現状なら、レベルが5か6以上は必要という仮説が立つ。
レベルが5の人が習得していなのは、適正と言う事も考えられるし、6以上ないと駄目と言う事も言える。
レベル6で習得しなかったら7で確定だ。7で習得してるからね。
適正というのも強弱がありそうだ。レベル10のロイスが苦労したが習得できたのだから、適性強、適性弱、適性なし、こんな感じかな。
習得する無魔法によってHP,MPの高さが関係してる事はこれではっきりしたな。
俺の場合はチートだからこういう事は調べにくいんだよね。
この研究も世の中を大きく変えるな……
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