第221話 何時に成ったら……

 今日は昨日の夜決めた組み分けで調査することになったのだが、俺としては朝からいろいろ問い詰められるのを覚悟していたのに全くそんな事もなく、朝食を済ませたら、さっさとみんな出かけて行った……。


「サラ、どういうことだと思う?」


「何がですか?」


「なんていうか昨日の俺の話って自分でいうのもなんだけど、かなり凄い事だと思うんだよね。それなのに俺に対して突っ込みが殆どなかったでしょ。昨日はまぁ興奮していたから俺に対してそう思わなかったかもしれないけど、流石に今朝のあの無関心さは逆に俺としてはショックなんだよね」


「多分、皆さんユウマさんの異常さに慣れてしまっているからではないでしょうか? ユウマさんならで納得してるというかそんな感じでは?」


「でもいつも報告しろとうるさく言ってくるよ」


「それは、内容ではなく事後処理が大変だから前もって知っておきたいという事だけじゃないですかね?」


 確かに今までも色々とやらかして来たけど、内容について責められたことは殆どないな。それについての追及もされていない。初めのうちは多少の追及はあった記憶があるけど、最近は殆どないな。


 俺ってもうある意味人外認定されているの?


 まぁ横でさも普通の事のように受け答えしてるサラもどうかと思うけどね……。


 鑑定についてや夢の話など全部話したわけじゃないからこの程度なのかもしれないけどね。昨日の話でも鑑定の検索機能までは話してないし、数値化の事も言っていない。鑑定で魔方陣が見えるという事だけだから、この程度で済んでるのかな?


 創造神の加護の話や創造魔法の話までしたら流石にひかれるだろうな。経験値100倍なんてとんでもない事だからな。


「サラ、今日の俺達は海の調査をするんだけど、どうやったらいいと思う?」


「え! いきなりですね。ん~~~ 海の中を調べる……」


 昨日の夜、皆が寝静まった頃、俺は海の中の調査をどうするか考えていた。取りあえず準備はしてきているから、その他にという事だけどね。


 南国だから今の季節でも泳ぐことは出来そうな気温だけど、それでは普通過ぎて面白くない。魔法のある世界で将来は大賢者を名乗ろうかという俺がそれでは伝説にもならない。それは冗談で大賢者にも伝説にもなる気はないんだけど、泳ぐには水着も用意していないからね。


 流石に水着は前もっては準備できなかった。この世界に水着なんていう物は存在しないのだから、特注で頼むにしても女性用なんて恥ずかしくて出来ない。


 サラの水着姿を見たかったけど、それはまた今度という事にして、今回はそれ以外の方法で海の中を調査する。


 島付近は浅瀬で100m位先から急激に深くなっているようなので、そこまでは普通に事前に準備していた、小型のボートで調べられる。俺が海の調査を選択したのもこれが理由。まして調査しやすいように船底にはスライムグラスを付けているので、一種のグラスボートに成っている。


 そしてもう一つの秘密兵器が以前スキルの付与を試した時に世の中に出せないと言っていた、鑑定を付与した魔石からヒントを得て、創造魔法でフランクより精度の落ちる鑑定魔法を作って、度の入っていない眼鏡と魔石を合成させて、それに付与した。


 スキルの付与だと俺基準に成ってしまうけど、魔法ならイメージで作れる。俺の創造魔法ならスキルではない鑑定魔法も作れるという事。これに気づいた時の落胆は相当なものでしたよ。


 ただね、これも結構めんどくさいの。鑑定魔法にランクを付けてその度そのイメージが一致するように何度も練習して固定化しないと、魔法の度にランクが違ってしまうのよ。出来た魔法は名前だけが分かる鑑定E、名前と説明が分かる鑑定D、鑑定D+人物鑑定で職業まで分かる鑑定C、C+スキルと魔法まで分る鑑定B、フランク並みに称号まで見える鑑定A。


 その上の鑑定魔法は作るのを止めている。だってスキルの鑑定がどう進化するか分かっていないからね。フランクの鑑定が次何処まで見えるように成るかを知ってから、作った方が追及され難い。


 この鑑定眼鏡にも欠点はあるのです。高性能になれば成る程使う時に魔力量が増えるという欠点がある。だからいくら高性能の鑑定眼鏡を持っていても、自分の魔力量が少ないと一度の鑑定で魔力枯渇でぶっ倒れる。


 ここがスキルとしての鑑定と魔法としての鑑定の違い。元々スキルはそういう面では優遇されている。魔力消費が殆どないか少ないから。


 いや? そうでもないか? 鑑定のスキルは習熟度が上がって見えるものも増えるが、同時に消費魔力も減っているのか……。


 優遇と言えばそうなんだろうが、努力の上に成り立つ優遇? 属性魔法もそうだな習熟度が上がれば同じ魔法でも消費魔力が減る。これも結局は努力したからの結果か……。


「ユウマさん、そろそろ戻ってきてください。また殆ど口に出ていましたよ」


「え! また……。 どのあたりからでしょうか?」


「私に海の中を調べる方法を聞いた後からですね。 水着って何です? 女性用だから恥ずかしいとも言っていましたが」


 サラの冷たい視線の冷静さからすると、創造神の加護とかの話は口にしていないという事だろうが、水着について説明するのはちょっと難しいな。この世界の女性が肌を出すという事は異世界あるあるの貴族女性ではありえない行為。それを勝手にさせようとしていたことだから、冷たい視線が来ているのだろう。どう釈明しよう……。


「あのですね水着というのは夢の中に出てきた泳ぐための衣装の事です」


「夢の世界のですか、それでどんなものなんです?」


 ここは無難にワンピースタイプの水着を説明しよう。出来ればフリルなんかが付いたタイプとかパレオ付きのタイプの説明だけにしておこう。間違ってもセパレートタイプのビキニなんて口が裂けても言えない。


 そう言えば、俺が死ぬ前あたりには全身をカバーしてる水着も出ていたな。


 最終的に、少し露出のある水に強い素材で伸縮性のある布で出来ている衣装だと説明した。


「へ~~ そうなんですね。今度作って貰ってください。ユウマさんが一人で行くのが嫌なら私もついて行きますから」


 わぁ~ これは拙い。何か物凄く誤解されているようだ。俺にやましい心はないんですよ。いや、サラの水着姿を見たいとは言ったような……。


 それから、夢の世界では普通にあった物だという事を、ビキニを除いて絵に描いて細かく説明した。水着の話なんて必要ないと思って夢の本にも書いていなかったのが今回の誤解を生んだ。


 普通に競泳の話や水難事故の話を書いておけば水着にここまで関心を持たれなかっただろう。しょうがないよね、水着=グラビアなんていうのもあったから、俺が気持ち的に省いてしまったから。


 でもこの世界には普通に娼館はあるんだから、そこまで気にする必要は無かったのかな?


 これは拙い、調査を始める前からこんなことで躓いていてはいけない。変に自慢したくて前振りをしたのが藪蛇に成ってしまった。


「それじゃ、このボートに乗って調査しましょう。この眼鏡も掛けてくださいね。使い方はもう聞いちゃっていますよね……」


 それから暫く、俺はボートを漕ぐことに集中していたが、その間サラは無言だったからまだ気にしてるのかと心配になったが、よく見ると当の本人は鑑定眼鏡の性能に驚き、その面白さに夢中になっていただけだった。


 俺としては頑張って作った物だから、喜んで使ってくれてるのは嬉しいのだが、余計な見栄を張った事で、その喜びも半減してしまった。


 俺がそう思って少し落ち込んでいる時に、サラから物凄い質問がいきなり飛んできた。


「ユウマさん、スキルも魔法も後天的に発現する可能性はあるんでしたよね。それならこの鑑定眼鏡を使い続ければ鑑定のスキルが発現しませんか?」


 な! 何という事に気が付く。絶対とは言えないが可能性はサラが言うようにある。


 勿論、適正もあると思うから可能性的にはそう高くないと思うけど……。


 どうしよう、これじゃ全然海の調査が進まないよ。


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