第114話 休暇?

 本当に最近忙し過ぎた。いろんな問題が立て続けに起きるし、その解決に奔走したら、結果として副産物が出来ている。


 副産物それは、1か月分の授業内容の準備。


 1か月魔境の森に籠れるように準備した学校と病院の課題や指針を書いたもの。


 スーザンが来てから10日経つし、新しく創設した冒険科も順調に機能してるようなので、準備したものを渡せば2週間ぐらいは森に籠れると思い、思い切って休暇を取ることにした。


 病院の方も今なら患者も緊急を要する人は居ないから大丈夫、もしもの事があれば、フランクとロイスは魔境の森の拠点に来れるから知らせてもらえばいい。


 休暇を取ることをグラン達に報告したあと、国側の責任者であるスーザンにも一応形式通りに報告した。


 だがそこからが大変だった。俺って普通に平穏な生活は送れないのだろうか?


 なんとスーザンが一緒に休暇を取ると言い出したのだ。


 いや、君は来たばかりで休暇とか言える時期じゃないでしょう?


「な! 何を言ってるのかな? スーザンさん」


「だって私はユウマさんに弟子入りしたようなものじゃないですか、師匠が行く所には弟子はついて行くものでしょ?」


 そんな事は無いでしょうが、何を言ってくれちゃってるのよ、この子は?


 スーザンは本当に無邪気というか、興味がある事には一直線に突き進む一種の変態。


 国の思惑とか一切関係なく、俺にについて回りたいだけ、俺といれば吸収できることがあまりにも多すぎて、薬師や医者のこと以外にも、学校や拠点にある錬金術やそれ以外にも興味を示し、俺が行くところには何処にでもついて来ていた。


「スーザンさん貴方は女性ですよ。そして俺は1人暮らしの男ですよ。どう考えても無理な話でしょ?」


「そんな事はないですよ。弟子が女性の人なんて身の回りのことを弟子にやらせていますから」


 それは通いの人だからでしょうが、俺の場合は魔境の森で普通の人は簡単にはこれ無い所に家があるんですから、当然住み込みと同じになるんです。


「一つ屋根の下に未婚の女性と未婚の男が一緒に寝泊まりするのは大問題でしょ?」


「う~~ん? ユウマさんは何かする人ですか?」


「しないしない、そんな事する訳ないじゃない!」


「だったら大丈夫ですよね」


 何が大丈夫なんだよ、するしないじゃなく、一緒に寝泊まりするのが問題なんじゃないか。


 この子本当に貴族? どんな教育を受けたらこんな子に成るの?


 教育ではなくスーザンの場合は資質の問題だった。


 スーザンの両親も必死に矯正しようと教育を頑張ったが、何をやってもスーザンを変える事は出来ず、今は諦めて、好きなようにやらせている。


 どうしたもんかな? 前回女性陣が来た時は複数だったし、フランクもいたからどうにかなったけど、今回は1人、いくら建物を別にしても拠点で二人きりというのは変わらない。


 俺が一日中結論を出せずにそのことを悩んでいると、ミランダが声を掛けてきた。


「ユウマさん聞きましたよ、スーザンさんが森の拠点に行きたがっていて、それでユウマさんが困っていると、それなら私たちが一緒に行きましょうか?」


「それはありがたい申し出だけど、三人は魔法の授業の監督をして貰ってるから無理だよ」


「う~ん、それならローズ1人を連れて行きませんか? ローズならスーザンさんと年も近いし、1人抜けるだけなら私達も問題ありませんから」


 これはとんでもない事に成ったよ。ローズを連れ行く行かないの以前の問題として、良く考えるとスーザンって貴族だし国側の人間なんだよ、その人を魔境の森の拠点に連れて行って良いものか?


 ローズを連れて行くことで問題解決と思った俺が馬鹿だった。これ程重要な秘密を暴露していいものか?


 う~~~ん、あ! そうだ二重スパイ!


 スーザンという人物は興味のある物が一番という性格、そこに他人が入り込む余地はない。それが例え国であっても。


 それなら逆にスーザンを魔境の拠点に連れて行けば、こちら側に引き込めるんじゃないか? 


 言い方は悪いが俺無しでは生きていけないようにすれば良い。なんか卑猥だな……


 そうだローズも天才肌で覚えも非常に良いから、この際だから二人を魔境の森で猛特訓して、どういう風に成長するか見て見るか?


 あれ? これって休暇? まぁ拠点でも俺はじっとなんかしていないから、元々休暇かと問われても答えようが無いんだけど。


 実際、休暇の間に魔境の森の深部探索をするつもりだったからな。


 二人にとって良い機会だから、見たことも無いだろう魔境の深部を見せておくのも勉強になるだろう。


 人類未到達地点がどんなものか知っている人間がいれば夢も広がるからな。


 探せば人類最高レベルに到達したエルフの記録がどこかにあるかも知れないが、その人が魔境の森に入ったのか、入ったのならどこまで行ったのかが記載されているとも限らないから、二人を連れて行く意味はあるな。


 スーザンをこちら側に引き込むことが出来たら、グランさんも大変だろうから、これからはスーザンに国との連絡係に成って貰おう。


 しかしそう思っても上手くいくかな?


 あのスーザンだもんな……


 美人で明るくて貴族っぽくないないから、あの性格じゃなければモテるだろうに……。


 貴族で20歳と言う事は当然婚約者とかいて当たり前なんだけど、いるのかな?


 いやいや、いたら普通此処に来ないよな?


 二人を連れて行くことが決まって、学校も病院も問題ないのを確認して、2日後に魔境の森の拠点に向かって出発した。


「スーザンさんは森を歩くなんて初めてだろうからどうします?」


「どうするとは?」


「俺とローズは身体強化が出来るので結構早い速度で走れるんですよ。だからもしですが、良かったら俺がおぶって行きましょうか?」


「え!~~~ 良いんですか?」


 おいおい普通は恥じらうもんでしょうが、「え~やだ~」とか、その反応はあり得ないでしょ、貴族の女性なら……。





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