第116話 ダブルスキル

 休暇という名の、スパルタ強化合宿が終わり、2週間ぶりにラロックの拠点に帰って来た。


 帰りはなんと一泊無し、スーザンが身体強化もマスターしたし、レベルもロイス並に成ったので、魔境の俺の拠点を朝早く出たら、夕方にはラロックに着いていた。


 拠点に戻ってからはミランダ達やフランク、ロイス、ニック、グラン一家から休暇の様子をしつこく聞かれた。


 聞かれても答えられるのは強化合宿のことだけ、ローズにもスーザンにも俺の家で見たものについては口止めしている。


 いずれは主要メンバーには公表する予定だけど今はまだ出来ない。


 本来は公表する気は無かったのだけど、今までの経緯を考えると1人では出来る事に限度があるし、これからどんどん世界が変わって行くと、指導者は多い方が良いのでそう言う人達には未来を見せたいと思った。


 何時か俺が死んで本などを残したとしても、あまりに進み過ぎた知識は使われず埋没してしまいそうだと思ったのも理由だ。


 だから一つのスキルに限定せず知識としてある程度の人に残す事にした。


 それが今回ローズとスーザンの二人に指導した、自分のスキル以外の知識。


 これまで俺は固定観念にとらわれていた。この世界の仕組みがそうだったから、それが常識に成っていたのだ。


 仕事に就くためにその仕事に必要なスキルを手に入れる。


 これでこの世界は回っているが、俺が医者という新しい職業を作った事で、薬師スキル+ポーションという新しい使い方が立証された。


 これを思いついたのが、薬師スキル+治癒魔法の治癒魔法の所を同じ働きのポーションに置き換えただけ。


 この組み合わせは犯罪者スベンがヒントに成ってるから気持ち的に複雑でもあるんだけどね。


 あの人も暴利や名声に走らず精進していれば歴史に名の残していたかもしれない。


 それだけ薬師スキル+治癒魔法は稀有な存在だった……。


 ここで考え方を飛躍させると、ポーションを作っているのは錬金術師だから、薬師スキル+錬金術スキルが成り立つ。


 俺はチートだから当然の様に複数のスキルも魔法も持っているから気づかなかったが、スキルは素人からはじめても条件さえクリアすれば誰でも発現出来る。


 と言う事はひとりの人間が二つ以上のスキルを持つことも可能だと言う事に気づいたのです。


でもこの二つ以上というのは職業スキルの事で、補助的なスキルは別です。


 チートじゃないとそんなこと出来ないという固定観念。


 属性魔法も無属性という新しい属性を見つけたことで、先天的な属性魔法持ちは言ってみれば二属性持ちに成れる訳です。


 ただ無属性魔法がステータスに表示されるには条件があると思う。身体強化と結界魔法の二つの無属性魔法を取得してるエマでも表示されていないから。


 それでも世界の常識は覆っている。


 俺のチートは創造魔法と経験値100倍という人より習得が早いというチートだけど、決して他の人が誰も同じ事が出来ないというわけではない。ただ俺は早いだけなんだと理解出来た。


 時間は掛かるが、ダブルスキル、トリプルスキルも可能だと言う事です。


 ローズは錬金術スキルを持っているから、今回の合宿では医学という薬師の知識も教えたから、学校でやっている薬師スキルの発現プロセスを行えばダブルスキルに成れる。


 スーザンも同様である。これから薬師スキルと錬金術スキルの発現プロセスを踏めば医学の知識は与えたので、スキル取得と同時に医者にも成れる。


 勿論、二人とも研鑚はまだまだ必要だけど……


 この法則が正しければ誰でもダブルやトリプルに成れそうだけど、多分そうはいかない。


 なぜならレベル+魔力量が絶対に関係してくると思う。


 レベルが上がれば数値が上がる。この数値がダブルスキルを持つのに必要なんだと言う事。


 そうだ俺のチートなところはこのレベル+魔力量を初めから無視してる所かな。


 レベル1の時から複数持てているからね。


 この世界の人はレベルが低い。だからひとつのスキルしかもてないし、レベルを上げている冒険者は逆に職業スキルを必要としない。


 ここは神様がこの世界の仕組みを作った時の失敗だろうね。レベルに関係なく努力で数値が大きく変化するようにしていればレベルが低くてもダブルスキルは生まれていたかもしれない。


でも努力が必要ないかと言えばそれも違うんだよね。努力して数値が上がっているとレベルが上がった時にHPやMPの振られる数値が変わってくる。


俺の場合はそこも違っている。ほぼ一定に上昇しているから、努力で変わった数値が影響していない。これもチートなのかな?


 そうだ俺のチートにはこれもあったな、普通の人のステータスには表示されない、力とか知能、器用等の数値が見える事。


 神の失敗を今更言ってもどうしようもない。一つ歯車が狂ったことで、全てに影響してるなら、狂った状態で出来る事をやるしかない。


 魔力に関係ない職業スキルでもダブルが存在しないのはレベルによる数値の変化に重点が置かれているからで、これも努力で数値が大きく変化していればダブルは生まれていたでしょう。


 拠点の職人は定期的にパワーレベリングをやっていて、レベルも上げているから、鍛冶スキル持ちが錬金術スキルを持つことも可能で、鍛冶スキルと木工スキルのダブルスキルで馬車を一人で作ることも可能。


 レベル上げが必須なら、時間は掛かるだろうがスライム養殖場でスライムを倒しても良い。


 スライム倒して何百年じゃないが、それでもやらないよりやった方がレベルも上がるから、ダブルスキルの可能性は出てくる。


 これは俺の推測なんだけど、ダブルやトリプルは条件さえクリアすれば誰でも成れると今は思えるけど、これは絶対数が少ないからそう思っているだけで、数が増えてくれば適正という個人差が現れて、希望したスキルでのダブルには成れない人が出て来るかもしれない。


 薬師と錬金術のダブルには成れても、薬師と鍛冶師のダブルには成れないと言う感じかな?


 これは適性やスキルの組み合わせなんかも関係してくるのかな?


 理論上はどんな組み合わせも可能だけど、実際にはステータスの数値が関係してくるだろうから、力が高い人が知能が必要なスキルを取ることは厳しいと思う。


 レベルが無茶苦茶高くなれば必要最低限の数値はクリアするから、変な組み合わせでも取得できるようになるとは思うけど……


 いや~~~世界の仕組みって本当に良く出来ている? 嫌、奥が深いと言った方が良いか。






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