第113話 どうしよう?逃げる?
国との問題や学校の変化の問題も解決し、医学部も順調に滑り出したので安心していたのですが、此処に来て大問題が発生いたしました。
何時かはこうなる事は予想できていたのですが、出来れば来年まで持って欲しかった。
それは俺の事が王宮や辺境伯に知られてしまったと言う事です。
当然教師をしてるのですから、目立たないようにしていても、この世界の常識を魔法や医学で覆しているのですから、生徒や薬師達によって俺の存在が伝わってしまうのは当然のことです。
一応流浪の薬師の弟子としてカモフラージュはしていますが、それを考慮しても目立ちすぎました。
どうしましょう? 魔境の森に逃げても良いのですが、やり始めた事を途中で投げ出すのも嫌ですから、今非常に悩んでいます。
この話を教えてくれたのは、グランだった。
グランがビクターから俺について問い合わせがあったと教えてくれたのです。
内容は王宮というかカルロスから医学部の教師は何者だ? 魔法を教えたのは誰だ? という問い合わせだったようですが、そのカルロスも学校に子供が通っていた貴族からの問い合わせで動いたようです。
手術の話が王都に伝わって論争に成った事も大きな理由ですが、1年の予定だった普通科の多くの生徒が残留を決めたことも影響しました。
その理由が魔法の研究ですから、国としても把握する必要が出てきたのです。
「グランさん、ビクター様やカルロス様が此処に来る可能性がありますよね?」
「多分? 否、確実にあるねユウマ君」
ビクターは近いから確認に来やすいし、カルロスは好奇心が旺盛でそれでいて鋭い人だからな。
以前の視察の時のカルロスの鋭い質問はフランクやグランから聞いているから、人となりは何となく想像できる。
流石一国の宰相という人物像だ。
どうするかな? 現状二つの案があるんだけど、一つは先手必勝で、来るなら何もかも捨てて逃げると言う事を伝えてもらって、向こうが来辛くする方法。
もう一つは1か月分の授業内容を準備して魔境の森に引きこもる。
流石に領主や宰相が1か月も仕事を放りだす事は出来ないでしょうから、その間だけ逃亡する。
最終手段は、完全逃亡なんだけどね、フランク達でも来れない魔境の奥地に逃亡する。
とても卑怯なことだけど、俺は絶対に直接、貴族と王族には関わりたくない。
神様に思惑があってのこの世界への転移でしょうが、神様も無理強いはしていないのは分かるから、俺が逃げても何も思わないでしょうが、最終手段は出来るだけ使いたくない。
俺はこれ以上の方法を思いつかなかったので、この三つの方法を正直にグランやフランクに伝えた。
「本当にユウマ君は貴族や王族と関わりたくないんだね。そこまで言うという事は」
「ユウマ、もしお前が居なくなったら俺は寂しいぞ」
「兎に角解った。私もユウマ君が会いたくないなら、ユウマ君がいう方法が一番だと思う。後の事はその回答次第で考えよう」
「分かりました。俺もどうなってもいいように準備しておきます」
それからは先ずは1か月分の授業の準備に取り掛かり、最終手段の事も考えて、残せる知識を本にしたり、この先の学校や病院の指針というべきものを書き残した。
一番初めの方法で向こうが取りやめてくれればいいのだが、さてどうなるか?
「グラン、そこまでその教師は王族や貴族を嫌っているのか?」
グランから俺の意向を伝えられたビクターはグランにそう聞いて来た。
「はい! 嫌っているというより師匠である流浪の薬師様がそういう人達と関わったおかげで逃亡する羽目に成った事が原因のようです」
これも作り話である。事前に俺と決めた、拒否する理由でもっともらしい内容を……。
「そんなことがあってはその教師も警戒するのは当然か、しかしな~ わしの所にも他の貴族から問い合わせが来ているから、無視することも出来んのじゃ」
ここからは二人であ~でもないこうでもないとお互いに良い方法を模索した結果。
「そうだなそれで行こう。それならわしもカルロス様に申し開きできる。しかし、わしも一度は会ってみたいものよな」
二人が決めたことがカルロスの了解をもらえたら、今回の一件は一応終息するだろうが、さてどんな内容だろうか?
2週間後、1人の若い女性の病院訪問が答えだった。
「はじめまして、わたくしスーザンと申します。宜しくお願いしますね」
この女性実は貴族のご息女で薬師の見習いをやっている変わり者、今回のユウマがどうしても王族や貴族と会いたくないという要望と、ユウマに近づきたい王宮側の妥協点と言う事で派遣された人物。
確かにこれなら俺も警戒しないだろう、貴族の子どもとは学校で関わりがあるし、女性で薬師見習いなら生徒のようなものだから……。
女性の立場は形式上、国立の学校と病院の国側の責任者という立場。
物凄く若い責任者だが、それなりの年齢の人だと俺が警戒するだろうと言う事でこの人選に成ったようだ。
ちなみにスーザンは20歳、成人前から薬師の所に通って勉強していたから、キャリア的には7年ぐらいに成るが、貴族だから本来の弟子の様には扱われないので、未だにスキルは発現していない。
それに女性薬師見習いだから学校や病院に興味が物凄くあるから、言ってみればユウマに弟子入りさせたようなもの、勿論、そういう風に振舞ってよいと国からも了解が出ている。
それからというもの、スーザンは国からの指令などどこ吹く風というように、自分の興味を優先させ、ユウマが行くところには腰ぎんちゃくのように付いて回り、分からないことは解るまでとことん俺を質問攻めにする。
勿論、手術室にも平気で入っているから、度胸が据わっているというか、なんというか?
そういう人物だから、俺も全く警戒しないし、やる気のある生徒のように可愛がった。
スーザンの行いは国の指令は果たしていないが、国も目論見である俺に近づくことは出来ているので、当分はこれで良しとされた。
「スーザンさんって凄く美人だな~~~」
俺の周りにいる女性陣が美人ではないという事ではないのだが、貴族の中でも目立つだろうと思えるぐらいの美人なんです。
言ってみれば前世の芸能人級。100人いたら100人が全員美人だと言うぐらいなんです。
前世も含めて女性に免疫があまりない俺にとっては、どう対応していいか迷うほどに……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます