第162話 移住
グラン達との打ち合わせが終わって今後の方針が決まってから、10日後ぐらいにお父さんから、サラに手紙が来た。
「ユウマさん、お父さんたち出発したみたいです。多分順調な旅程で到着するのは後10日前後ですかね? この国の王宮とゾイド辺境伯の所によって来るでしょうから」
手紙が着いているという事は、もう此方に向かって何日かは経っているから、普通に移動しても軽く15日以上は掛かるという事だな。下手したら、20~25日という事もあり得る。
この世界の移動は本当に大変だな。前世の中世よりもっと過酷か? だってこの世界には普通に人を襲う魔物がどこにでもいる。
前世にも人を襲う動物はいるけど、ウサギは流石に人を襲は無いからな。
「サラ、それじゃ今日も地下で魔道具を作ろうか。フランクさん達はいつものように魔境の森の開拓を半日、午後は各自のスキル以外の修練をしてもらおう。俺は地下の準備をしてるから、フランクさんにそう伝えてきてくれる」
「は~~い、おまかせあれ!」
なんだか今日のサラは機嫌が良いな? まぁ両親がこちらに来る日が確実に近づいているからな。機嫌が良くなって当然か。
サラが機嫌が良かった本当の理由は、お父さん達が到着した時に判明するんだが、この時の俺は知らなかった……。
10日後
「よし! これで魔方陣のライト、水、火、の魔道具は完成で良いな。後は冷蔵庫と冷凍庫の実験次第だな」
「ユウマさん、冷蔵庫や冷凍庫もほぼ完成で良いんじゃないんですか?」
サラの言う通りなんだが、冷蔵庫や冷凍庫は売る時にそれなりの金額になるから、絶対に不良品は出せない。色んな条件でも機能が変わらないことを実験で確かめて置きたい。
ライトなどの魔道具は、魔方陣化したことで大量生産が可能になるので、価格を下げるつもりだ。それなら冷蔵庫も同じだろうと思うだろうが、そこは違う。
冷蔵庫や冷凍庫は外側を作るのに時間が掛かる。どちらも気密性がないといけないから、手間が凄く掛かるのだ。冷気が漏れれば温度を一定に保てないし、魔力消費が多くなり、魔石への魔力補充が頻繁になる。
馬車に取り付けるタイプだと振動で魔石が外れたり、耐久力が無くなり気密性が悪くなるかもしれない。
まぁ壊れたりおかしくなったら、修理すれば良い事なんだが、その度に販売業者が対応するのも大変だし、特許を登録するだけでも信用が大事だからね。
ちゃんと登録した内容通りに作れば、問題は起きないことを証明しておかないと、全ての責任を押し付けられる可能性もあるからね。
「サラ、分かって貰えました?」
「ユウマさん、そこまで考えないといけないんですね。
サラは俺が何故完成じゃないかという事を説明したら、理解してくれた。この世界にはそういう危機管理というものが殆どない。作って売れば後の事は知らないという考えが殆どだ。強いてあると言えば薬には副作用などがあるから、後のことまで考えて作るから少しはあるかな?
それから数日後、予測通り手紙を受け取ってから、13日後にお父さん達はラロックに到着した。
「ちょ! ちょうと! 待って!……。 あの人数はどいう事かな? サラさん」
どうみても俺の目には集団の人数が50人には見えないのよ。軽く数えても100人は超えている……。
「ユウマさん、ごめんんさいね。父に人数の事は黙っているように言われていたんです。実際に移住するのは全員じゃなく半分ぐらいだと言っていました」
半分でも70人ぐらいになるんじゃないか? それに残りの人はどうするんだろう?
「我が息子ユウマ君、待たせたな。驚いたかな?」
「お父さんこの人数には驚きましたけど、説明していただけるんですよね?」
お父さんの話では移住のメンバーの選抜で、応募者が多すぎて困ったから、息子の所に残る人は若い方が良いだろうと、年齢で選抜したそうだ。
そしたら当然年齢が上の人の殆どが、家族持ちだから、移住人数が増えたそうだ。
それじゃ残りはというと、息子の所に残るメンバーから選抜方法が不公平だとクレームが入り、どうするかと息子と相談した結果、研修という名目でしばらく滞在するという事で納得させたらしい。
若いメンバーには前回の訪問に同行していた人もいるから、此処の住み心地を言いふらした人がいて、今回の騒ぎの原因のひとつになったそうだ。
分かるよ、飯はうまいし、宿泊施設は魔道具で溢れているし、温泉銭湯はある、魔境での訓練も出来る。あぁ忘れてた、ウイスキーやブランデーも飲み放題だね。
「研修という事ですが、何を研修するんですか?」
職人でもないんだから、研修と言えるものなんて騎士にはないだろう。勿論、若い従者にも……。
「騎士には此処で身体強化を覚えて貰おうと思っている。勿論レベル上げもしてな。それと従者には、料理人もいるからここの料理を覚えて貰うのと、その他の従者は此処の学校の普通科に一時留学じゃな」
成る程ね、研修としては実に理にかなっている。今後の事を考えれば研修は絶対役に立つ。しかしだ、それならそうと前もって行ってくれよ。お父さんって前回もそうだがサプライズ好きなのか?
「ごめんなさいね、ユウマ君。ちゃんと連絡した方が良いと言ったんだけどね。聞かないのよこの人、我が夫ながら呆れるわ」
お母さんは止めてくれたのね。今回は……。 この人もどちらかというと天然だからどこまで本気で止めたかは疑わしいが。
「まぁ事情は分かりましたから、宿泊施設を用意しないといけませんね」
「あぁ~ それなら準備できてるぞ」
「え! また……」
今回もまたサラ以外にも手紙が来ていたようだ。前回同様グラン商会宛てにお父さんは手紙を送って準備させていた。
何だか最近、俺に隠し事が増えてるよね。確かにグランに隠し事はしたよ、でもそれとこれとは違うよね。教えても何も問題ないよね。これってただのサプライズ、ドッキリだよね。
ヘルメットと看板をグランかフランクが持ってたら、正にそれだよ……。
こうなったらこちらも仕返しのサプライズをするか。元々はそんなつもりはなかったけど、屋敷のお披露目をしていないから、フランク達にも驚いて貰おう。
本来なら屋敷の披露目も済まして置きたかったんだが、魔道具の事や拠点の今後の事など色々とお互いに忙しかったので、フランク達に披露していなかった。
森の開拓も殆ど終わっているが、屋敷の周りは囲いがあるから、フランク達も見えていない。
「サラ、どうしようか? 屋敷に案内するのは全員? それとも移住する人だけ?」
「あぁ~ そうですね。研修組にあの屋敷は目に毒ですかね? どちらにしてもいずれは見る事にはなるんでしょうが……」
お披露目は取りあえず移住組だけにしよう。後で研修組にばれても対処はお父さんにに任せよう。サプライズのお返しに丁度いいだろう。
移住組だけ案内するのに、旅の疲れを取って貰う温泉銭湯が全員では無理だからという理由を付けて、移住組を先に入らせて、後から研修組が入ったら、その間に屋敷を移住組だけに披露することにした。
勿論、フランクとグランも同席させる。精々腰を抜かさないことを祈る。
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