第220話 島での会議?

 飛行船を係留している海岸まで戻って来たので、今日の報告と反省会を兼ねて食事をしながら会議をした。


「この島は宝の山ですね。まだ研究もしていませんが、結果は想像できます。正直公表は出来ないことは確かです。皆さんはどう思いますか?」


「先ずは研究が先ですが、飛行船を公開した後が問題じゃないでしょうかね」


 飛行船は極一部の人にしか公開しないけど、それでもこの島の事は言うべきじゃないだろうな。


「この島は秘密にするべきだと思いますよ。それに出来るだけ人の手を入れるべきじゃないと思います」


 俺もそうだとも思う。ただここの資源は惜しいし、それだけじゃなく何故この状態が保てているのかも調査したい。人が立ち入らないというのなら魔境の森もそうなのに、森では高品質の薬草は存在しても原種は無かった。


 薬草には花を咲かせるものもあればそうでは無い物もある。花を咲かせるものなら自然交雑というのも考えられるが、花を咲かせない物はどうして原種ではなくなったのか?


「ユウマ、先ずは今回持ち帰るもので研究をした後、もう一度検討した方が良くないか。どうせここに現状来れるのは俺達しかいないんだから、焦ることはないと思うぞ」


 確かにそうなんだよな。ただやはりここの事は秘密にするという事だけは決めておきたい。結婚式である程度公開するけど此処は別に考えるべきだ。


「この先どうするかは今後の研究次第ですが、どちらにしてもこの島の事は秘密にしましょう。それとあまり時間は掛けられませんが、この周辺も調査して他に島が無いかも調べたいですね」


「それなら、周辺を調べる組とこの島を調べる組に分けたらどうでしょう?」


 そうだな。この先頻繁に此処に来ることも出来ないだろうから、この際もう少し調査したいのが本音だ、それに別に島が無いかも調べるべきだとも思っている。


「それじゃ、明日からは三組に分かれて調査しましょう。1組は俺とサラ、2組はフランクさん、ミランダさん、エマさん、3組はロイスさんとローズさん。フランクさん達には引き続き島の内部の調査をお願いします。ロイスさん達は飛行船で周辺の調査をお願いいします。俺達はこの島の周辺の海を調べます」


「ロイス達は毎日戻って来るのか? それだとそんなに遠くまでは調査できないだろう」


 鋭いなフランクは、どうせ公開する予定だったから、ここでお披露目しておくか。


「ロイスさん達はこの鞄を持って行ってもらいます。これはマジックバックです。中に3日分の食料と水を入れておきますからそれで飛行し続けられるでしょう。ただ周りに目標に出来るものが無いので、ここに帰る為の方法を今から覚えて貰います」


「ちょ! ちょっと待て、何サラっと流そうとしてる。マジックバッグだと! そんなもの何時手に入れた? まさかとは思うがお前が作ったとか言わないだろうな」


「そのまさかです。俺が作りました」


「またお前はとんでもない物を……」


 フランクはそこまで言うと頭を抱えて黙ってしまった。その代わり今度は付与に興味が強いエマが食いついて来た。


「ユウマさん! それって付与したという事ですよね。どうやったら出来るんです! 私にも出来るんですか! 教えてください!……」


 エマの勢いが止まらない。サラが間に入って止めに入るぐらいの勢いで俺に迫って来た。


「このバックの仕組みは付与魔法ではありません。魔法陣魔法と魔石です」


 当初作ったマジックバッグは魔石に付与した物でしたが、それだと魔力効率が非常に悪い物でしたが、色々とダンジョンから発見される物の情報を調べるとそこまで魔力効率が悪くないことが分かったので、作り方が間違っていることに気づきました。


 そこで前回、魔石にスキルを付与するという方法を取ったのですが、これはスキルの保持者が俺という事で世の中に出せないような物しか作れなかったから、それでは意味が無いと思い。それから時間を見つけては研究していたのが魔法陣魔法でのバック作り。


 俺のはインベントリであって、アイテムボックスではないので、先ずはアイテムボックスの魔法を創造魔法で作り、その魔法陣とインベントリの魔法陣を比較検証して行って、魔法文字の研究を進めたのです。


 勿論、アイテムボックスの魔法をそのまま魔法陣にしても良かったのですが、それだと高性能過ぎる物しか作れないので、それを市場に出すのはどうかと思ったから、性能を落とすために魔法文字の研究をしました。


 勿論、俺なら創造魔法でタイプの違うアイテムボックスの魔法は作れますが、それでは意味がない。魔法文字を解読することで誰でも作れるようになるというのが目標ですから。


 実際俺が創造魔法で魔法を作った時も物凄い魔力が必要でしたから、普通の人ではイメージだけで魔法を付与するのは不可能だと思う。


 まして俺のように魔法を魔法陣としてみることも出来ませんから、見える人が現れない限り作ることは不可能です。


 魔法陣として物を残して行けばこの先魔法文字の研究をする人が現れればどんどん色んなものが作られるようになるでしょう。


 イメージとしての魔法、魔法文字としての魔法、両方から研究が進めばこの世界はもっと変わる。前世でいうSFの世界のように……。


「エマさん、魔法付与には限界があります。それは付与する本人の魔力量も一つですが、付与する魔石にも条件があります。高度な魔法を付与するには物凄く多くの魔力が必要ですし、その魔力に耐えられる魔石も必要になるという事です」


「付与には限界がある……」


「そう落ち込まないでください。付与魔法には付与魔法にしかできないこともあるんですよ。例えばエマさんが作った結界の魔法が付与されたアクセサリーなんかが良い例です。結界の魔法を魔法陣にするとそこそこ大きなものに成ります。それを魔石に刻むのは難しいし、魔法陣をそのままアクセサリーには出来ないでしょ」


 ようは使い方が違うという事なんだよね。何でもかんでも付与だけでとはいかないし、そのまた逆に魔法陣だけでは出来ないこともあるという事。


 魔法文字を研究して欲しいというのが、エマさんに伝われば良いな。魔法文字には物凄い可能性があるんだよね。これは誰にも言っていないけど、ポーションなどの魔法薬の改良にも役に立ちそうなんだよね。


 しょうがないここまで披露したんだから良い機会だ此処にいる人だけには話して良いだろう。


「今から話すことは皆さんにも聞いて欲しい事です。この事はまだ公開するつもりはありませんが皆さんは知っておくべきことなのでお話しします」


 そこから魔法陣や付与魔法について話して行った。


 ポーションって魔法薬だから結局は魔法と同じで、効果が出る時には魔法陣が出ているんですよ。病院が出来て色んな手術をするうちに偶然ポーションを使う時に鑑定を使う事があった時にそれに気づきました。


 それでちょっと、HP、MP、毒消しのポーションの魔法陣を比較してみたら色々と分かってきたんです。時間が無くて多くは出来ませんでしたけど、それぞれのポーションに少量ですが薬として使われている薬草を入れてみたらポーションの効果は落ちるが、その薬の薬効は良くなるという事が分かりました。


 その結果から、現在存在しないポーションが作れるという事が証明されたんです。例えば、胃薬は一度飲んだぐらいでは完治しませんが、ポーションに胃薬に使う薬草を混ぜると一度で完治するという事です。但し高額にはなりますけど……。


 他にも色んな薬を混ぜてポーションの魔法陣を比較したら魔法文字の意味が色々と分かってきました。でも中にはポーションではなくなる物もあったので万能という事でもないという事ですね。


 そこでもう一つ気づくんです。病気に対する魔法陣が出来るという事は治癒魔法でも病気は治せるという事に……。


 全てを話し終えた時、今度はフランクが目をぎらつかせながら俺に詰め寄って来た。


「それは俺の鑑定ももっと高度になるという事だな! そうなんだな!」


「そうですよ。スキルも魔法も習熟度が上がればやれることが増えるという事です。それは皆さんも知っているはずなんですが、気にしていないからそれに気づかないんですよ。ミランダさん達が一番分かるはずです」


「それって、魔力量とは関係ないという事ですよね」


 まだ気づかないか?


「スキルが無い時でもポーションは作れたでしょ。成功率は低くても。それがスキルを持ったらどうなりました? 失敗が減り、最終的には失敗しなくなったはずです。その時魔力量なんて微々たるものしか増えていなかったと思いますよ。それがスキルの習熟度の補正です」


「錬金術では補正だが俺の鑑定のようなものは確かに見える項目が徐々に増えていった」


「そう言われたら、最近は一つの化粧水を作る時の魔力量が減ったかも?」


「そういう事です。やれることが増えるスキルや補正力が上がったり使用する魔力量減ったりと色々と違ってくるんです。魔法も同じですよ使えば使う程消費魔力量は減って行きます」


 何故か? 俺の特殊な鑑定には興味を持たれることもなく、それぞれのスキルや魔法についての話で盛り上がり、その夜は更けていった……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る