第90話 王様がやって来た

 魔道具や魔法の研究は継続しながらも、学校が中心の生活は続いている。


 文明レベル0~1レベルを基本にあまり0~2レベルとかいう物は出さないを前提にすると、魔法陣はまだ早いと言う事で、当分は今の形の魔道具を販売できるように進めようと思う。


 魔石の利用法が出来れば、冒険者は潤うからまた経済が活発化するだろう。


 いずれ今の形の魔道具が世の中に行き渡れば魔石が売れなくなる時期が来る。そうなった時に魔法陣の魔道具を売りだせばまた売れるようになる。


 これ位のペースでの進化なら魔法文字を研究して隷属魔法が作られるまでには相当な年月が掛かるから、それまでに社会も成熟すだろう。隷属魔法何て必要ないぐらい。


 日々忙しく過ごしていたら、いつの間にか、もう直ぐ学校の二期生が卒業する日が近づいている。


 今年も全員スキルの発現は出来た。それに去年の実績があるので、就職の心配はしなくて良いほど求人が来たし、独立する人もいるからこちらは何もしなくて良かった。


 次の学生からは多分応募が減るだろうが、それはそれで良いと思っている。その分自分の時間が出来るだけだから、それに元々学校で儲けようとは思っていないのだから問題ない。


 次は無理だろうが魔法科と魔道具科も作る必要があると考えている。


 魔道具科は付与術科とも言えるからこの科は未経験者と錬金術のスキル持ちとで別にする必要がある。

 未経験者は2年制、スキル持ちは1年制にした方が良いと思う。スキル持ちが1年で付与術を確実に習得できるか検証する必要もあるし、適性が高いだけで出来ない人がいる可能性もあるから4期生からかな。


 もう一つ身体強化をどうするかもまだ決まっていない。これも良く考えたら検証の必要があった。たまたま5人は時間の差はあったが全員習得できたけど、もしかしたら出来ない人がいるかもしれない。


 だから適性があるのかないのか検証する必要がある。


 無魔法は誰にでも出来るが、条件や適性があると考える方が辻褄があう。


 そんな感じで日々を暮らしていたら、グランが学校の俺の部屋に飛び込んできた。


「ユ! ユウマ君、 た! た! 大変だ!」


 尋常じゃないグランの慌てぶりに驚いて反応出来ないでいたら


「お! お! 王様来る」


「は? 王様?」


 ちょ、ちょっと待ってくれ、王様? 此処に王様が来るというのか?


「王様が何をしに此処に来るんですか?」


「それは……」


 少し落ち着いたグランが言うには、辺境伯領の発展が著しい事と数々の発明とも言える物がラロックから発信されている事、学校という新しい技術継承、最後に温泉まであるということで、療養も兼ねて視察に来ると言う事らしい。


「それで、何時来るんです?」


「それが来週なんだ」


 来週か、泊まる所は拠点で良いだろう。それでももう少し手は加えたいな。

 ベットをウォーターベットならぬ、スライムクッションベットにして、枕も硬さを変えたスライムクッションを使って、掛布団はコカトリスの羽の羽毛布団にするか。


 魔道具は今の形で販売をすることを決めたから、宣伝の意味を込めて使って貰おう。

 カルロスには文句を言われそうだけどしょうがない。

 あれ程未完成だと言って拒否したからな……


 次は料理だな、酒はまぁ好みもあるから、ウイスキーやブランデーとワインでも出して置けばいいか。炭酸水もあるしそれで良いか。

 エールは冷やして出したいけど、冷やす魔道具は出せないから無理だな。


 食事はケインに頼めば、それだけでも目新しいだろう。流石に味噌や醤油は出せない。


 ローム糖はどうするかな? 種はもう準備できてるから何時でもOKなんだよね。王様が来るんだ、国際問題に成りそうな事だから、この際王様に丸投げするか?


 それなら少しケインと調整しないとな、砂糖なんて使った料理知らないだろうから。

 しかし俺も良く知らないな、醤油や味噌と砂糖を合わせる料理なら知ってるけど、しょうがない海外の料理を思い出してみるか、それでも北欧料理ぐらいしか知らないな。


 それ以外だとあまり砂糖使った料理って海外に無いんだよな。

 味噌や醤油文化のある日本や中国は多いんだけど……


 いっそのこと料理は諦めてデザートに絞るか、それならスライムパウダーもあるからパンケーキにジャムでもいいな。


 温泉銭湯はまぁあのままで良いだろう、貸し切りにすれば十分だ。

 露天風呂も良いけど今回は時間も無いからパス。、今度自分の為には作ろう。


 怒涛の1週間が過ぎて、いよいよ王様がやって来る。


 当然俺は森の拠点に引っ込む、対外交渉はグラン一家にお任せ、色々想定して対応策は準備したから、余程の事が無い限り大丈夫だろう。


 王様の一行が確認できたと西門より連絡が来た。


 グラン達は拠点で整列して待機している。王様到着後のスケジュールは前もってビクターと打ち合わせいる。


 先ずは、長旅の疲れを癒して貰う為、拠点で休憩後温泉銭湯に入って貰う。

 王様滞在中は温泉銭湯は一般開放せず、王様の貸し切りとしてる。

 流石にこれに文句を言う町民はいないだろう。まして王様と風呂に入れる猛者も当然いない。


 その後夕食という晩餐が開かれることに成っている。

 視察は明日からの予定、滞在は3日を予定してるけど、延長の可能性も考えて7日は滞在されても大丈夫な準備はしてる。


 ビクターの馬車を先頭に全部で馬車が5台、全部改良型の馬車だ。

 騎馬の護衛が30人、王様の護衛としては少ない方だろう、普通なら最低でも50人以上のはず。多い時は100人規模だ。


 馬車が到着して、一番にビクターが降りて来た。


「グラン、この度は宜しく頼む。予定通り進めれば問題からな」


 幾ら大きな商会の元店主だとしても、王様が相手では緊張の度合いが違う。


「はい、心得ております。このグラン誠心誠意務めさせていただきます」


 ビクターと話していると、後ろから護衛を伴って王が近づいてきた。

 全員、膝をついて頭を下げた。


「そちがグランか大儀である。数日世話になるぞ」


 グランは頭を下げたまま


「ははぁ~ 誠心誠意歓迎させて頂きます。御ゆるりと御寛ぎ下さい」


 王の滞在が始まった。何もなければ良いが……









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