第26話 どうするこの問題

 レベルの違いによる味の違いについて説明すると、二人ともキョトンとした顔をして訳が解らないみたいだ。


 しょうがないので魔境の森の中の魔物は同じ種類でも外の魔物よりレベルが高い事を教えてあげた。


 それでも納得出来ない顔をしていたので、領都から帰る時に殆どは無視したけどそれでも何匹かは狩っていたので、試しに燻製にしたものがあるから、食べ比べさせる事にした。


 俺のは火魔法だけど生活魔法に見えるようにして、軽く炙って二人に渡した。

 食べ比べた結果、俺の言ってる事が理解できたみたいだ。


 かなり違うからね、この違いに気づかないようなら商売人失格だよ。


 酒に酔ってる状態で、つまみで食べる分には解らないかも知れないが、しらふで食べ比べれば違いに気づく。


 作り方で違いが出るのはしょうがない、それは経験で改善されるから、しかし素材の違いはどうしようもない。


 とどめに、偽装アイテムボックスから解体前のレベル1と3を出して、フランクに鑑定するように促した。死んでいてもステータスは見れるからね。


 レベルの違いを確認してからは、二人が揃って「う~ん」と考え込み黙ってしまった。


 時折少し会話してはまた考えるの繰り返しを始めたので、俺は荷物の積み込みを終わらせたロイスにも二つの燻製を食べさせて感想を聞きながら、結論が出るのを待っていた。


 暫くして結論が出たようで、二人が近寄って来た。 


 結論は燻製品を多くの人に提供するのが目的だから、少し味が落ちても十分美味いから、低レベルの素材品は安く売り、俺の高レベル品は今までと同じ値段で売るということになった。


 低レベル品は沢山作れるから、その分多く売れるので薄利多売でも十分儲かると判断したようだ。


 しかしまだ最後の難関が残っている、俺がどこで誰に教えるかという問題が。


 俺は出来るだけ表に出たくないのだ、だから俺の存在を知ってる人数は少なければ少ない方がいい。


 実際、この取引ですら関わる人間は固定されている。商売に関係ない料理人のケインが来るぐらいだから。


「それじゃ何処で誰に教える?」


 その言葉にフランクは考え込んだが、グランは違っていた。


「それなんだが、私にユウマ君の所で教えて欲しい」


 グランがとんでもないことを平然と言ってきた。


 おいおいこのおっさん何を言い出すんだ、グランに教えるのはまだいいんだけど、

 俺の所? 俺の家は魔境の森にあるんだぞ。


 グランの言葉に反応したのは俺だけじゃなかった、当然フランクも何言ってんだと言う顔で


「父さん 何言ってんだユウマの家は魔境の森にあるんだぞ」


 俺の言いたいことをフランクが代弁してくれた。


 しかし、グランから返って言葉に俺もフランクも反論できなかった。


「私は隠居の身だから自由が利く。それにユウマ君共もう顔馴染みだからユウマ君の目立ちたくないという希望にもそう。そして最後にユウマ君の所には燻製をやる為の道具や設備がもうあるからだ」


 確かに言ってることは条件にあってるし、設備もあるから一番いいのだが、まだ若いとは言ってもグランは50を超えてるんだ、俺の家まで来るのはそう簡単じゃない。


 グランがそんなことを言ったら、新しい物好きのフランクが黙ってるわけがない。


「それなら俺が行く、森を行くなら若い俺の方がいい」


 フランクがそんな事を言えば、今度は今まで黙っていたロイスまで


「最近店を留守にしていた旦那さんがまた何日も店にいないのは困ります」


 そりゃそうだ、やっと催促の嵐から解放されたのに、またあの修羅場が戻ってくると思えばそう言いたくなるのも無理はない。


 そこからは、あ~でもない、こうでもないと三人の言い合いが始まってしまった。


 そうなると俺にもう出番はない。グランが言った内容に反論できなかった俺は

 三人の話し合いで決まった内容を受けてどうするかだけだ。


 漸く三人の話し合いが終わって、結論を俺に伝える為少し落ち込んでるようなフランクが近寄って来た。


 内容はグランとロイスが来ると言うものだった。だからフランクが落ち込んでるのか。


 理由は簡単、店に影響しないのはグランとロイス、ロイスは若く仕入れなどで出かける事もあるので、それなりに戦えるからグランの護衛も俺とロイスの二人ですれば問題ないし、燻製のやり方も一人が覚えるより二人覚える方が効率がいいだろうと言う理由だった。


 俺も不安はあったが、内容的に納得できる範囲だったのでそれで承諾した。

 そこからは何時から始めるかという話し合いになり、お互いに準備が必要ということで10日後ということになった。


 グランも一度領都に戻って事情説明もしなくてはいけないし、ロイスも店での引継ぎもある。俺も客が来るならそれなりに準備が必要になるので、次の取引日を少し遅らせて10日後で落ち着いた。


 折角、グラン達が来てくれるのだ、燻製のやり方もそうだがこの際一気に新しいものを公表して、どう広めたらよいか経験豊富なグランに相談する覚悟を決めた。


 ただ、そうなるとフランクが怒るだろうな。新しい物や珍しい物に目がないし、俺と初めに縁を作ったのはフランクなのに後から知らされるんだから。


 心の中でフランクに手を合わせておいた。(すまん!)


 それにしてもグラン親子は似た者同士だね。何ていうかバイタリティーが物凄い、ロイスもかなり影響を受けてるのか、元からそうなのかは解らないが、二人に劣らない。


 俺の住んでる場所は冒険者でも入るのを嫌がる場所、まず低レベルの冒険者は絶対に入らない。そんな場所に商人が来ようと考えるだけでも本来異常なのだ。それなのに50を超えて隠居してるグランが来るというのだ。商人の中でも相当な変わり者なんだろうな。


 このグラン達の訪問がこれからのユウマだけでなくグラン一家、グラン商会の生き方を変えて行く事に成るとは……
















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