第28話 未知との遭遇
予測通り、途中1泊して無事に我が家に到着。到着したのは良いのだがここからが大変、二人が道中の不思議現象に納得できなくて、野営の時も道中もうるさいぐらいに俺を質問攻めにしたから、強引に着いたら説明するで納得させていたものだから、着いたとばかりに、詰め寄って来た。
「何で魔境の森なのに魔物に襲われない?」
当然二人は魔境の森だからそれなりに覚悟をしてきていたのだろう、それがあけてみれば拍子抜けもいい所、襲われる回数が少ないどころか、一度も無かったのだ。
普通ありえないことが起こったのだ、当然疑問に思う、思わない方がおかしいのだ。
「とりあえず、納得できないのは解るけど、先ずは家に入って落ち着いてから話そう」
兎に角落ち付かせないと、出来る話も出来ないし、今の状態だと何を説明しても頭に入らないだろうと家に入るよう促す。
家に入れば落ち着くと思っていた俺が浅はかだった。食器棚を見たグランが
「これはなんだ?」から始まり
ガラス食器や色鮮やかな陶器の食器について問い詰めてくる。
あまりのグランの勢いに、それまでは一緒になって問い詰めていたロイスが少し冷静になり、グランを落ち着かせに回ってくれた。
ロイスの加勢もあり、少しグランが落ち着いたので、テーブルに座るよう勧め、精神安定効果のあるハーブのお茶を出した。
お茶という日常が挟まったからか、非日常が薄れやっと落ち着いてきたので、そこからはゆっくり一つ一つ説明していった。
先ずは順番に従って、道中の不思議から説明に入る。結界を説明するには空気やアースウォールの説明が必要で一つを説明するのにとんでもなく疲れた。
この際今は納得できる出来ないは関係なく、一つづつ全てを説明してから、質問タイムを設ける事にした。
そのお陰か不思議現象ではなく、ちゃんと説明のできる現象だと理解出来たのか、それからは冷静に話が出来るようになった。
確かにグラン達の気持ちも解る。未知との遭遇がてんこ盛りなのだから、グランでこれだ、これがフランクだったらと思うと恐ろしくなる。
本当に今回はグランで良かった。ロイスのアシストも助かった。日頃フランクについてるから、こういう場面に近い事があるんだろう、冷静になるのが早かった。
結界については解ったような解らないような反応だが、流石は商売人ガラスと陶器については、何で出来てるとかどうやって作るとかを説明すると、理解、納得してくれた。
ただ硝子は俺流のやり方なので、それに付いては本来のやり方を説明した。
そのやり方には、耐火煉瓦が必要になることも合わせて説明、更にはその耐火煉瓦について、最後にレンガについて……
だってこの国? 世界? にレンガが存在しないのだから。
アースウォールで土を固める発想はあるのに、何でそこからレンガに行かないのか?
焼成煉瓦は無理でも日干し煉瓦は行くよね普通。グランやフランクみたいな人間もいるのになんでだろう?
そこで、いい機会だからグランにその辺について聞いてみた。
「土を固めるという概念はあるのに、何でそれを利用すると言う発想にならないんです?」
「陶器はあるのに、レンガは無い。 同じ土でしょ? 何で?」
先ほどまでは、自分たちが質問する立場だったが、俺から逆に質問されたら、おろおろするだけで答えられない。
それでもロイスは思いついたのだろう、意を決して答えてきた。
「レンガがあっても積み上げるだけでは意味がないでしょう」
凄いぞロイス積み上げると言う発想は出来たんだな。
「じゃロイスさん、服はただの布から出来てるけど、どうやって服にしているんです?」
「それは糸で縫ってるんですよ」
ロイスは間髪入れずに答えてきた。
「じゃ、なんでレンガを繫ぐということを考えないんです」
そこまで言うと、流石にロイスも気づいたんだろう
「繋ぐ方法を考えればいいのか!」
大正解、そういう風に物事を考えれば色んな事が進歩する。
ちなみに俺の家のレンガの部分はむき出しではなく表面をなんちゃってモルタルで塗ってるから見た目にレンガを使ってるのは解らない。
俺の作ってる色鮮やかな陶器も、土の種類や焼く時間、温度が変われば自然に出る模様を釉薬を使って人工的に作ったものだと説明
「硝子も砂をそのまま使えばこんなガラスになります。砂の中の一つの物だけを使えばこんな透明なガラスが出来ます」
実物を見せながら説明すると二人とも、意味が理解できたのか納得してくれた。
「砂を溶かすのも、剣を作るのに鉄を溶かすから発想できるんですよ」
更に納得する二人
何で自分達にはそういう発想がないのか?
言われてみればお金だって色んな金属を溶かして作ってるのだ、金属と言っても元は鉱石だ。
砂だって鉱物、何で溶かすと言う発想にならなかったのか?
ひとつふたつと、発想のヒントを教えてあげると、あれもこれもと考え出した。
勿論最初から最適な答えは出てこないが、考えるという行動には移せるようになってきた。
丁度夕方なので、夕食の準備を始めるから、ロイスに手伝ってもらうことにした。
これも発想の訓練だ。身近な料理というところにも色々あるのだと知って貰う為に、敢えて今日は蒸し野菜とオークのとんかつを作ることにした。
植物油がオリーブ油しかないから、少し変わった味になるかも知れないが、揚げるという料理法は伝わると思うし、サクサクの衣の食感は解って貰えるだろう。
蒸し野菜はオリーブオイルに岩塩とハーブを合わせた、なんちゃってドレッシング、本当は酢があれば良いのだが贅沢は言えない。
料理をしてる間もロイスはなんだそれっていう目で見ていたが、出来上がりを見たら驚いていた。
テーブルにパンとカツ、野菜を並べると、グランは目をぱちくりして固まっていた。
見たこともない料理、味の想像が出来ない料理、最後まで思考を刺激しまくってやった。
この後もまだまだ続く思考の嵐……
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