第89話 魔道具
領都から帰って早速無魔法について研究することにした。
メンバーは三人衆とフランク、ロイスの5人。
三人衆は今の所、属性魔法が使えないと言う事に成っていて、魔法を良く使ってると言う事が選抜理由。
フランクは属性魔法は使えないが、魔法を少し使っている事が理由。ロイスは属性は勿論で、魔法を殆ど使っていない事が理由。
生活魔法は全員使えるからこれは選抜理由から排除。
「集まって貰ってありがとう。とても重要な事なので研究に付き合ってください」
集める時に大体の事は言ってあるけど一応挨拶はしておく。
先ずは身体強化をやって貰う、魔力を体内で循環させて筋肉、骨、表皮を強くするイメージをして貰う。
循環させる魔力に魔法を発動する感じかな? あれ? これも一種の付与?
そう考えると結界も空気に魔法を付与してるのか? 空間をバックなどに付与?
空という属性はない。まだ試していないけど転移が出来れば空はある事に成る。でも転移が出来なければ、空は無くてアイテムバックを作る時に付与してる空間は無と言う事に成るのか?
あ! そうすると某ネコ型ロボットのどこでも〇〇のようにドアに魔石を取り付けて、その魔石に、ここへ行きたいというイメージを付与したら行けるのか?
空間は付与できるんだから、理論上は可能だよな。
空間魔法の転移は出来ないけど、物に付与した無属性の空間転移は出来るかも?
出来るとしても毎回行きたい場所を付与するのは無理だよな。付与した物なら別の人でも使えるけど、それだと行き先が固定される。
それに空間を付与するには習熟度も高くないといけないし、魔力もかなり必要。
これは俄然試してみたくなった。これは時間を作ってやってみよう。
イメージを付与したものが魔道具。このイメージを文字にしたのが魔法陣。そうか魔法陣自体が魔道具と同じなんだ。
魔石は魔力があるからそれ自体で発動するけど、魔法陣には魔力が無いから、外から入れてやると言う事か。そうすると難しいだろうが魔石に魔法陣を書くか刻めれば、付与しなくても魔道具になる?
身体強化について教えようとしただけなのに、凄い事に気づいてしまった。
あ! やべ! また皆をほったらかして、思考の渦に……
「どう? 何か変わった? 解りにくいと思うから何か変わったと思ったら、その場でちょっとだけ飛び跳ねてみて、絶対思いっきりとか飛んじゃ駄目だからね」
誰も出来ないか、イメージが悪いのか? 強くするよりもっと具体的にか?
俺はどうやってる? 俺は筋肉とか骨とかを強くするイメージの他に強化した結果どんな事が出来るかをイメージしてるような気がするな。
俺は前世で読んだラノベや漫画に出てくる身体強化の魔法をイメージしてるのか?
あれ? それってミランダ達が付与術を成功した時にやったイメージの補完と同じで俺が身体強化でやれることをみんなに見せて、強くしたらこんな事が出来るというイメージでやったらどうだろう?
「ちょっと試してもらいたいことがあるから外に行こうか」
皆を外に連れ出して、今からやることを説明してそのイメージをよく覚えて、身体強化の魔法を使ってみてと伝えた。
飛び跳ねて3mぐらい飛んだり、早く走ったり、小石を握りつぶしたり、素手で岩を殴ったり、など色々やって見せた。
皆ちょっと引いていた、日頃は殆ど魔法で魔物を倒すから俺が身体強化を使ってるとこ見たことないもんね。
「それじゃ、今のを参考に筋肉、骨、表皮を強く頑丈にしたらどうい事が出来るのかを具体的にイメージして、もう一度身体強化の魔法をやってみて、その時体内の魔力の循環は忘れないでね」
1日目は誰も出来なかった。2日目も駄目、そして3日目、ローズが発動させた。
この子本当に天才だな。錬金術も3年という異例の早さだし、付与術も一番だった、そして今回も。
「ヒャホー 凄い凄い!」
天才なんだが、ボキャブラリは少ないのね……
3日目はローズのみ。4日目にミランダとエマ6日目にフランク、ロイスは何と12日掛かった。
それでも全員使えるようになったから無魔法は全員使えるという仮説は一歩前進した。
次は結界だな、今回はフランクとロイスがいるから魔石への付与ではなく、自分の周りに四角い膜があるという結界を試してもらおう。
果たしてこれは出来るかな? 無魔法は全員出来るという仮説はあるけど、空間を付与するという無魔法はどう考えても全員は出来ないと思う。魔力の量とか習熟度以前の問題で出来ないような気がする。
この結界もそんな気がするんだ。魔力の量は勿論だが、適性のような物があるような……
イメージの仕方や実際に俺が結界を作って触らせて膜があると認識させたりしたけど出来たのはエマだけだった。
今回、ローズの天才ぶりも発揮されなかった事から無魔法には魔法の種類によって適性がある可能性が濃くなった。
無魔法自体種類がまだ多くは無いのでまだ確定は出来ない。
無魔法についてどんなものがあるか考えてはいる。例えばサイコキネシス、念動力のように手を使わず魔力の手のような物で物を動かすというもの。
今回はこんなもんか。これからも研究は手伝って貰うけど、一応これで区切りにしよう。
身体強化を広めるかどうかという問題も出来たことだしね。またグランが頭抱えそう。
魔道具の問題もあるな。このまま魔法陣を公開しないなら今の魔石に付与する魔道具でいいだろうが、これだと二つの魔法を発動させる魔道具は基本作れない。
生活魔法は複合ができない。属性魔法を2つ使える人が付与も出来れば作れるだろうがこれも難しいだろう。そもそも複合できるかの問題がある。
魔道具のエアコンとかドライヤーを作るには風と火じゃない。風と熱だ熱何ていう魔法は無い。以前、風と火でドライヤーもどきは作ってるけど、安全じゃないんだよな。
熱が出来るのは魔法陣の魔法文字だけ。魔道具をより多く作るには魔法陣は必要、ただ魔法陣を研究すると隷属魔法も作れると思うから躊躇うな。
魔法文字を教えないで魔法陣だけを教えるという方法もあるけど、これだと進化しないだろうし、これもやっぱり前世のダイナマイトの問題に似てるな。
便利にする為に作った物が人を不幸にすこともある。まぁ所詮道具は使う人によって善にも悪にもなるというのは何でも変わらないんだけど……
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