第32話 色々あり過ぎた

 ポーションの話で盛り上がっていたが、そろそろ火を消さないといけないので、

 無理やり話を中断、燻製小屋に行き、燻製品の色など状態を教えてこの状態になったら火を消して翌日まで放置するように教える。


 これまた教えてる間、二人は上の空だったけど、しっかりと教えたよ。


 ちゃんと頼まれた仕事はするのだよ俺は、この状態を作ったのも俺なんだけどね。


 結局、作業後は夕食を挟んで、これまで二人が見てきた物をどうするかの話なったが、全く新しいガラス、レンガ、シャンプー類以外の色鮮やかな陶器、ポーションは既存の業界や関連業種に大きな影響をもたらすので、じっくり考える事になった。


 本当はガラスもレンガも影響がないわけじゃないんだよね。ガラスは陶器関係、レンガは大工等に影響がある。


 それに最大の問題は、今のところ作れるのは俺だけなんだよね。


 燻製に関してはフランクの関係者だったから二人に教えたけど、他の物はどうするか? 誰に教えるかという問題がある。


 俺は兎に角多くの人と関わりたくない。目立ちたくない。これが第一なのだ。


 改めて、俺の要望を伝えると二人はまた考え込んでしまった。


 当然だよね、俺が出かけて行って直接それぞれの人に教えれば済む話なのに、

 それをしたくない。俺は表に出たくないと言ってるのだから。


 二人は俺が寝た後も、客間で色々話し込んでいたようだけど、俺は希望を伝えたから後は二人に任せる事にした。


 翌朝、二人が作った燻製品を草籠や竹籠に詰めて行き、それが終わると注文分の燻製を作るために、二人に手伝ってもらって燻製小屋二つをフル稼働して仕上げた。


 それから取引日の前日までは俺が実際に色々作る所を見せれる範囲で見せて、どういうものか理解を深めてもらった。陶芸などは時間がないので釉薬について教えただけ。


 そして今日いよいよ帰る事になったのだが、此処での暮らしに慣れてしまった二人が帰りたがら無いのだ。しかし世の中に広めたい。売りたいと言う気持ちもあるので、心の中で凄く葛藤してるようだ。


 それでも俺も取引があるので、行かないわけにはいかないから


「行くよ ほら歩いて」


 薄情な言い方で、半ば強制的に帰らせるのであった。


 帰りも予定通りの行程で取引場所に辿り着いた。しかし帰りはそれはもうこちらが逆に寂しくなるくらいに静かだった。


 行きはあれ程騒がしかったのに、普通なら考えられない状況に慣れてしまったのと、帰ってからどうするかをずっと考えているから、会話がなかったのだ。


 到着すると、既にフランク達が待っていた。やはり心配だったのだろうと思ってると、そうではなかった。自分が行きたかったのに行けなかったから、どうだったか早く聞きたかっただけだった。


 本当にこの人はブレないな……


 しかし、真っ先に話を聞こうとしてる相手の父親と部下の様子が変なのだ。何だか元気が無いように見える。


 本当はこれから待ち受けている数々の問題にどう対処するか、考えているだけなのだが。


 それでも聞きたい事があるフランクがグランに話しかけると


「あぁ、ただいま」


「どうしたの? 何だか元気がないみたいだけど、疲れてるの?」


「疲れていないと言えば嘘になるが、体がしんどい訳じゃないんだ」


「どういうこと?」


「まぁ 色々あってな」


 帰ってくる返事は間の抜けたものばかりで、らちが明かない。


 しょうがないのでロイスに声を掛けると


「只今戻りました」


「ロイスも父さんもどうしたのさ?」


「はぁ、色々ありまして」


「色々あったでは解らないよ、説明してよ」


 フランクはこれは無理だと、今度は俺に聞いてきた


「うん、まぁ色々あり過ぎてね」


 この場ではこう答えるしかできなかった。


 流石に三人が三人とも同じような返事しかしないので、これ以上は無理だと思ったのだろう、取引の方を進め始めた。


 注文分と二人が作ったものを渡して、俺の消耗品とお金を受け取り、取り引きは終了。次回の約束をしてこの場は別れた。


 その後がどうなったかは、後日知ることになる。


 店に戻って来たフランクは


「父さんもロイスも何かあったのはわかるから、ちゃんと説明してよ」


「あぁ 説明はしなきゃいかんのだが、何をどう話したらいいか整理がついていないんだ。少しゆっくりしてから話すから、すまんな」


「旦那様、私も同じく少しお時間をいただけないでしょうか」


「あ~~もう解ったよ、後でちゃんと説明してよ」


 その日の夜、ユウマの家で起きた。いや! 行く道中も含めての驚愕としか言えない話のオンパレードに、フランク、一緒に聞いていたシャーロット、ケインは暫く呆然としていた。


 その日はあまりにも衝撃が強すぎて、話にならなかったので、翌日全員が頭を整理してから話そうと言うことになった。


 その夜、風呂は無いがこれを使ってみろと、グランがユウマから渡されている、シャンプーとリンスをシャーロットに使わせた事で、次の日の会議はとんでもないことになった。


 当然、シャーロットの勢いが凄く、フランクはこれを売り出さないと一生口を聞いてくれないんではないか位の恐怖で、全力で売り出す方法を考えた。


 一方、ケインも料理人として新しい料理法に興味津々で、実際に見ていたロイスをつかまえて、根掘り葉掘り聞きだそうと離さない。


 聞かれてるロイスは、レンガについて主人と話し合いたいのに、それを許さないケインに困り果てていた。













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