第91話 波乱の予感
王様の世話役の侍女に、王様の泊まる部屋を案内したが早速、魔道具でひと悶着あった。
王家や貴族ならダンジョンからでる魔道具を所持しているが、庶民の運営するこんな場所に仕様は違うが魔道具が無造作に置かれていれば騒がれる。
すぐさまフランクが対応、未完成ですがこの仕様であれば販売も可能に成ったので。近々発売されると説明して、何とか引いて貰った。
その頃、休憩所でもひと騒ぎ起きていた。王様や護衛騎士に喉を潤して貰う為にハーブティーを出したのだが、そのお茶うけに、疲労に良い糖分もということで、ローム糖で作ったべっこう飴ならぬ、ローム飴を出したのだが、普段貴重な甘い物がこれまた無造作にこの辺境で振舞われたから大騒ぎになっていた。
「これは何ぞ? こんな甘い物わしは食べたことが無い」
王様に出すものだから、当然事前に毒味は済ませてありますが、それを担当した毒味役などは、その甘さに暫く反応がないくらい固まっていました。
それで、毒ではないかとひと騒ぎ合ったのはご愛敬。
「陛下、私もこれほど甘く、甘美なものは食したことがありません」
同行してるビクターもローム飴のあまりの美味しさに興奮していた。
護衛騎士などは砂糖など殆ど口にしたことも無いから、その驚き要は凄まじかった。
「グ! グランよ、これは砂糖を使っておるのか?」
「いえ砂糖は使っておりません。ビクター様これはローム糖というものを使った飴というものです」
砂糖は非常に貴重で王家や貴族でもこれほど贅沢に使える事はないので、この辺境で使われていることに驚愕し、砂糖ならどうやって入手したのか気に成ったビクターはグランに確認したが、返って来た言葉にローム糖という聞きなれない言葉が帰って来てさらに困惑した。
「そちはグランと申すのだな、してそのローム糖とはどのようなものじゃ? わしは聞いたことが無い。直答を許す故教えてくれるか」
一介の商人が王に直に話す事は普段は許されないが許しが出たのでグランはローム糖について説明した。
「な! なんとそのような物から砂糖と同じ甘味が作られているのか、してそれはどこで手に入るのじゃ」
入手法を聞かれたグランは国内何処ででも手に入るが数は無いだろうから、栽培して増やした方が良いと答えた。それに学校の畑で試験的栽培してる事も報告した。
学校の畑でユウマが栽培方法について研究するのに試験的に栽培している。
今回の飴に使われているローム糖はユウマから提供されたものだが。
「な! なんと国内で生産できると申すか、ビクターよ、これは一大事じゃ」
砂糖を輸入に頼っている現状が打破出来て、どれ程の量が確保できるかは未定だがこれ程贅沢に使用できるのなら、国としては大変喜ばしい事なので、王はビクターにそう伝えた。
「確かに、国内で生産できるならこれ程喜ばしい事はございません」
ビクターはそう答えたが、此処にカルロスが居れば、ローム糖が国際関係に波紋を起こすことに気づき、これ程もろ手を挙げて喜んだりはしなかっただろう。
ロームは明日の視察で見て貰うと言う事で、この場での話は一旦終わり、疲れを取って貰う為に温泉銭湯に王を案内する事に成った。
温泉施設は庶民の為の物なので作りは簡素である事と、今回は貸し切りにしてる事は事前に伝えてあるので、こちらも緊張することはないが、果たして王の反応はどうなるか?
「ほぉ~~~~ これは良いの~~ 体から疲れが抜けていくようじゃ」
此処の温泉は魔境の森に近い事も有ってか疲労回復には良い泉質の様で、町民からも似たような話は聞いていた。
「陛下、私もそのように感じます、温泉とは良い物ですね」
王の入浴は普段は侍女が付くが今日は王の命令でビクターが一緒にいる。
温泉を長風呂と言えるぐらい堪能した。王達は拠点に戻り夕食まで炭酸水にローム糖で甘みを付けたサイダーのような物を嗜みながらゆっくりとした。
晩餐会場、もとい食堂に入った王達はそこでも驚愕した。食堂のテーブルの上には等間隔でライトの魔道具が並び、部屋の周りにも間接照明のように魔道具が置かれていて非常に明るいのだ。
これ程の数の魔道具は王宮にもない、驚いて当然なのだ。
席に着き、運ばれてくる食事も見たことも無い様なものばかりで、食べてみればこれまた全て美味、酒も最近漸く王宮にまで届くようになった、ウイスキーやブランデーが炭酸水と共に豊富に提供され、最後にはデザートとして甘いパンケーキとジャムまで提供されたのだ。
食事は蒸した温野菜にオリーブオイルと塩、ワインビネガーで作ったドレッシングを掛けたもの、魔物の骨と野菜から取ったブイヨンのスープ、メインはオークカツとオーク肉とブイヨン、ワイン、野菜を煮込んだ、なんちゃって肉のワイン煮のどちらかを選んでもらって、最後がパンケーキ。
ユウマが色々考えたけど難しかったので、この世界の物で前世の料理に似たものを作った。
食事は無事に済んだのだが、その後が大変だった。王宮にもないほど大量のライトの魔道具の存在に。
「ビクター あの魔道具の数はなんじゃ」
ビクターは知っていたし、事前に聞いていたので王に説明した。
未完成品であると言う事で以前カルロスが来た時にはまだ販売は出来ない事は伝えていたが、どうも完成までには時間が掛かりそうなので、生産も大量には出来ないがある程度なら出来るように成ったので、近々販売される事に成ったと伝えた。
他にも水の魔道具や火の魔道具も販売される事を追加で報告した。
「ほんに此処はどうなっておるのじゃ? 次から次へとびっくり箱か」
「はぁ~ それは何とも、私も毎回驚かされておりますので」
王は王宮に戻ったら必要な数を確認してすぐ連絡を入れるので納品してくれとグランに言ってこの日はお開きに成った。
初日でこれか、明日からは特別なことは無いと思うから大丈夫であってくれと願う、グランだった。
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