第161話 今後の事

 お父さん達の到着が遅れるという事で、時間が少しできたので、賢者計画と並行して、俺の計画を進めることにした。


 その計画は拠点の生産拠点としての機能を停止する事。完全な研究拠点への移行。


 これまでの特許の使用料だけで、拠点の運営もグラン商会も維持できるから、生産を止めても問題ないと判断したので実行に移すことにした。


 特許登録すれば自分たちで生産する必要もないぐらいに、スキル持ちの職人が増えたからね。それに錬金術師が近いうち魔道具生産から解放されるので、拠点を大学の研究室やメーカーの商品開発部のようにしてしまおうという計画。


 これからは、世界的に変化していく。グーテル王国のように、学校や病院を作る国も出てくるだろう。それがこの世界に今までなかった、研究や改良、応用という概念を定着させるから、世界中で新しいものが生まれるようになる。


 そうなった時にこの国が、世界のリーダーであり続ければ、最悪の事態が防げるかもしれない。


 形を変えた、世界支配なんだけどね。諍いを起こすなら黙っていないよ、という事を世界に常にアピールし続ける。


 例えば、特許を多く持っていれば使用禁止という方法もとれる。これは法律次第だけど……。


 他にも最悪を想定して最新武器を持っていれば、抑止力になる。軍事力に力を入れている国もあるからね。


 全てにおいて次世代よりも進んだ、次々世代を行っていればどんな状況になっても対応できる。


 研究は生産だけじゃない。賢者はスキルや魔法についての研究もする。この世界のスキルや魔法はまだまだ進化できる? いや、進化というか解明できる。


 前世でも産業革命、文明の進化は科学や物理が研究された結果起きたものだ。


 この世界のスキルや魔法がそれに当たる。ましてこの世界では魔力がエネルギーでもある。


 今までは俺がひとりで全てやっていたが、これからは拠点のメンバーと賢者にその手伝いをやって貰う。当分は俺が指示を出す形になるだろうが、いずれは自分たちだけでやって行けるようにする。


 それには今サラが使っている、俺の知識が詰まった本に近い知識を、身に着けて貰わなければいけない。賢者たちには本は見せませんよ、サラは特別です。


 自分達でたどり着き、それを進化させ続ける。そうなる様に俺が指導する。そして……。


 サラと二人で引きこもる。


「フランクさん、今日久しぶりにグランさんと三人で飲みませんか? ちょっと話したいこともあるので」


「ユ! ユウマ、お前また何か企んでるだろう? 少しは自重しろよ……」


「人聞きが悪いな、企むなんて。ただ今後の事について相談したいだけですよ。国際会議もあったし、近いうちには魔道具も変わるでしょ。それにグーテル王国の件もあるからこの先、色々と変わってくるから、その相談ですよ」


「まぁな、見習いの事もあるから、一度話し合っておくのも良いだろう」


 その日の夜、俺、フランクとグランの三人は何故か、グランの酒の保管倉庫にいた。


「グランさん、飲みながらとは言いましたけど、流石に此処でなくても」


「いや~ 久しぶりにユウマ君と飲めると思ったら、此処しか浮かばなかったんだよ。此処ならうまい酒が飲み放題だからね」


 いや、グランさん俺はもっとうまい酒を飲んでるとは言えないから、そこはスルーしたが、それでもな~~


「ユウマすまんな、場所は此処だけど、つまみも用意したし、此処なら人目も無いから良いだろう?」


 フランクは俺からの相談だから何かあると察しているんだろう。人目に付かない所という事を強調してきたから。


「まぁ、兎に角難しい話の前に、乾杯と行こうじゃないか」


「乾杯!」


 乾杯の後、つまみをお供にちびちびとウイスキーを飲みながら、俺の計画について話していった。


「成る程、確かにユウマ君の言うように、これから世の中はもっと変わって行くね。スーザンやロイスの話を聞くと、周りの国も何かしらこれから動いてきそうだ」


「グーテル王国の見習い達もいずれは国に帰って、国を変えていくだろうな」


「だからです。このままではいけないんですよ。さっきも言いましたが、この国、この拠点が一歩も二歩も先を行っていれば、最悪も防げるんですよ」


「それがあれか~」


「フランク? あれとは何だ?」


 フランクの油断である。独り言のように飛行船の事を思い浮かべて、口に出してしまった。


「ん! あれね。 あれとは……」


「もう駄目ですよフランクさん、あの自転車は売らないと言ったじゃないですか」


 俺は飛行船の事を誤魔かすために、大量生産できないと思い込んでいる、自転車を暴露した。


「あぁすまん、そうだったな。大量生産できないから売らないんだったな」


 よし! よく話を合わせた。グランには飛行船の話はまだ出来ない。もし知られればフランクなんて可愛いぐらいに追及される。勿論、売るというより欲しいが目的だけど。 個人の酒のためにこの貯蔵所を作るし、買い占めまでする人だから。


「ほう~ 自転車、それはどんなものだい?」


 これでも食いつくか~ フランクの新しいもの好きは絶対グランの血だよね。それでも薄いぐらいだけど……。 グランは筋金入りだ。


「分かりましたよ、今度見せますから。でも今回のように人目が無い所でですよ」


 知られた以上は見せないとグランは引き下がらないだろうから、見せることにした。グランは初めてあった時も燻製の為ならと、魔境の俺の家まで来るぐらいだからね。

 このまま放置すれば、今回も家に来ると言い出して、結局、飛行船が見つかるのでは本末転倒だから。


「それで、ユウマ君の言うように拠点はそういう場所にするのは良いのだけど、私に隠していたんだね、魔道具の事」


 や! べ! 忘れてた! これではフランクのうっかりを責められない。そういえば拠点の地下の事はグランには言っていない。


「アハハ! それはですね……、魔道具の革命ですから、一人でも知る人が少ない方が…… 秘……」


「まぁ良いでしょう今回は、でも次回は許しませんよ。 私だけ仲間外れは寂しいじゃないですか」


 いや、グランだけじゃないから。賢者候補と見習い以外は誰も知らないからね。フランクなんて嫁のシャーロットにも話していなんだから。


 今回の事、グランの口からシャーロットに伝わったら、フランクがどうなんるか? 

 そうなったら可哀そうだから、グランには重々口止めして置いた。しっかり罠にもはめて。


 だってこれでグランも同罪になる。ローレンに隠し事をすることになるからね。グラン家の女性は強いから怖いのよ。物理的にも強いから……。


 グランは知ってるのだろうか? 嫁が自分よりレベルが高い事?


 グラン一家の女性陣は子供達の教育と称して、拠点のスライム養殖場でレベル上げをしている。


 シャーロットとローレンのレベルは上がらないが、フランソアと子供達はレベルが上がっている。ジーンのレベルっていくつだっけ?


 プチパワーレベリングはした記憶があるけど、それ以来鑑定もしていないから知らないな?


 もしかしたらグランどころかジーンも危険? 流石にそれはないか? プチとはいえパワーレベリングしたもんな。


「拠点の移行はミュラー公爵の移住と魔方陣の魔道具が完成してから始めます。良いですか?」


「「了解!」」







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