第33話 事件は会議室で起きていた

 グラン達が戻ってからの1週間は怒涛の日々だった。

                   

 戻った翌日には、急きょ領都に早馬で使いを出し、兄のジーンと母ローレンをラロックに呼び出した。


 その間、領都の店はジーンの嫁フランソアが差配する。


 何故、ジーンとローレンを呼び出しのかは、あまりにも一つ一つの案件が大きすぎるので、一人でいくつも対応できない。それで急きょ人を増やして担当を決めて、その人物が中心になって事を進めるようにしたからだ。


 しかし、どう進めるとか、どう対処するとかは全員で話し合った。


 ジーン達が到着するまで何もしないのはもったいないので、残りのメンバーで全員が揃ってから一気に話が進められるように、一つづつの案件を整理して先ずは問題になりそうなことを挙げて行った。


 ジーン達が到着したその日は案の定見せられた物に驚愕して二人が使い物に成らなかったが、時間がないので強制的に話に参加させた。


 次の日、店は従業員に任せ、朝から会議グランが司会をし、話を進めた。


「先ずは1つづつ片付けるぞ、最初は石鹸、シャンプー、リンスからだ」


 これを一番にしないとグランもローレンに何を言われるか解らなかったから一番にしたのだ。 


 ローレンもシャンプー類を使ったからね……


「この商品は錬金術師の問題が一番だ、どうやって錬金術師をこちらに引き込むかだ」


 そこでシャーロットが口を開いた。


「お父様、それなんですが昨晩お義母様とお話ししたんですが、女性の錬金術師を引き込みませんか?」


「なぜ? 女性なんだ」


「それは第一に女性ならこの商品を気に入るからです。それにやっぱり職人の世界ですから女性の立場は弱いので、そういう人達なら話に乗ってくるのではないかと思います」


「確かにな、皆はどう思う?」


「それは良い考えだと思います。実はユウマさんが言うにはまだ作ってない物で、女性が使うものがあるそうなんです。」


 ロイスが雑談でユウマがこぼした話を暴露した。


「そ! それは本当なのですか、ロイス!」


 シャーロットとローレンが、かぶせるように言った。


「はい、大奥様、奥様、自分は男だから必要ないから作ってないけど、幾つか作れそうな物はあると、言われていました。」


「そうか、それなら女性の錬金術師は最適だな」


「次は器具に関してだが、今のところ作れるのはユウマ君だけだから初めはユウマ君に作って貰おうと思う」


 グランの言葉に全員から異議は無かった。


「次は錬金術師に関連して、ポーションについても話そう」


「ポーションについては、皆も解ってると思うが関係する機関が多すぎる。それに一番は教会にどう対応するかだ」


 流石に教会が関係するから、意見が出てこない。


「父さんそれなんだが、今は初級ポーションしかないから、中級、上級が出来てから考えたらどうだろう?」


 ジーンが提案した。


「そうだね、実際に全部できて効果を試してからでも遅くはないと俺も思うな」


 フランクがジーンに賛成する。


「そうだな、これは本当に慎重に進めるものだ。中途半端より絶対良いな。ただ誰に作って貰う?」


 グランの言葉にまた沈黙が


「ユウマはまだ作れないと言っていた。何時頃作れるようになるんだろう?」


 グランの言葉にロイスが


「ご隠居様、それなら次の取引の日にユウマさんに直接聞いてからの方が良いのでは」


 ロイスの意見に皆が頷く


「それではポーションについては、継続案件と言うことにしよう」


「次はどうするかな? ガラス、レンガ、陶器は関連してる、別物なんだが?」


「先ずはレンガではないでしょうか、レンガの中の耐火煉瓦は全てに関係します」


 ロイスが一番興味を持ってるレンガについて発言


「確かに耐火レンガは、全ての窯に必要だし、風呂や鍛冶の工房にも関係する」


 フランクが部下の言葉に同意


「よし、先ずはレンガからだな。レンガは職人がいないし窯もない、どうする?」


「それなんですが、是非私にやらせて頂けないでしょうか?」


 ロイスは立ち上がり姿勢を正して、頭を下げながらお願いし、続けて


「職人は私が育てます。後を継げない農家の次男や三男に声を掛ければ、人は揃うと思うので」


「えらく積極的だなロイス、まぁ向こうにいる時からレンガをずっと気にしてたからな、どうするフランク? ロイスはお前の部下だ」


「そうですね、ロイスがここまで言うのは初めてです。それだけレンガに魅力を感じてるのでしょう。そういう奴がやった方が良い結果を生みそうですから、やらせましょう。」


「そうだな、ではレンガはロイスに任せる」


「有難うございます。絶対成功させます」


「あぁ頼む」


「これは私の独断だが、フランク、陶芸窯の方はお前に頼みたい。これは既存の業種との交渉だから店主の方がいいだうし、ラロックには陶芸窯がいくつもあるからな」


「はい、わかりました」


「燻製に関しては私がやる。ただ製造は塩漬け肉などを今作ってる業者にやって貰おうと思う。そうしないと下手な恨みを買いかねんからな」


「ただ、販売は当分うちの独占でいく、これは他の商品も同じだ」


「その理由は、これだけの事を提供してくれたユウマ君に利益を渡すためと、ユウマ君は表に出たくないそうだから、表のことを全部うちで引き受けるためだ。」


 大体話がまとまって、これで終了かと皆が思ってた時に


「あ! それからわしは風呂を作ろうと思う。それも村や町の皆が入れるような大きいものを」


 最後の最後にグランが爆弾を落として会議は終了した。



 銭湯が出来るのはまだまだ先の話……









         

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