第222話 やっと海の調査
「サラ、その事は今は止めておきましょう。それについてはラロックに帰ってから、じっくり時間を掛けて話し合いましょう。ですからその眼鏡についても今は秘密という事に……」
「そうですね。今は調査に集中しましょう」
良かった~~ 水着の件から話がそれて、これでやっと本格的に調査が出来そうだ。
「ユウマさん、海岸では気に成りませんでしたけど、海の中だと同じ砂の中にキラキラ光る物があるんですが、あれは何でしょう?」
調査がやっとできると安心したとたん、サラがまた質問を投げかけてきた。
「確かにキラキラしていますね。普通の砂とは違うようです」
「私の鑑定眼鏡では魔石と出るんですが、故障でしょうか?」
魔石? 俺も鑑定してみよう。
魔石(魔魚)
魔魚の死骸などから、採れる魔石が長年海流によって流されるうちに削られ小さくなった物。中には上位の魔魚に捕食された後、魔素を吸収された残りが排出された物もある。
成る程、寿命で死んだりした魔魚の魔石と捕食されて魔素が空に成っている魔石があるという事だな。
「サラ、あれは魔石で間違いないですよ。多分外洋の魔魚の魔石ですから元々は大きいのでしょうが、それが長い年月で削られて小さくなったものです」
「それって、それを集めて合成すれば大きな魔石が作れるという事ですよね」
「その通りです。ですが魔力は殆どないので、ほぼ空の魔石ですけどね」
それでも資源であることは確かなんだよね。普通に大きな魔石を作ろとすればそれなりに強く大型の魔物を討伐しないと手に入らないけど、この魔石を使えば正直物凄く大きな魔石でも簡単に作れる。
それ以外にもこの砂を混ぜて壁を作れば付与が簡単に出来るかも知れない。俺が家を建てた時に使った硬化魔法は付与ではない魔法なので魔力を多く使うけど、魔石の混ざったモルタルもどきなら付与魔法として硬化出来て、消費魔力も少なくて済むかもしれない?
まぁ海の砂だから塩分を落とす必要はあるだろうが、それはまた別に考えれば良い。
これが本格的に利用できると証明されたら、海に面している国は大儲けが出来るな。ただ沿岸の海岸にどの程度魔石があるかにもよるけどな。他にも輸送コストも考えないといけないからそこまでではないか? 自国で使う分には有利だろうが……。
「少し採取して調べてみましょうか」
俺はインベントリから以前使っていた桶を取り出して、魔法で穴をあけってロープを付けて海に投げ込んで砂を採取した。
「サラ、今練習している錬成陣での鉱物の分離を使って魔石だけ分離してみてください」
サラの錬成陣での分離も上達していますから、完ぺきではないですがそこそこは分離できます。
「分離したら、鑑定眼鏡で鑑定してみてください。そうしたらどの程度分離出来ているか分かるはずです。それを繰り返せば魔石だけに分離出来るはずです」
桶一杯分の砂から、どのくらいだろう? 比率でいうと100分の一ぐらいかな?
「合成してみればどのくらいの比率で魔石が混ざっているか、もっと分かりやすいと思うのでやってみましょう」
結果はウルフぐらいの魔石の大きさになった。その後も場所を変えながら採取しては分離、合成を繰り返したが、出来る魔石はほぼ同じ大きさ。でも魔石の残留魔力というかその違いで、出来た魔石に魔力のある物もあった。
以前の研究で魔素にも性質があるんじゃないかと仮定で来ていたから、俺の鑑定EXで調べたら、やはりこの魔石には水の魔素が多く含まれていた。
「サラ、この空の魔石に魔力を入れてみてください」
「普通に入れるだけでいいんですか?」
サラが魔力を入れた空だった魔石を鑑定したら、やはり俺の予測が当たっていて、水の魔素が多く吸収されていた。
「ユウマさん、この魔石に魔力入れるのいつもより時間が掛かったようでしたが何故ですか?」
俺の鑑定は高性能だが、見たい調べたいというイメージが無いと解析に近い鑑定はしない。いつもそんなに高性能だと物凄い量の情報が羅列されて頭が痛くなる。
魔素に性質があるというのは仮定だったが、これで証明されたと言っても良い。それに魔石にも性質があるという事も解った。
水の中でしか生息しない魚の魔石だから水の性質の魔石に成るという事だ。陸上の魔物の場合も魔石の性質を調べれば、特徴のある魔石も見つかるはず。
あれ? これってもしかするとまた大発見かも?
サラは風魔法は使えるから、サラの魔力には風の性質の魔素があると仮定すると、今回水の魔素も補給出来たという事はサラは水魔法も使える可能性があるという事では無いか?
嫌々、まてまて、そうすると以前の魔石魔道具の時に魔力を誰でも補給出来ていたという事は世界中の人全てが全属性使えるという事に成る。
あ~~ 使えて当然か! 生活魔法が使えるんだから……。
「ユウマさん、そろそろいいですか。結論は誰でも全属性の属性魔法が使えるかもで良いでしょうか?」
「あれ? また口に出していました?」
「はい、思いっきり興奮して」
ダメだ~~~ この癖というか、この勝手に独り言のように口走るのは絶対にやめなければ、今後とんでもない事に成る。
「ユウマさん、その癖は簡単には治りそうもないので、これからは二人きりじゃない時以外は始めそうになったら、私が止めてあげます。ですが自分でも気を付ける努力はしてください」
「はい、面目ないですが、よろしくお願いします」
「はい、任されました」
サラはそう言ってにっこりとほほ笑んだ……。
「サラ、これは大発見です! 魔石にも性質があるという事と人の魔力にも性質があると仮定できます。人の魔力に性質があるからこそ属性魔法を複数使える人が少ないんです」
「それって逆に言えば生まれつきの属性持ちは他の属性に適性が少ないという事ですか?」
「その可能性が高いです。実際サラは風と水には適性があると思いますよ。まだ他を試していないから何とも言えませんが……。人は全属性の魔素を持っているけど、その量に差があるという事だと思います」
呼吸と共に吸収する魔素も個人によって吸収する魔素の属性比率が違うんじゃないだろうか?
「そうだとしたら、それを応用したら、個人の適性属性が分かるという事じゃないですか?」
「そうなりますね……」
「どうしたんです? 急に黙り込んで?」
「これ公開して良いと思います?」
「確かに悩みますね。ん~~~」
物凄い発見ではあるけど、これこそ世界がひっくり返る内容だから、慎重に対応しないととんでもない事に成る。
結婚式の日に全て暴露して全てを国に委ねるという方法もありなんだよな。そしてサラとエリーの三人で魔境の第二拠点に籠るという方法もある。
まだ完成はしていないけど、どうするか決めてからでも今の俺ならそう時間は掛けずに完成できると思う。
「ユウマさん、フランクさん達には報告しましょう。まだ仮定の部分もあるんですから、皆さんで研究した方が早いし、恐らく物凄くやる気に成ると思いますよ」
属性魔法ってやっぱりこの世界では使える人が少ないから、多かれ少なかれ羨ましいと思っている人は多い。
それが誰でも使える可能性があると証明されれば、やる気も出るよな。サラが風魔法を練習する段階でもまだ本当に仮定の段階だったし、出来るという確証はなかった。
サラはレベリングもしてるから魔力量も一般人からしたら多い方だけど、冒険者などから見れば普通。それなのに属性魔法が使えるようになった。
始めた頃そよ風でも出来た時に気づくべきだった。そよ風=適正ありという事だったんだよ。
フランク達に話すのは俺も納得したが、その時にまた
「あ? どうしよう……」
「はい、はい、また何か思いついたんですね。この際ですから全部やってみましょう」
「そうだよね! じゃやってみる」
俺が思いついたのは錬成陣による魔石の属性変化。陸上の普通の魔物の魔石を水属性に変化出来ないかという事。もしそれに成功して、その魔石が水関係や冷蔵庫の魔石に使ったら効率が良くなるかもしれない。
「サラ、この魔石を鑑定してみて、あ~ そうそうこっちの眼鏡に変えてね。今度のは魔力を結構使うから気を付けて」
今度渡した鑑定眼鏡はフランク並みに鑑定出来る物だから、魔力をかなり使う。
「え! この魔石水属性の魔石と出ていますよ。それもホーンラビットの……」
「それなら成功ですね。元々は属性表記の出ないホーンラビットの魔石を水属性の魔石に変えたんです。錬成陣で」
「なんでそんな事思いついたんです。錬成陣って分離、合成、抽出のようなことしか出来なかったと思うんですが?」
「これも夢の中の話なんですが、錬金術って等価交換という言葉を思い出したんですよ。それなら魔力量を変えずに魔素の性質だけ交換出来たら魔石の性質も変わるかな? と思ったんです」
「それって、入れ替えという事ですよね。それなら例えばですけど、野菜の品種改良とかにも使える可能性があるという事ですよね」
「まぁそれはやってみないと分かりませんが、可能性は0ではないですね」
やっぱりこうしてみると、一人で何でもやるより発想が色々増えて研究が進むな……。
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