第226話 帰って来た仲間たち
神の悪戯について、説明するのに苦労したが、結局サラにしてみれば奇跡というとらえ方になったようだ。
まぁどちらにしても効果的に絶対に世の中には出せないものと言う認識では一致したので、俺のインベントリに封印することになった。
俺としてはサラに着けて貰って、老化についての実験をしたかったという願望もあったが、流石にサラの意見に逆らってまでやる勇気は無かった。
これだけではどうしてもサラも俺も納得出来なかったので、先ほどの物より大きさはかなり小さいが同じような色の真珠で毒無効の付与を試したが、付与出来なかった。
それならと毒耐性上昇を付与してみると成功した。この結果から真珠の大きさで付与できる効果の強さが変わるという事が分かった。
そこまでやってしまったのがいけなかったのか、二人の研究者魂に火がついてしまい、真珠の色の違いでどう違うのかの研究が始まってしまった。
研究の結果は良く分からないが結論という如何にも中途半端な物。元々真珠の色と言っても黒以外はピンクがかっていると同じように、緑がかっているとか、ピンクより濃く赤に近いというように曖昧な色が多く、それもそれぞれで違っていて、正直全く同じものは無いと言って良い。
それだけではなく部分的にピンクや緑が混じった物や見方によっては5色あるように見える物もある。
何故良く分からないかというと、黒以外の真珠にはどんな付与でも出来たからだ。勿論、最初に考えた通り、防御系、耐性系の魔法しか付与出来なかったのは予測通りなんだが、色の違いだけでなく、混ざっている色の組み合わせでも違うように感じるからだ。それは消費魔力量が違ったからそうじゃないかと予測してるだけだが。
この短時間では研究し尽くせる事が不可能なぐらい、色の組み合わせや色の違いが多過ぎる。同じものが無いと断言出来る位なんだから、当然と言えば当然なんだよ。
「サラ、流石にこれ以上は此処では無理だよ。俺の予想だとこの真珠の研究はこれから先10年単位で掛かると思うよ」
「そうですよね。此処にある真珠だけでも答えが出ないんですから、もっと貝を獲ったらどうなる事か想像も出来ません」
昼から始めた二人の研究の一応の終わりが来たのは、もう深夜に成ってからだった。あまりに研究に没頭していた二人は、夕食を取ることも忘れていた。
「どうします? 何か食べますか?」
「いいえ、お腹もすいていませんし、今は早く寝て朝食をしっかりとった方が良いと思います」
俺もサラの意見と同様だったので、そのまま二人はそれ以上会話もすることなく、それぞれのベットに行き、一瞬で眠りについていた。
翌日、二人が起きたのは昼過ぎ、まして起きたのではなくロイスとローズの叫び声で起こされた。
飛行船の重力軽減魔法は魔法陣にしているから、魔石を取れば高度は下がるが、元々のガスの浮力で地上には着陸出来ない。俺がいる時は最終的に飛び降りてロープで地上付近まで降下させるけど、今回はロイスとローズだからそれが出来ない。
元々出発の時に、島に着いたら俺がロープで降下させると約束していなのだが、まさか俺達が昼まで寝るとは思っていなかったので、今回の状態になった。
「ユウマさん酷いですよ。約束と違うじゃないですか」
「そうですよ。私達このまま降りれないかと思いましたよ」
流石にそれは無いと思う、だって俺達が無理でもフランク達が帰ってくれば降ろせるからね。まぁ嫌味交じりの冗談なんだろう。
「それで、どうしてこんな時間まで寝てたんですか? こんな家まで建てて」
ん? これは何か勘違いしてないか? ローズの目つきが何かいやらしい物を見るような目だ。こいつまさか俺達が婚前交渉をしていたと思っていないか? これはちゃんと説明しておかないと変な噂を広められかねない。
「それは昨日夜遅くまで研究をしていたからですよ」
サラ、そこで止めたら駄目だ。ちゃんとどんな研究をしていたかを説明しないと……。
「ふ~~ん」
ほら見ろ、ローズの目がもっといやらしい物、嫌、変態を見るような目つきに変わって来た。
「俺達はこれの研究をしてたんだ」
俺は研究で魔法付与した真珠を数多く見せて、研究の大変さをアピールした。
「わぁ~~ 凄くきれい! これは何です?」
「ユウマさんこれはいったい何です。それに研究って?」
二人がやっとこちらの言う事を聞いてくれそうになったので、海の調査から現在に至るまでの経過を話して聞かせた。勿論、奇跡の事は言わないが……。
「す! 凄い発見じゃないですか! 付与に関心が強いエマさんが喜びますよ」
「それはそうなんだろうが、魔石の付与だけでもまだまだ研究が大変なのに、それに加えて真珠まで加わったらエマさん一人では無理だよ」
何とか誤解は解けたようなので、今度はロイス達の報告を聞くことにした。
「こちらの話はこんな感じだけど、ロイスさん達の報告は?」
「それどうしても聞きます?」
「聞くに決まってるでしょ。なんですその思わせぶりな言い方は」
「何も発見できませんでした。以上終わり」
そういう事かよ。そりゃ何も発見できなきゃ報告することはないよな。それだと二人はこの3日間ただ飛行船で飛んでいただけ……。そりゃストレスも溜まるから、さっきの様な皮肉交じりの態度に成るな。
迷惑な話だが、一種のストレス発散に俺は使われたわけね。
「ユウマさん、結果はそうなんですが、何も成果が無いという訳ではないんですよ。これを見てください」
ロイスに見せられたのは、進路を最終的に西に取った時のそこから見える全方向の星座を書いたものでした。
この世界に星座という物は存在しなかったが、今回の帰還用に星座を作ったのがロイス達にこの星座表を作らせた。
当人たちは暇つぶしや面白半分で作ったのだろうが、これはこの先の天測航行に物凄く役に立つ。勿論これだけで出来る訳ではないが、間違いなくその第一歩であることは確かだ。
「報告する事ちゃんとあるじゃないですか。これもちゃんとした成果ですし、報告ですよ。ご苦労様でした」
多分これを発案したのも実行したのもロイスだろう。ローズはこんな事やるような人間じゃない。ローズはどちらかというと感覚派、天才肌だからな。
「しかし、面白い名前の星座ばかりですね。特にこのクルンバ座ってどこまでクルンバ好きなんですか?」
俺がこうロイスに言ったのにはちゃんと理由がある。伝書クルンバが運用されるように成ってからというもの、ロイスは一人で5羽もクルンバをティムして訓練している。勿論、それぞれに名前も付けているし、今回の旅にも2羽同行させている程熱心だからだ。
確かにクルンバを今回のような旅に連れてくれば良い訓練に成るし、今回のように分かれて調査をすることに成っても、連絡が必要になれば利用できるから便利ではある。
そう言えば、長距離の連絡方法としてモールス信号の魔道具を作ろうとしてたけど、その信号はどこまで届くんだろう?
前世では周波数帯とかがあって、長距離には短波が向いていたけど、この世界にそれと同様なものがあるんだろうか?
魔法の世界、ご都合主義がある世界、そう考えると意外にそんな複雑に考える必要はないのかもしれない。個人の魔力や魔道具の魔力を認識出来ればそれだけで、何処までも通話や通信は可能なんでは?
「いて!」
突然肘打ちが俺の脇腹に……。その犯人の方を見ると、物凄く怪訝そうな顔をして、顎でロイス達の方を示した。
やべ! また思考の渦に入っていたようだ。サラが気を利かせて声に出さず、肘打ちで止めてくれたようだ。サラの機転で長考までには至っていなかったから、ロイス達には気づかれずに済んだ。
気を取り直して次の会話に入ろうとしたその時、「只今~」の声と共に森からフランク達が出てきた。
「みんなもう戻っ来ていたんだな。結局俺達が最後か」
「ロイスさん達もさっき戻って来たばかりですよ」
「そうですよ。さっき戻って来たんですが、誰かさん達のせいで中々降りれなかっただけですが」
おいおいローズ、まだそのネタ引っ張るつもりかよ……。
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