第70話 学校

 異世界に転移して2年、森の拠点、ラロックの拠点、ラロックの村、ゾイド辺境伯領も随分変わった。


 森の拠点の俺の家はもう生活面では前世と変わらい位充実してる。


 TVなんかは無いけど生活家電はある程度魔道具で再現できた。だから森の拠点に誰かが来て滞在する時は別に作った建物に泊まって貰っている。


 俺の家は立ち入り禁止、文明が進み過ぎているから。


 ラロックの拠点で働く人達は全員職種に合わせたスキルが生えている、習熟度も一般的な人達より進んでいる。


 定期的にプチパワーレベリングもしたし、俺が効率の良い方法を教えているからとても速い。


 勿論、職種によってばらつきはあるけど……


 ラロックの村は今では町に昇格、以前から村と言えないぐらい大きかったが、ラロックの好景気にあやかろうと移住者が増え建物が増えた。


 当然レンガの建物も増えている。


 それと同じ現象が起きているのが辺境伯領、領都だけでなく領内の町や村にも仕事があるから、他領からの移住者がやってくる。


 馬車の改良による人と物の移動が活発になったことも大きな原因。


 顕著に出てるのはまだこれぐらいだが、国中で少しづつ変化は起き始めているのは確か。


 その理由は、辺境伯のビクターの所に国中の貴族から問い合わせが来ているからだ。


 特許は登録してるから、自分の領でも色々作ろうと思えば作れるのだが、既存の職人は頭が固いのか作ろうとしない。


 新規に参入しようとしても職人の弟子制度がネックになって集まらない。


 ラロックでさえ職人を集めるのに苦労したからね、ラロックの場合は未経験者を俺が育てて職人にしたから今がある。


 ビクターも問われても返事のしようがない、全てグラン商会が発端であって、ビクターのしたことは特許の法律を作ったぐらいだ。


 困ったビクターはグランを呼び出し相談した。すると今度はグランが困った。だって発端はユウマなんだから……


 ユウマの存在は基本明かせない。勿論、対外的にと言う事、拠点では言わなくても自然に皆が理解する。


 グランも後ろ盾のビクターが困っているのに無視は出来ないので、ユウマに話してみる事にした。


 グラン一家は全員今拠点で暮らしている。店舗の方は業態が変わり何でも屋ではなくなっている。


 扱っている商品は拠点発祥の物だけ、それ以外は別の店が扱うようになって店舗数も増えた。


 そんな中、拠点の会議室でグラン一家とユウマの会議が始まった。


 グランはユウマに国内の貴族の現状を報告、その影響でビクターから相談を受けて自分もどうしたらよいか解らず会議を持ったと伝えた。


 こんな日が来ると予想していたユウマは即答した。


「それじゃ学校を作りましょう!」


 ユウマのいう学校とは職業訓練校の事、弟子制度で職人が集まらないのなら、未経験者や成人前の人を集めて職人を育てようという事。


 教師は拠点の職人が務める、教育の内容は読み書き計算と専門講義と実習。

 あくまで職人を育てるのが目的だから、歴史や地理は必要ない。


「学校?」


 全員が?顔をしてるのでユウマが職業訓練校の内容を説明するとみんな納得した。


 この国では学校といえば貴族の子供が行くのが殆どで、それ以外は親が子供に基本的なことを教えるけど当然ばらつきがある。


 読み書き計算はどちらかというと成人してから覚える方が多い。


 それも当然ばらつきがある、職業に関係する事は覚えるがそれ以外は無理。


 話せるなら書けるは日本語の様なひらがながある場合、英語を話せても書けないのと同じで本が読めるほど読み書きが出来るのは稀。


 学校というものが理解出来たグラン一家は具体的にどうするのかユウマに尋ねた。


 返って来たきた内容は驚愕というか、呆れた。


 1 1000人が学べる校舎

 2 1000人が入れる寮(食堂、大浴場付き)

 3 職種事の実習施設

 これを作るとユウマは言った、それも1学年のみ。


「ユウマ君流石に1000人は無理じゃないか?」


 貴族の学校でさえ100人程度、それも3学年で、裕福な家庭の子供も通ってのこの人数、子供の少ない時は在校生はもっと少ない。


 勿論、寮に入る人もそこまで多くない。王都にタウンハウスを持ってる貴族の子供は家から通うし、裕福な子供の殆どが王都に住んでいる。


 グランのいう1000人が無理というのは主に寮と実習施設、校舎も当然だがまだ理解できないわけじゃ無かった。


 1000人が住めると言う事は村があるのと同じ、実習施設は町規模の職人街があるような物だから無理だと言った。


「出来ますよ、そうですねこの拠点の倍ぐらいには成りますが」


 ユウマが出来るというのなら出来るんだろう、諦めたグランはどれくらいで出来るのか聞いた。


「そうですね、拠点の皆さんに手伝ってもらえれば3~4か月という所でしょうか」


 確かにこの拠点でさえほぼ一人で10日ぐらいで作った事を考えれば出来ない事はないのか? グランはもうわけが分からなくなった。


「それじゃ余裕を見て6か月後からの受け入れが可能と言う事でビクター様には報告しておくよ」


 実際学校は作るとしても貴族達がどうするか分からないけど、ユウマとしてはいずれ作るつもりだったから生徒が集まらなければ、それはそれでやりようはあると思っていた。


 学校の職種は

 錬金術、薬師、ガラス、鍛冶、陶器、木工に絞った。


 将来的には増やすつもりだけど教師がいないから今は無理。


 薬師は俺がやる、木工はラロックの職人に助けてもらう予定、儲けさせてるんだから多分大丈夫。


 だって年始にグラン一家の子供達と遊んでいた遊び道具が殆ど売りに出されている、紙がないからかるたや福笑いだって木製なんだよ。


 6か月後どうなることやら、それは気にせず俺は学校作りを開始する。

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