第281話 ダンジョン探索
「ダンジョンってこういう所なんだな」
「フランクさんここはまだ若いダンジョンですから、これが普通だとは思わない方が良いですよ。冒険者のサイラスさん達に聞いた話だともっとスケールは大きいらしいですからね」
このダンジョンは階層別にもなっていないし、一階層だけでも一日では回り切れないなんて言うダンジョンじゃないからな。
「そういう物なんだな。今度ラロックに帰ったら俺もサイラスさんに聞いてみよう」
「聞くのは良いですが、このダンジョンについては話してはいけませんよ。陛下に怒られますからね」
「分かってるよ」
「それでサラにお願いがあるんですが良いですか?」
時間の節約の為に最深部に直行するメンバーを絞って、残りのメンバーをサラに任せようとお願いしてみた。
「何を言っているんですか? ユウマさんこういうことは全員で行ってこそ意味があるんですよ」
「しかし……。マーサさんの言う事は分かりますが人数が増えると時間が掛かるんですよ」
正直、直行出来れば人数は関係ないのだが、人数が多ければ当然多いほど興味の数も増えるから、このダンジョンのように枝分かれしているところでは、危険なのだ。
ダンジョンの枝分かれ=宝箱と説明してしまっているからね。もし一か所でも宝箱が見たいと言われて連れて行こうものなら、その後がどうなるか……。それだったらそういうのに興味がありそうな人と別れた方が良いし、フランク達はどうせ何度もダンジョンに潜ると思うし、言い聞かせれば直行出来るだろう。
でも、他の人は違う。ダンジョン以外に興味のあるものが、この島には沢山あるから、そう何度も潜ろうとはしないだろう。そういう考えの違う人を全員連れて行くのは危険なのです。時間的に……。
「あなた、連れて行ってあげれば」
「そうは言うけどサラだって始めての時宝箱を優先したでしょ。サラは一度だけだったけど、人数が増えるとそうはいかなくなるんだよ。そうすると旅行に行くのが遅くなりますよ。良いんですか?」
「何をいちゃついてやがる。ここは俺が一肌脱いでやるよ。みんな今回はユウマの気持ちも理解してやってユウマの言うようにしよう。最深部に行きたい人は後日俺が連れて行くから、それで納得してやってくれ」
こういう時に兄貴面して男気を出すのがフランクなんだが、本心は自分は何度も潜るから関係ないと思っているからなんだろうが、今回ばかりは有り難い。
「そうですね。二人の邪魔をするのは無粋でしたね」
「そう言ってもらえて嬉しいです。残る皆さんは宝箱と此処は食肉ダンジョンですから当分の間の食料を確保してください」
それから数時間後、俺達は転移陣でダンジョンの入り口に戻って来た。今回は海の中ではなく地上にね。転移で戻る前に魔方陣を書き換えておいたから……。
「これが転移というものか、すげ~な。それにあの最深部の宝箱はこれから何が出るか分からんな? とんでもない物が出そうでワクワクするぞ」
「フランクさん、そう簡単には行きませんよ。今回だって前回より魔物のランクは上がっていました。次はもっと深くなってランクが上がるか、別の魔物が出るかもですよ?」
「ユウマの話からするとそうなる可能性が大きいよな。そうなったら最深部へはそう簡単に行けなくなるという事だな」
「ただ、そうなると逆にもう少し浅い所にある宝箱も変化すると思いますよ」
「それってもしかして人間のレベルが上がって強く成れば最深部に辿り着けるから、その時に時代に影響するようなものが出るという事だな」
何故フランクがこんな事を言ってるかと言うと、今回最深部の宝箱から出たものが、マジックバッグだったからです。正直こんな短時間で最深部に辿り着けるダンジョンで出るような物じゃない。それが出たという事は本来ならこのぐらいの時に出る物だったが、あまりに人間の進歩が遅すぎて今ではそれなりの深さまで行かないと出なくなっているのです。
人間がレベルを上げようとするのが遅かったんです。まぁそれには命を懸ける必要があったから躊躇するのも理解できますが、言ってみればこれは神の試練で、これを乗り越えられる人が多く成って欲しかったけど、当時の人間は浅い所で危険を避ける人が多かったのと、スタンピードを起こさせないようにしていたから、魔力が余り、ダンジョンだけが深くなってしまった。
レベルを上げた人が一人や二人いても、結局深く成れば対応できなくなって死ぬか諦める。当時も保存の魔法陣の書かれた物もあったでしょうし、今も出ているでしょうが、魔法陣自体がまだ研究されていないからそれが何かも分かっていない。
魔法陣を鑑定すれば良いようなものですが、鑑定も結局は魔法ですからレベルが上がらないと内容も詳しくならない。習熟度だけではないという事でしょう。フランクとグランを見ればそれが理解出来る。
習熟度で言ったらグランの方が年齢と同様に当然上でしょうが、今現在はグランも少しはレベルを上げてはいる物のフランクには到底及ばないので、鑑定のレベルはフランクの方が上です。見える内容が全然違いますからね。今のフランクはもう少しで数値まで見えるようになりますから。
それでも魔方陣の内容まではフランクでも無理なのでしょう。数値が見えるようになってからさらにレベルと習熟度が上がって初めて見えるように成ると思います。
「しかし、良く出来ている物ですね。ダンジョンが神の試練でありヒントでもあるなんて」
「そうですよロイスさん。それにもっと早く気づいていればこの世界は変わっていたかもしれないですね」
「そう言えばフランクさんは錬金術のスキルも発現していましたね。それなら今度は鍛冶のスキルを発現させませんか? それが出来たら錬成陣で武器を作れるように成ると思いますよ」
「それってユウマが言っていた、スキルの複合利用とか併用利用と言うやつか?」
「そうです。まぁ単独のスキルを極める方が良い物が出来ますけどね。それでもその複合や併用利用も極めればそれなりに良い物が作れるように成ります。大量生産にはこの方が便利です」
「それも良いんだが俺は錬金術師に適性の多い付与魔法を覚えたいんだよな」
多分フランクは魔法剣や魔法武器の方に興味があるんだろう、俺からすればどちらが先でも良いけどいずれ両方やると思うけどな……。
「どんなものでも良いですよスキルには色んな使い方があるし、錬成陣にも色んな使い方があることを知っていれば、益々やれることが増えます」
フランク達とダンジョン談義から、スキルの話に盛り上がっていると後ろから
「もう戻っていたんですね。最深部はどうでした?」
「お帰りサラ。こちらは予想通り前回よりは少し深くなっていたね。それにオークも少しレベルが上がっていたよ。でも宝箱からはこれが出たよ」
「そ! それってもしかしてマジックバッグですか?」
「そうだよ。容量的にはミランダさん達に渡してるのと変わらないかな? でも時間経過はこちらの方が早いね。 鑑定で見る限りは……」
「凄い物が出ましたね。こちらも良い物が出たので自慢しようと思っていたのに、流石に最深部には勝てませんね」
成る程、サラがそういうという事は前回のような塩コショウではないという事だな。いったい何が出たんだ?
「多分、深さが増しているから上層部でも宝箱の中身も変わっているはずですよ」
「そうなんですよ、一番最初の行き止まりの宝箱こそ変わりませんでしたが、その後は恐らく良くなっているんじゃないかと思う程に良い物が出ました」
「結局何か所行けたんですか?」
「五か所です」
「結構いけましたね。 自慢したかった戦利品はなんでした?」
俺からそう言われて、ミランダがマジックバッグから出したものは全て見た目が魔道具でした。鑑定持ちがいないのによく良い物だと言えるなと思っていたけど、魔道具なら鑑定しなくてもそう思うよね。
俺の鑑定では、コンロ、ホットプレート、肉のスライサー、保冷庫でした。食肉ダンジョンらしいものばかりですが、確かにオーバーテクノロジー的なものです。俺が転移したから出来た物が含まれていますからね。
あぁそうだこれをフランクに鑑定させてみよう。それでフランクの鑑定精度がもう少し分かる。
「フランクさん、この四つの魔道具鑑定してみてください」
「分かった、やってみるぞ」
フランクの鑑定結果は卓上
これにも理由があるんだろうが、今はそんな事している暇はない。俺は一刻も早く予定を消化して旅立ちたいのだ。この事は変に拘らずスルーして、さっさと次だ次、エマに空中歩行を教えて終わりにしよう。
「これは良い物でしたね。それをどうするかは皆さんで決めてくださいね。それじゃダンジョン探索も終わりましたので、崖の上に戻りましょう」
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