第112話 学校がまた変わる

 普通科を設けてからの初の卒業生が巣立って行った。


 卒業生を送り出したと言う事は、それは同時に医学部が薬師の卒業生を交えての本格始動でもある。


 医学部に関しては準備も終わっているので、後はカリキュラム通りに進めるだけだし、各領地にお願いしていた患者も徐々にだが集まりだしている。


 もし患者が間に合わなければ、最後の手段として、ゴブリンに活躍して貰う予定だ。 絶対、嫌がられるとは思うが致し方ない。


 そんな事より今俺は本当に困っている。


 もう直ぐ次の新入生がやってくるというのに国と揉めている。


 その内容は、普通科の卒業生の一部が学校に残りたいといいだしたからだ。


 普通科を作った本来の目的は高度な計算能力や思考力を付けるというものだったのだが、俺が授業内容的に余る時間を将来の為に魔法の授業にしたのがいけなかった。


 貴族の子弟は問題ないが、商人の子弟や役人にも残りたいという物がいて、特に役人が国とのもめ事に成ってる。


 役人は高度な計算力と思考力を身に着けて、国に貢献して貰う為だったのに、魔法の可能性に目覚めてしまって、役人を辞めてでも研究したいと言い出したのだ。


 その残りたいと言っている役人が貴族だから尚更たちが悪い、貴族だから経済的に困らないので仕事を辞めやすい。


 商人は跡継ぎではない人が残りたいと言ってる。


 今度の職業科の新入生はやっと思惑通り少なくなって全校生で500人ほどになったから余裕が出来ると思っていたのに、普通科の生徒は新入生が200人以上いて尚且つ居残りが出ると、結局900人ぐらいに成って初期の頃と変わらなくなる。


 こうなった原因はレベルが少し上がって魔力量が増えたことで、身体強化などが使える人が多くなり、他の無属性の魔法の結界が使える人も数人出てきたから、自分にも出来るのではと思う人が多くなったからです。


 勿論、根本は魔法の可能性に気づいたというのが大きいのですが……


 レベルが上がると魔力量も増えると言う事に気づいているので、最近はスライム養殖場のスライム討伐では満足できなくなり、魔境の森には入りませんが、普通の森の方に行ってレベル上げをする生徒も出て来ています。


 もう冒険者じゃないのかと疑いたくなるペースで森に行っています。


 国とのもめ事は最終的に平民の役人が王宮に戻るので、その人達に足りなくなった役人の補充として雇う、新規の役人の教育係に成って貰う事で解決するしかない。


ひとつ解決しそうだと思ったら、今度は元普通科の卒業生達が冒険者並に討伐してる事が、問題になりそうなんですよね。


 冒険者並に魔物を討伐してくるので、狩ったものは売るか食べるかするじゃないですか、その結果冒険者ギルドから本業の冒険者の仕事を奪っていると苦情に成っているんです。


 魔境の森と違って普通の森には魔物が多くいるわけではないので、取り合いになってしまっているけど、相手が貴族だから文句も言えず、冒険者が泣き寝入りしてる状態。


 食べる方は学校の食堂に寄付してくれるので学校としては助かるのですが、その結果これまたギルドから卸された肉を販売してる業者から学校が仕入れなくなるので問題になっている。


「困ったな~~ 拠点のメンバーなら俺がプチパワーレベリングで魔境の森に連れて行ってるから、生徒も同じように連れて行くことも出来るけど、それだと俺の正体が多くの人にばれてしまうんだよな……」


 こんな独り言が出るぐらいに今は困っている。


 根本的に魔法を上達させるためにはレベルを上げて魔力量を増やすのが一番なのは解っているんだけどな?


 あ! そうか! こうなったら冒険科を作るか?


 普通科で魔法の勉強をした後に継続したい人には冒険科でレベル上げと魔法の研究を授業としてやって貰うか?


 そのレベル上げは魔境の森でやって貰えば上昇率も大きいから魔力量も多くなり魔法の研究が進むだろう。


 それに魔境の森なら冒険者ともかぶらないから問題ないだろうし、肉の業者には魔境の肉を少しでも卸してやれば渋々でも納得してくれるだろう。


 問題はその付き添いを誰にやって貰うかだよな?


 そうは言ってもあの二人しかいないのも事実、そうフランクとロイス。


 この二人はパワーレベリングだけじゃなく普通に魔物とも戦わせているから、魔境の森の入り口付近なら問題なく対処できるから引率はできる。


 そうすると絶対あの剣を寄越せと言って来ると思うんだよね、ミスリルを含んだ剣。


 あれはまだ表には出したくないんだけど、フランク達の身の安全を考えると必要だとも思うから、う~ん、どうしたものか?


 嫌々、話が冒険科を作る事にもうなってしまっているよ、これは学校の運営に関してだから、グラン一家や国とも協議しないと。


 はい! 許可されました。


 なんでだよ~~ 役人の事では揉めてたに、なぜこれに関してはこんなに直ぐに許可するんだよ?


 その理由は生徒達が両親宛に送っていた手紙の内容で、魔法の上達にはレベル上げと魔力量が必要と言う事が綴られていたので当然その事も王宮に伝わっていたから、この結果となったということらしいです。


 結局居残り組合わせてこの年の在校生は900人、全然楽にならない……。


 冒険科の教師兼引率係にはあの人にも協力して貰う。


 そうベテラン冒険者で、ダンジョン経験者のサイラス。


 サイラスとは温泉銭湯でちょくちょくあっていたので親交はあるし、サイラスは趣味程度に冒険者を今はやっていると言う事だったから、その趣味の延長と言う事で教師と引率をして貰う。


 フランク、ロイス、サイラスの三人がいれば、より安全に成るな。


 それにしてもフランクとロイスも良く承諾したな? 


 二人は商人だよ……


 まぁ勿論、あの剣を使わせろと言う事でしたが、これって下手するとミスリルの件も近いうちに世間に公表することに成るのかな?


ミスリルはまだ絶対に拙い。天然のミスリル鉱石がまだ見つかっていないのに、人工的に作ったものなんて出せるわけがない。


なぜそんな物を知ってるから始まって、物凄く追及されることが目に見えている。


ミスリル鉱山が見つかれば良いんだけどな……。

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