第51話 時代は動く

 ニックが協力者に成り、薬が王都で広りだした頃、ユウマは森の拠点で既に上級ポーションまで改良に成功。化粧品も乳液、口紅、ファンデーションと作っていた。

 こうまで早く出来たのには理由がある。


 ユウマの錬金術スキルが成長したのもあるが、ここで更なるチートが発生したからだ。


 ユウマの鑑定EXは病名からどういう薬が効くかもわかるし、レシピや製法も解る。


 以前は病名とか物について対応策や使い方が解るだけだったが、錬金術スキルや薬師スキルが成長したことによって一種の検索が出来るようになった。


 こういう物が作りたいと思うと必要な材料や製法が鑑定した時のように表示されるのだ。


 正しくチートオブチート!


 ただそこはユウマ、何時までも自分が作るというのはしたくないので、人任せに出来るように、他の錬金術師が作れるように器具やら材料などを揃えた。


 乳液などはレシピも色々あるから、この世界で手に入れやすいものを厳選する必要もあった。


 ここ最近は新たに紙の製作に取り掛かった。以前グランに頼まれて結核の薬のレシピと製法を羊皮紙に書いて渡したのだが、これが使いにくい。


 便利な紙という物を知ってるユウマにとっては不便で堪らない。


 トイレットペーパーが必要だったら直ぐに取り掛かっていただろうが、如何せんこの世界にはクリーンの魔法がある。自己流とはいえユウマも使えるのでその必要性が無かったので作らなかった。


 成長したチートオブチートの検索を利用して紙の材料と製法をこの世界の物で再現した。


 ユウマの場合は殆どを魔法で出来てしまうが、この世界の人には無理なので、魔法を出来るだけ使わないで出来る方法を模索している。


 ユウマは和紙の作り方は知っていたから、和紙の様な物は割と簡単にこの世界の人でも作れるように出来たが、出来ればパルプ紙まで作れるようにしようと今は研究中。


 その頃領都ではローレンによって辺境伯の後ろ盾は出来ていたが、あくまで石鹸や化粧水等なので、フランソアと子供たちと入れ替えでグランは一度領都に戻り辺境伯に面会することにした。


 領都には現在グラン、ローレン、ジーンがいる、フランソアや子供達には悪いがまたジーンとはお別れだ。


 元々からフランソア達はラロックに行かせる予定だったが、王都で結核の薬が広まったことにより、貴族連中や大きな商会、王都の薬師、例の領都の薬師スベンもこそこそと動いてるという情報が、ニックやジーンからグランに送られてきたから急いで面会と避難をさせる事にした。


 今回もグランの面会申し込みは直ぐに許可された。


 行くのはグラン、ジーンの二人、目的は前回紹介した物以外の新商品、しかしポーションは除く。


 ニックが王都に帰ってからグランはユウマと二度程会っている。会った時に薬の販売で利益が入ることも説明した。


 その時にこれからの事を色々と話す流れでユウマから特許のような話が出た。はっきりとは言わないがそれらしいことを……


 その話を聞いてからグランはフランクと話し合った。これから色んな商品が出回るし、これからもどんどん出てくるだろう。その度に全部秘密にするのは限界がある。


 それにいくら辺境伯に後ろ盾になって貰っていても、それにも限界がある。


 それならいっそのこと仕組みを作ってしまえばいいのではないかそう思ったが、その仕組みを何処が作るかで迷った。


 国が作って法律とするか、商業ギルドが作ってギルドが保護するのが良いか結論が出なかった。


 商業ギルドで作るにしても国で作るにしても最終的には王都に話を持って行かなくてはいけない。それに下手をすると世界中を巻き込むことになる。


 流石に他の国の事には関与できなくても最低この国だけでもちゃんとした仕組みは作りたい。その為の面会でもある。


 約束の日今回も時間の少し前に辺境伯邸に到着、今回は応接室でグラン達は待機する。


「すまんすまん、待たせたな」


 そう言いながら領主ビクターが応接室に現れた。


「この度はお忙しい中、面会の申し込み受けて頂き感謝します」


 ビクターとグランは何度も面識はあるし、一緒に酒を飲む中だがそこは貴族相手だし隠居して暫く会っていないから丁寧に挨拶をした。


「グランそう畏まるな、昔のようにしてくれ」


 許しが出たのでグランもここからは敬語は使うがそれなりに行く。


 時間もないので早速本題に入る。


「ビクター様、本日は先日ローレンがお知らせしていた商品をお持ちしました」


 ジーンにグランは目で合図をして、テーブルの上に商品を並べさせた。


 カラフルに色付けされた陶器の食器、中には模様が描かれた物まで。


 透明、有色のガラス食器の数々、そして最後にレンガと耐火煉瓦。


 流石にレンガが置かれた時は、ビクターも表情が変わったが、それ以外はびっくりした表情だった。


「どうでしょうか、ビクター様この色鮮やかな陶器にガラスの食器は」


「美しいな、以前ローレンからガラスは少し見せてもらっていたが、陶器は初めてだし、此処まで揃うと本当にため息が出る」


 感心してくれたようだ。それではここからが本題の入り口


「ビクター様、ここにあるこの四角いものはレンガといいます。そしてもう一つは耐火煉瓦です。この二つがあって初めてこのような素晴らしい作品が生まれました」


 そう言った後、グランはレンガの使い道を全て説明した。


 そして最後に拠点の話まで暴露した。これは賭けだ! 辺境伯はグランの知る限り、貴族の中でも聡明で領民思いで、気さくな人だがそこは貴族である。


 貴族が一言言えばそれは命令だから、全てを取り上げられるかも知れないが、結局はこの人を頼るしか、この先を進めるのが難しい事も解っているので、全てを話した。


 ポーションとユウマのこと以外は……


 勿論、全てだからニックに話したように発案者に利益が行くようにすることも。


 話を聞いたビクターが、沈黙し暫く考えているようだったのでグランは


「ビクター様、一度ラロックの拠点に御出でになりませんか?」


 最後の爆弾を投下した。




 


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