第115話 スパルタ
結局スーザンを俺が背負ってローズの出せる最高速で森の中を爆走、何時もの様に森で一泊したが、次の日の午前中には拠点に到着した。
やはりレベル上げをしてるローズが身体強化すればフランク達よりは遅いが随分早く着いた。
着いたのは良いのだが、絶賛! ローズが疲労困憊でグロッキーです。
その原因は全て、スーザンにあります。
魔境の森を初めて訪れる人は必ずと言って良いほど、俺を質問攻めにするのですが、今回はその対象がローズだったからです。
スーザンはやはり他の人とは違っていて、普通は見たことも聞いたことも無い物を体験すれば、その仕組みとか原理に関心が向くはずなのですが、この人はそういう事はそっちのけで、自分に出来るかどうかに関心が向くようです。
だから今回はローズなのです。年の近いローズがやれるのなら自分にも出来るのではと、質問の相手がローズに成ってしまった。
ローズに質問しても、出来る訳はないのです。根本的にレベルが足りませんから。
確かに仕組みや原理が解っていても、出来るかどうかは別問題なので、質問の内容がやり方に集中してもおかしくはない。
おかしくはないけど、そっちのけというのも理解できない。
「スーザンさん質問はその辺で、俺の家に着いたから先ずはゆっくりしましょう」
その時ローズの俺を見る目が恨めしそうだった。助け舟を出すならもっと早く出せと言う感じで…… すまん!
漸くスーザンも俺の拠点に関心が向いたのか、辺りをキョロキョロと見まわして、今度は俺に質問をして来ようとしたので、スーザンの顔の前に手をストップと言う様に出して。
「話は後! 今は兎に角休憩しましょう」
何とか強制的にスーザンを押しとどめて俺の自宅に案内することが出来た。
今回は二人に全ての物を隠すつもりがないので前もって見られたら拙い物を隠したりはしていない。というより隠す暇が無かったともいう。
以前は結界を5日が限度という目安で家を空ける限界を決めていましたが、今では魔法陣と魔境の森深部の強力な魔物の魔石がありますから、1月は問題なく結界を維持出来るようになっているので、最近は1~2週間に一度帰宅するのが普通になっていた。
本当は引きこもりたいんだけどな…… 何を間違えた?
「な! なんですかこれは?」
「すごーい! これ欲しい」
俺の家に有る物を見た二人のそれぞれの反応。
「まぁまぁ、落ち着いて説明は後でするからお茶でも飲んでゆっくりしよう」
毎回こんな感じだから俺ももう慣れたもの、無視してこっちのペースに持って行くのが一番の対処法だと分かっている。
結局は全て答えることになるのだから、体制を整えてからまとめてやる方が楽なのだ。
「それで何を聞きたい?」
「はい!」「はい!」
学校じゃないけど勢いよく手をがげて質問の意志を示す二人。
「それじゃ先ずはローズからね」
ここでスーザンを選ぶのは愚の骨頂、話が長くなるのが見えている。
まぁ大変でしたね、付与術が出来るように漸くなったローズにとっては革新的な魔法陣を使った魔道具が沢山ある訳ですから。
スーザンに関してはこれまた1から説明しなくてはいけないので、ローズなんて比じゃなかった。
到着したこの日は夜遅くまで質問と説明に追われ、結局それだけで終わってしまった。
翌朝、今日から二人のスパルタ教育を始める。
先ずは今日から一週間、森の深部でひたすらレベルを上げてもらう。
1週間は風呂にも入れず、テント暮らしをしてもらって、強力な魔物を二人で協力して倒し続けさせる。
風呂にも入れずはあまり関係ないけどね、だって生活魔法のクリーンがあるから。
それでも最近は風呂の味を知ってしまっているし、シャンプーやリンスの効果を実感してるから辛くないことはない。
勿論、女性ですから、俺が眠らせたり、動けなくした魔物を討伐させるだけですが、それでも朝から晩までともなれば精神的にも肉体的にもかなりハードです。
「ユウマさん少し休憩しましょう」
「休憩していいのか? 色々やりたいんだろ? 色々作りたいんだろう?」
正にスパルタ、心を鬼にして二人の教育をする。
レベル上げは全てにおいて優先される。レベルが上がる事で魔力量が増えるし、能力の数値も変化する。
二人は日頃から学ぶことが兎に角好きだから、レベルが上がれば知能の数値が上がるはず、そうすれば座学や実習に移った時に効果が表れる。
1週間後、ローズのレベル15、スーザンのレベル10、やべ! フランクよりレベルが上がってしまった。
レベルが上がったと言っても強くなったわけではないんだけどね。
闘い方を知らないのだから、それでも基本的体力は向上してるから力も強いし、走る速度とかは異常に早い。
今日からは座学と実技です。
座学は魔法陣と医学について、実技は魔法陣による属性魔法の発動とゴブリンを使っての手術の実習、身体強化の出来ないスーザンはこれも追加。
二人には関係ない分野もありますが、今回の俺の目的が俺の分身を作る事なので、分野に関係なく、知ってる知識を叩きこむうえでこの座学になった。
これから時間を見つけてはこの二人には特別講習をするつもり、いずれは他の人にもやって行く。
どう考えても俺1人では限界があるのは、ここ最近の忙しさを考えれば必然の答え。
今までは1人1分野でやってきていたが、それでは結局俺が全分野を担当しなくてはいけなくなるので、俺以外に何分野も担当できる人が生まれれば俺の負担が少なくなる。
これが俺の分身を作ると言う事、当然俺よりは劣るが基本的なことは多くの分野で知識があるという人を作る。
本当に失礼な言い方だが、劣化クローンを作るようなもの。
もう一つ計画がある。それはグラン家の子供たちの英才教育である。
今は時間的に無理だが、分身の目途がたったら実行に移す。
未来の発展の為の卵を今から育てるつもり…… 自分の子供を作れよと言われそうだが……
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