第92話 高度な教育?
昨日は色々騒ぎに成ったが、今日は学校の視察なので問題は無いだろうと安心してるグランだったが、そうはいかなかった。
学校を王が視察に来ることは生徒達には事前に知らせてある。本当は休校でも良かったのだが、事前に王宮から授業風景を見たいとの要望があったので、休校にはしなかった。
午前中は座学なので教室で授業を受けている生徒の見学、その授業の中で王達は驚愕する。読み書き計算は教えていることは知っていたが、その計算の仕方や早さに驚愕した。
この学校では九九と筆算を教えているので、計算が非常に速い。九九や筆算も世間には知られていないが、それだけでなくこれらのもたらす効果として暗算が早くなるので何もしていないのに答えがスラスラ出てくる。
筆算を知らないと計算が非常に面倒なのだ、例えば
1545と1687を足すとする、そうするとこう計算する
1000+1000=2000
500+600=1100
40+80=120
5+7=12
2000+1100=3100(2000+1000=3000 3000+100=3100)
120+12=132(20+10=30 30+2=32 100+32=132)
3100+132=3232(100+100=200 200+32=232 3000+232=3232
1545+1687=3232
計算が得意な人=計算スキル持ちはここまでばらばらにはしないだろうが、これに近い計算方法でやっている。
しかし、筆算は違う。現代人は筆算が染みついているからこんな方法するかよと思ってしまうだろうが、計算を出来ない人が計算を手の指や足の指でするような映像を見たことがあるだろう、方法を知らないと言う事はそういう事なのだ。
小学生の1年生の授業を思い出すと理解できる。
九九でもそうだ、九九を知らないと9×9を9+9+9+9+9+9+9+9+9と考えて
9+9=18 18+9=27 27+9=36・・・こんな風にすると言う事。
日本では大和時代には中国から伝わっています。この世界は前世のヨーロッパの中世前期、5世紀~10世紀と同じかもう少し前位の文明ですからちょうど発明されるか伝来する時代です。
解説が長くなりましたが、筆算というものは凄く便利なツールなのです。
「この学校はどんな教え方をしとるのじゃ? 貴族の子でもこれ程早く計算できる者はおらんぞ」
グランは王に九九と筆算というものがあり、それを使う事で計算が早くなると説明した。
その時ビクターは思った。前回の視察の時に算数の座学の授業を視察しなかった自分の愚かさを、あの時知っていれば……
前回はスキル発現が主の視察だったから、算数の授業は見ていなかった。
王はグランの説明を聞いて考え込んでしまった。
その後も視察は続けられ、昼食は学校の食堂でとったが、その美味しさに驚き、午後からの実習棟の視察も設備の充実度に驚いていた。
最後はスライム養殖場と畑の視察、スライム養殖場ではたまたま生徒の体育の授業が行われていて、生徒のスライム討伐の意義などの説明を受け感心し、畑でロームの実物を見て、学校の視察は終了した。
視察を終えた王一行は全員疲れた顔をしていた。
王はその足で、温泉に向かい湯船で考えていた。
(これはどげんかせんといかん)とは言っていないが、それと同じようなことを考えていた。
温泉から拠点に戻ってから、王はビクターに
「ビクターよ、学校をどう思った?」
王にそう聞かれたビクターは学校の存在は素晴らしい物だが、王はそれが聞きたい訳じゃないと思ったので
「広めるべきかと」
この言葉は曖昧だ、何を広げるのか指定していない。学校そのものなのか、教育内容なのか……
「そうだな」
王もビクターのいう広めるべきは理解出来るのだ、でもビクター同様、具体的には思いつかない、だからこれしか言えなかった。
一方、護衛騎士が待機してる部屋ではこんな会話がされていた。 騎士A、Bの会話
A「おい、お前気づいたか?」
B「あぁあれか、異常に素早いスライムの事だろう」
A「そうだ、俺はあんなスライム見たことが無い」
騎士たちも訓練の為に王都近くのダンジョンに入ることがあるから、スライムは良く知っている。
以前は違ったが今はスライムの利用法があるので、訓練のついでにスライムを討伐して小遣い稼ぎをする騎士もいる。
だから素早いスライムなんていない事を良く知っているのに、今日それを目の当たりにした。
B「あのスライムな魔境のスライムだそうだ」
A「は? 魔境のスライム?」
B「俺な前に宰相様について此処に来たことがあるんだよ、その時に聞いたんだ魔境のスライムは素早いと、それにホーンラビットやボア、オークも強いし肉も美味いとな」
A「もしかして此処で食べた肉、異常に美味かったが、もしかして」
B「多分そうだろうな、冒険者でも滅多に入らないという魔境に誰が捕りに行ってるのか?」
A「この町の住民は良いよな、毎日あの温泉に入れるんだろう、俺王都に帰って、またクリーンや桶の生活に戻るの嫌だな~」
A「それとあの計算の早さ、凄かったな」
B「それな、俺には絶対できない、それも1年であそこまで出来るように成ったなんて信じられるか?」
その後も騎士たちは燻製肉やベーコンの美味しい物は、この町か領都のグラン商会でしか買えないから土産にすべきだとか、拠点や学校のレンガの建物についての話で、夜が更けるまで大いに盛り上がった。
翌日は拠点の視察だったが、そこで見たものに王一行はまたも考えさせられた。
拠点では生産は勿論されているが、最近は改良や新製品の研究が主に成ってきている。
レンガ工房と陶器工房が共同して磁器タイルの製造を研究しているし、陶器工房では磁器とボーンチャイナ? 牛骨の灰じゃなく、魔物骨の灰だけど研究されている。
鍛冶工房では色んな金属の合金が研究され、錬金術工房では化粧品関係の新商品や魔道具の研究がされている。
この世界には殆ど存在しない、改良や研究という分野が普通に存在してる事に驚愕し、考えさせられた。
考えて出てくる答えは…… この世界に足りない物
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます