第27話 初めての客
あれから10日、あっという間だった。
客が泊まる準備をしないといけない。それには客間の増築、内装品の製作,秘密がばれないような偽装、製作。本当にやることが多くてギリギリまで大変だった。
増築や内装品は木工のスキルのおかげでそんなに苦労することもなく出来たが、ベットの上に敷くマット代わりの草を入れるシーツを縫ったり、枕も作らなければいけなかった。裁縫はスキルが生えていないので、時間が掛かってしまった。
枕と掛布団を作る分の綿はあったが、敷布団を作るほどはなかったので、草マットを厚めに作って代用した。
見せる物、見せない物を選別、殆ど見せてもいいものばかりだが、俺自身に関することは出来るだけ伏せたい。
この世界の常識からはずれてるもの特に魔法は絶対にまずい、全属性使えるなんて異常過ぎる。
だから、風呂で苦労した。今は俺の魔法だけでお湯を作れるが、俺のステータスに火魔法は無いことになってるから、火魔法の魔道具も作れない。
しょうがないので風呂を改造、普通に薪で沸かせるようにした。
いずれは家庭製品の魔道具も作りたいが、今回のように客が来る事がこれからもあると問題になるので作るのをためらう。
最終的には客が来る度にインベントリにしまうようにするしかない。
ただ生活魔法のライトは誰でも使えるので、魔石にライトを付与して魔道具の明かりを作った。
でもこれはただの置き型、魔石から30cmの高さに光球が出来るだけ、これを天井に付けるにはまだまだ研究が必要。それにスイッチはないのでつけたら魔石の魔力が無くなるまで消えない。
やりたいことがどんどん増える、今回燻製の製法を伝授すれば幾らか俺も楽になるだろうから、それからゆっくり研究しよう。
そういえば風呂の改造をしてる時に思ったのが、俺は排水などの汚水処理にスライムシステムを使ってるが、領都に行った時に臭くなかったので、何らかの方法で汚水処理をしてるんだろうと気になったのだが、初めは気になっていたのに、何やかんやと他の事に忙しく、聞くのも調べるのも忘れていた。
図書館でもそちら方面の情報は目にしなかった。探せばあったのかも知れないが、臭くないのだから結局重要視してなくて忘れてしまったのだ。
本当にどうやってるんだろう?
まあいろいろ忙しかったが、いよいよ今日取引に行き、その足でグランとロイスをわが家へ迎える。
到着は明日になるだろうが、連れてくる道中も客には変わりないからな。
何時もの時間に到着、商品の準備をしてると馬車もやって来た。
馬車から降りた人を見て、今回も驚いた。
そこにはシャーロットがいたから、何で? グランはまだ商人だから理解も出来た、確かにシャーロットの職業も商人だけど、いくらなんでもここに来るのはおかしい。
またまた俺がポカーンとしてたら、フランクが話しかけてきた。
聞けば、シャーロットがここに来た理由だが、一つは俺に病気を治してもらった礼をちゃんとしたかった事。
二つ目はシャーロットが回復してから町でリハビリがてら散歩してる時に例の薬師と会ってしまい、さじを投げた患者が元気に目の前に現れたのが不思議でならず。
どうやったのだと追い返しても、追い返しても店に来るので、本人がいなければ薬師も追及し辛くなるだろうと、体力も回復してたので、ラロックにグランと一緒に帰って来て今日ここにいると説明された。
俺からすれば俺のことを黙っていてくれるなら、薬を渡して薬師に調べさせれば良かったのにと思ってしまったが、そこは商人信用が第一だから、俺に黙って勝手に薬を他人に渡すのを良しとしなかった。
それにあの薬を渡しても、鑑定に出るのは薬師の知らない病名の治療薬、納得するかといえば、更に酷くなる可能性の方が多い。
俺の鑑定以外は病気の詳しい内容はでないからな……
理由は解ったがその問題もいづれは解決しなくてはいけない問題なのだ、どうするかな?未知の病に未知の薬という概念が生まれ、毒も薬になるという発想が生まれれば研究や改良がされるようになるんだろうが、この世界の今の風潮が簡単に変わるだろうか?
簡単に変えるには俺が表に出ればいいだけなんだよな……
でもそれだと答えを教えるだけだから、自分たちで研究しようとはならない
結局は俺がかかわった病気だけになり、未来がない。
これも含めて今回グランと色々話そう、停滞してるこの世界を動かすために。
やっぱり、この世界に俺を送ったのには神様の隠れた意図がありそうだ。
シャーロットからの丁寧なお礼も受け取り、商品の確認も終わったので、7日後の取引を決め、フランク達と別れた。
そういえば三台目の馬車の御者は誰だったのだろう? 女性だったけど?
後からロイスに聞いたら、ケインの嫁さんだった。元従業員馬車も操れるよね。
さてここからが大変だ、魔境の森を商人二人を連れて移動しなくてはいけない。
一応、俺も用意はしてきていた。簡易結界の魔法を改良して、移動しながらでも結界を維持できるようにして、二人を守れるように。
二人は俺の家に着くまで殆ど魔物と遭遇しなかったことに、俺がネタ晴らしをするまで疑問に思っていた。
この世界には結界という概念がない。だからそういう魔法も出来ない。
創造魔法でなくても魔法は本来イメージなのだ。だからそういうイメージさえ出来れば、習熟度の高い人なら作れるのだ。何でもと言う訳には行かないがそれなりには出来る。
ファイヤーボールは火の玉を飛ばせたら攻撃ができるから生まれたもの。
土魔法にアースウォールがあるから、空気という概念があれば、空気を固めた壁という結界が出来るのに空気と言う概念がないばかりに生まれない。
息をしなければ死ぬのだから、人が何かを吸ってると思わないんだろうか?
この調子で二人が俺の家を見たらどうなるんだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます