第24話 研究の成果

 帰宅した翌日、燻製品を作るという理由で帰って来たのだから、今日は燻製品を作る必要があるのだが、本当はインベントリに次の取引分はもうあるのだ。


 前回の取引品を作る時に、注文量の倍は作ったから、今回の分までは問題ない。


 それでも俺の性格上余裕がないのは嫌なので、今回もまた午前中は商品づくり、午後はポーションとアイテムバックの研究、家庭菜園の世話で過ごすことに。


 ポーションの研究は今作れる、初級ポーションの数をこなして習熟度を上げながら、効果の向上を調べる。


 この世界の住民に向上心がないので、時折新しいものは産まれるが一度産んだものはそれで完成という認識になってしまって、性能をよくする、効果を上げる、更に美味しくするという気持ちにならない。


 昔は有ったのだろう、だからポーション等には初級、中級、上級等が存在する。

 基本の薬草に付け加えることで効果の向上をしてるから。(後日知識)


 結局はそれで終わり、今現在上級の上の効果、四肢の再生などまで出来る物が出来ないかの研究はひっそりと行われているがそれだけ。


 その中でも料理はまだいい方だ商売を始めるのに自分の店独自の味が必要になるので、新しい味付けは産まれている。


 この精神があれば今の味付けを更に良くする研究をすればいいのだが、一度完成して売れたらそれで満足してしまい、その先へ進もうとしない。


 料理全体でも焼く、煮るだけで他の調理法、蒸すや揚げるという方法はない。


 全体的に必要に迫られないと何かを作り出そうとしないというのがこの世界だ。


 今回俺がやってるのは、今の初級ポーションの効果を10だとするとそれを10以上にする研究。何故かというと、HP,MPの回復ポーションはレベルが高いと効果が弱くなるので、レベルの高い人が怪我をすると、初級では間に合わない。当然MPも同じ。


 当然だよね、レベルが高い人はHPもMPを多い、それなのに同じポーションで100%回復なんてしたら、おかしなことになる。


 この世界のポーションは例えば初級なら200まで、中級なら400までのようになってる、実際はこんな数字ではないけど。


 初級、中級、上級の目安はこの世界の冒険者などを参考にしてる。一番レベルが変動するからね。


 冒険者のレベルの平均が基準にされて、平均の人が普通に全回復するものが初級、普通の怪我が治るもの、平均の人の内臓損傷や骨折などまで治るものが中級、四肢の接合まで出来る物が上級と言う感じ。


 だからレベルが高い人はへたをすると普通の怪我でも中級を使わなくてはいけないこともある。MPも同じような考え方。


 これが普通になってるのは、高レベルの人は当然収入も多いので初級より高い中級でも使うことができるので、気にされていない。


 ただこれは俺の研究によって、効果が上がれば平均の人が大けがをしても今までは中級を使ってたのが初級で済むようになるし、高レベルの人も普通の怪我で中級を使わなくて済むようになる。


 そして全体のポーションの効果が上がれば今までは傷跡が残っていたものが無くなったり、上手くすれば四肢の再生は無理でも指ぐらいは再生できるようになるかも?


 こればっかりは、やってみないと解らないが。


 こういう仕組みがあるから現実の世界なんだよね。小説ではご都合主義だから何でもあり、それはそれで読み物としては面白いからね。


 アニメだってそうでしょ、ドラマや映画だってそういうもので出来ている。

 人の心の声が聞こえるとか、凄い設定だよね。


 いってみれば魔法の世界でも限界はあるということ、その世界ごとに。


 もしかしたら、神様が管理してる世界の一つには小説のような世界があるかもしれないが、今俺の生きてる世界ではこういう仕組みだと言うこと。


 さて研究しよう!


 実はもうそれらしい目星はつけてあるんだ。何かというと、ポーションすべての作り方に共通してるのが水を使う事なんだけど、今使ってるのは普通の水、言い換えれば飲める水ということ。


 だから、井戸の水、川の水、湖の水どれでも飲めれば使える。

 それに現状どの水を使っても効果に違いがでないから飲める水ということになってる。


 実際飲めない水では効果というより、ポーションにならない。簡単にいうと青くならない。


 そこで俺が考えたのが、地球の知識、蒸留水ならどうなるのかということ。


 これのヒントになったのが、小説なんかで出てくる聖水を使ったポーションの性能向上を思い出したから。


 この世界に聖水は存在しない。もしかしたら俺なら作れるかもしれないが、蒸留水に癒しの魔法ヒールを付与すれば出来るかもしれない?


 だけど流石にそれだと、作れる人が限られてしまって普及出来ない。


 出来るなら現状の錬金術師でも作れる物の方が普及しやすい。アイテムバックのような、なくても今現在問題になっていない一種の贅沢品ではなく、人の命に関係するものだから、多くの人に普及させたいので蒸留水で試す。


 蒸留水を作る器具はもうあるので、早速作って初級ポーションを蒸留水で作ってみる。


 結果は見事的中、出来上がったポーションを鑑定で確認すると、そこには20%の能力向上と出ていた。


「成功だ! やったね」

「第一段階は成功 次は」


 これで終わりではないのだ、実はもう一つの方法も考えている、これも小説からの拝借もの。


 魔石を使う方法である、小説では魔石をそのまま使っていたが、俺は魔石を砕き、すり潰して粉にして使ってみることにする。


 これまた見事成功、錬成板の上のビーカーには蒸留水を使った物より更にキレイな青色の液体が出来ていて、鑑定で確認すると50%向上と出ていた。


「俺って天才!」


 嫌々違うから、これ言ってみれば盗作だから、自重しろ俺……


 この結果からすると中級や上級でも%は解らないが、向上することは間違いないだろうと予測できた。


 後はこれをどうするか?どう普及させるかだよね。









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