第23話 帰ろうわが家へ
図書館で情報を集めて、店に戻ってから、俺は明日には帰るとフランクに伝える。
フランクはあと二日ここにいて、それから帰ろうと言ってきたけど、それだと俺の結界の魔道具の魔力が切れる可能性があるので俺はそのことは伝えずに、燻製を作らなくていいのか?と究極の殺し文句。
フランクは元気になったシャーロットともう少し一緒にいたいだろうから、俺ひとりで帰ると告げた。
その日の夕食の時は皆にも、もう少し居たらと誘われたけど、ラロックでフランクと取引してる商品を作らないといけないと説明納得してもらったが、そこからがまた大変だった。
そんなわざわざ無理して帰るほど売れてる商品なのかという話にかわり、流石商人一家、根掘り葉掘りに事細かく聞かれた。
あまりに興味を持ってもらったので、俺も悪い気はしないので、後でフランクを呼び出し明日発つ時にこっそり渡すから、食べてもらってくれと頼んだ。
翌朝、約束通り燻製とベーコンをフランクに渡し、ひとりで領都を出た。
町を出てしばらくは歩いていたが、町が見えなくなってから直ぐに、街道の脇の森に入って高速移動に切り替えた。
流石に街道を高速で移動する訳にはいかないから仕方がない。
森の中と言っても、俺の住んでる魔境の森ではないから、街道より少し障害物がある程度の感覚で移動できる。
魔物も本当に偶にあのレベル1のホーンラビットが出る程度なので無視してひたすら移動した。
あれからレベルも上がってるから、移動速度が数段速くなっているので、馬車で1日半の距離が4時間で踏破出来た。
今回はラロックに寄る必要がないので、村を半周してそのまま魔境の森に入った。
これから先は今までのようにはいかないので、森に入ってから少し休憩を取ることにした。
もうお昼は過ぎてるけど、まだ昼食は取っていなかったので、町で買っておいた串焼きをインベントリから出して食べた。
時間が止まるインベントリっていいよな、もう二日目なのにアツアツで食べれるんだから。
この世界は、現代日本に比べたら、足りない物だらけだけど、この魔法の世界にしかない物もあるんだよな~
俺のインベントリは特殊なのもあるけど、休憩を取りながらそんな事を考えてたら、ひとつ閃いた!
「俺って錬金術と付与術両方使えるし、魔法も全属性使えるからもしかしたら、アイテムバック作れるんじゃない?」
この世界では、スキルのアイテムボックスと本当に稀にダンジョンで見つかるアイテムバックしかないし、勿論、時間停止ではなく、容量もアイテムボックスは魔力量に影響されるし、バックは一番大きい物でも馬車2台分の容量。
やってみないと解らないが、出来たらこの世界がひっくり返るぐらいの物になる、そんなものを世の中に出せるか?
迷うところだが、それが普通になれば俺のインベントリも使いやすくなるのは間違いない。
休憩も十分とれたので、ここからはいつも通り気配遮断と気配感知を全開で、警戒しながら、高速移動で我が家に帰る。
魔物を倒して備蓄を増やすのも忘れない。
一方その頃、町ではフランクが俺から渡されたベーコンで昼食を作って家族に振舞っていた。勿論、料理人に作らせてだけど……
初めて食べたベーコンの美味さに、グランとジーンはフランク同様
「これがユウマとお前が取引してる物なのか?」
二人が声を揃えながら、乗りだすようにフランクの顔の目の前に顔を突き出して聞いてきた。 (親子だね)
燻製の商品もすぐ食べさせろと言ってきたので、本当は夕食の時に酒のつまみに出す予定だったけど、二人のあまりの勢いに急きょ燻製肉と魚の燻製を、軽く炙って出してもらった。
どちらもこの国では塩漬けしかないので、燻製品は程よい塩加減で、燻製の香りがこうばしく、素材のうま味が凝縮してるので別格の美味さだった。
そこからは食事もそっちのけに親兄弟の商談が始まった。
ただ困ったのはフランク、ただでさえ現在ラロックで品薄状態なのだ、たとえ家族だとしても商品を回せる余裕がない。
出来るなら回してやりたいが、家族なら断りやすいし、他の商人よりプレッシャーもないので、事情を説明我慢してくれるよう頼んだ。
しかし、そこは若くして店を起こしここまでにしたグランは引き下がらなかった。
それなら作り手を増やすか、作り方を教えてもらえばいいと言ってきたのだ。
そこまで言われたのでしょうがなく、あまりユウマの個人情報は教えたくなかったのだが、納得してもらうには説明するしかないと、ユウマが一人で魔境の森に住んでる事と目立ちたがらない事を説明した。
それに他にもリヤカーの事なども説明、ユウマとはこれからも良き取引を続ければ、こちらに良いことが起きそうなので、関係が気まずくなるようなことはしたくないと断言した。
そこまで言われると、実際今回もう助からないんじゃないかと思ったシャーロットの病気を治してもらってる。使った素材はこれまで雑草だったものと毒キノコだ。病名と治療薬、どちらも薬師でさえ知らなかったもの。
上手く付き合えばこれから先もっと恩恵があるかもというフランクの言葉は説得力があった。
それでもこの商品は売れる、それにこんな美味いものを辺境の村で売るだけなんて商人の魂が許さない。
ここでグランはとんでもないことを言い出した。決して無理は言わないから、ユウマに直接相談させてほしいから、フランクが帰る時に一緒にラロックに行くと言い出した。なんなら森のユウマの家にお願いに行ってもいいと言う。
フランクも流石に父親のあまりの勢いに押されて、森の話は無理にしても取り引きでユウマがラロックに来る時なら会せるということで納得させた。
次の取引日には間に合わないので、その次ということで話はまとまった。
そんな事がユウマの知らないところで決まった頃、ユウマは家に向かって爆走していた。
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