第30話 商売のネタがゴロゴロ
風呂を見たグランは商売のネタに見えたようだが、ロイスは違った昨日レンガを繋ぐ方法がない事に気づいていた。それなのに今目の前にその問題を解決してる現実がある。
それが何を意味するのか? そうレンガで壁が作れると言う事。
頭の柔らかいロイスは昨日の発想の訓練が活きてるのか、レンガで壁が作れるなら、家の壁、竈(釜土)、鍛冶の窯、陶芸の窯等色々作れる物がどんどん出てくる、目の前の風呂も勿論だ。
風呂の場合はタイルの方がいいから、本来の方法で作るなら磁器を作れないと駄目だから今は無理。
それを聞いたグランは、益々目が商人の目になって行った。
風呂の後に、今度は地下室に案内した。
地下というものには驚かない。この世界に冷蔵庫はないけど、地下に穴を掘って冬のうちに雪を貯めて氷室として使っているから慣れ親しんだもの、しかし地下の壁がレンガで出来ていたのには驚いている。
それと驚く物が他にも、錬金術の錬成板やら、ガラスで出来た見たことない容器などや調合に使うであろう道具が沢山あったのだ。
二人はシャーロットの件で俺が調合のスキルはもってると思っていたようだが、まさか錬金術まではとは思いもよらなかったのだろう、目をぱちくりさせながら俺の方を向いていた。
ここで話し始めると長くなるから、その目はスルーして地下室から出て、昼食の準備に入る。
その後の昼食時は朝食の時よりも、より一層話掛けたそうな顔になっていた。
当然それもスルーして、予定通り家から少し離れた、洞窟の近くに作った、炭窯と陶芸窯を見せた。
そこでロイスがまた気づいた
「この窯はレンガで出来てるけど、地下で使ってたものと違うようだけど?」
本当にロイスはちゃんと見ている。この違いに気づくのだから。
「このレンガは耐火煉瓦で出来ています。一度粘土で作った釜で焼いたレンガを砕いて、それをもう一度レンガの形にして焼いたものです」
「そうすると熱に強いレンガが出来ます。それが耐火煉瓦です」
この世界の窯は粘土で出来てるから、高温にはあまり耐えられない。だから壊れるたびに補修して使ってるのだ。
耐火煉瓦は風呂の釜にも使ってるのだが、俺がテストの為に何度か火入れをしてたから、煤で黒ずんでいて、分からなかったのだろう。
此処まで家関連の説明が済んだので、最後に俺の疑問を解消するために、スライム汚水処理システムを見せる事にした。
初めは見ても何か分からなかったようだが、この穴の先にはスライムがいて家から出る汚水、汚物を食べて処理してくれてると話すと驚愕の顔になっていた。
「何で魔物を使ってそんなことしてるんだ?」
「普通は教会に頼んで光魔法で浄化してもらうだろう」
そこまで言ったグランは気づいた。ここは魔境の森、教会の人間何て来てくれないことに。だからこのやり方なのかと……
良く考えるとこのやり方だと、放置できるが教会に浄化してもらった後は自分たちで中の物を捨てないと、溜まってしまう。
浄化したものなので、何処に捨てても問題ないが、それでは町の中が浄化処理したもので溢れてしまうので、ある程度溜まれば自分たちで町の外に捨てに行く。
さりげなくここまでの事を聞きだせたので、俺の疑問は解消でき満足した。
俺は満足したが、グラン達は満足してない。何故なら簡易下水道をどうやって作っているか分からないからだ。
「どうやって汚水や汚物をスライムの居るとこまで流してるんだ?」
当然の疑問だ、そこで仕組みを地面に木の枝を使って書いてやることにした。
家より上流の川から地面を少し掘って溝を作る。掘った溝にレンガを繋げてる物を塗って固め、同じもので型枠で板状の蓋を作る。
その蓋を溝にかぶせた後に土をかけて見えなくする。その溝は家の下を通っていて、川側に作った堰の開け閉めで川の流れを利用して、水を定期的に流し汚物などをスライムの居る所まで流している。その時に流す水によってあふれた水が下流の川に流れると説明した。
スライムも柵を設けてあるから出られないし、出られないなら、餌のある所に勝手に戻る。それにスライムが増えた時に間引く為の扉も作っていると、先に問題になりそうなことの対策も話しておいた。
ここまで話すと流石に納得したようで、これ以上は聞いてこなかった。
その後は、帰りながら燻製小屋を見せ明日はあれを使って燻製を作ると説明した。
今日一番の騒ぎはこの後起きた。夕食後二人と一緒に風呂に入った時に……
俺の落ち度だった。普段普通に使っていたから、石鹸がこの世界にない事を忘れていたのだ。
生活魔法のクリーンがあるから、この世界の人は石鹸を知らない。風呂も体を綺麗にするというより、クリーンで綺麗にした後に入って体を温めるものという感覚だ。
桶のお湯で体をふくのもそれに近い。
だから風呂に入って俺が普段通り石鹸やシャンプー、リンスを使ってるのを見て騒ぎだしたのだ。
その騒ぎも、一番ひどかったのは風呂を出た後だった。俺が使ってるのを見て興味があったのか、自分たちも使ってみたいと言うので使わせたのだが、その時はいい臭いがすると言う程度の騒ぎだったが、風呂から出た後に自分達から立ち込めるいい香りと、髪の毛のサラサラ感に大騒ぎになった。
それはそうだクリーンは汚れを落とすだけの物、落とした後に体にいい臭いなんてしないし、ましてや髪の毛何てサラサラなどしない。油分も一緒になくなるからごわごわするぐらいだ。
女性はしょうがないので、櫛に少し動物油をつけて髪に油分を与えるまでしてる。
だからつけ過ぎると匂う。それでもこの世界ではそれが当たり前だから気にしないだけだ。
昨日の夜も植物油に驚いていたからな……
二人の本来の目的は燻製の作り方を習う事だったが、ここまで見たことが無い物が溢れていると、本来の目的を忘れ全てが商売のネタに成ってしまった。
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